【連載小説】「北風のリュート」第9話
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第9話:奏でるもの(5)
ふうっと一つ大きく深呼吸し、レイは覚悟を決める。たった一人でもわかってくれる人がいる、そのことがレイを勇気づける。
「風が吹いているのはわかります?」
レイはテラスに目を向ける。つられて立原も顔を向ける。
「立原さんの首筋を風が通りましたよね」
「ああ、はい」立原が首筋に手をやる。
「どうして、わかったと思います?」
えっ、そりゃ……と言いかけて口ごもる。
「天井でファンが回っているから、風は一方向じゃない。私に吹く風と、立原さんの首筋