2020年4月の記事一覧
エピローグ(Kawasaki-side)
吉田ユカは、鎮静を始めて1週間後に亡くなった。
実は、鎮静薬の投与を始めた後、ユカは中々眠れずに僕らが試行錯誤することになった。ユカが不安に思っていた通り、薬の効果が出にくかったのだ。ハロペリドールでは眠れないだろうことは予測していたが、その次に使ったミダゾラムも効きが悪く、最終的にはフェノバルビタールという薬剤を使用して、ようやく眠ることができた。
結果的に、ユカにとってはつらい時間をさ
memento mori
卵巣腫瘍の再々発の治療経緯を書いてきたが、2020年2月以降、Covid-19が流行するにつれて、私もまた、気持ちが沈みやすかったり、揺さぶられている。
そのことを、少し、言葉にしたくなった。
吐き出すことを必要としているだけで、御心配は無用であることを先に断っておきたい。
2月から3月。抗がん剤治療の第4クールから第5クールにかけては、最もつらかった。
薬剤の蓄積と疲労の蓄積があり、副作用も
10-2:10日間の涙(後編)
(前編から続く)
ラインを引く カンファレンスが終わってすぐ、担当する看護師と一緒に、吉田ユカの病室を訪れた。ユカはやや緊張した面持ちで、ベッドに起きて座っている。
「カンファレンス終わりましたか」
「ええ」
僕と看護師は椅子を持ってきて、ベッドサイドに座る。
「それで、どうなったんですか。今日から眠れることになったのでしょうか」
僕は少し沈黙をおいてから、彼女の目を見て、ゆっくりと話し始め
10-1:10日間の涙(前編)
日曜日の朝、自宅マンションでYくんは亡くなった。
奥さんが、朝に様子を見に行った時、Yくんは眠るように息を引き取っていたということだった。
及川から後で聞いた話だが、子どもたちとは金曜日に会えたという。子どもたちを引率するのに、及川に手伝ってくれるよう、キャンプを主催する側から要請があったのだそうだ。普段は保健室利用者の自宅にはうかがわない及川だったが、Yくんたちの事情を考慮して、今回は
新年度、私は少しずつ前を向き始めている
インターネットでのバッシング、それから気がつけば前回の投稿から2ヶ月が経過していました。
この記事に書いたこと以外にも誹謗中傷があったため、弁護士さんに削除要求と公開請求をしてもらうことにしました。
弁護士さんのお話では、公開請求を行うと誹謗中傷を投稿している方の回線契約者に対して問い合わせがいくそうです。
つまり会社が契約し社員に提供しているスマートフォンで投稿をしていれば会社に、世帯主が契約
Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性の問題への対処
写真は3月はじめに撮った少し早咲きのサクラです。
白血病やリンパ腫の方が受けられる治療が、性に対してどのような影響を与える可能性があるのかをまとめています。こちらを合わせてご覧ください。
Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性への影響①
Q.白血病やリンパ腫の方に知っておいてもらいたい性への影響②~造血幹細胞移植による影響~
今回は性への影響を予防する方法やどのように対処していく
9:少し先の未来がつむぐもの
Yくんの具合が少しずつ悪くなっていったとき、吉田ユカもまた、体調を崩してきていた。
元々のユカと約束した外来日はもう少し先だったのだが、電話で予約を取り直したらしい。朝、外来予約一覧で彼女の名前を見つけ、「ついに来たかな」と僕は思った。
外来に現れたユカは、以前に会ったときよりさらにいっそう痩せていた。長く歩くことは難しく、外来のベッドで横になって診察を待っていた。
「先生、もう限界になり
#もう眠副音⑩ウラ/オモテ
1月から始めた『だから、もう眠らせてほしい』の連載も、終盤にさしかかってきた。明日(4/9)、9章が公開されたら、残すは最終章の10章とエピローグだけ。
この連載が始まってから、noteのフォロワーは9000人以上増え、マガジンの登録者も1000人を超えた。「20万PVで書籍化」についても残り3万PVくらいで達成できそうだ。この物語に、皆さんが感じてくれている期待の大きさに身が引き締まる。
8:もし未来がわかったなら
Yくんは、キャンプから無事に帰ってきた。
キャンプから2週間後、外来に現れたYくんは、いつもの笑顔で、
「本当に行けて良かったです。子供たちも喜んでくれて。先生のおかげで、食事も少し食べられるようになったし、元気も出たような気がします」
と言った。
右腕の麻痺も、まだ起きてなかった。放射線治療の効果はきちんと出ているようだ。
「あの子供たちは、やっぱり僕のこころの支えですね。秋になったら