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「知性をケアする」スピノザ『知性改善論』ゼミ初回レポート#1

みなさま、こんにちは。ソトのガクエンの小林です。

本日(5/16)22時より、ソトのガクエン初の試みとして、あらたに佐々木晃也さんを講師にお招きし、スピノザ『知性改善論』をテキストとした古典読解ゼミがスタートいたしました。今回は、20名ほどの方にご参加いただきました。ありがとうございました。

本日はまず、佐々木講師による『知性改善論』の読み方についてお話しいただき、ゼミ全体のイントロダクションから始まりました。

佐々木講師は、冒頭、清水哲郎『パウロの言語哲学』の「まえがき」から次の文章を引かれます。

テキストの読み方というのは決して定まったものとしてあるわけではない。テキストに導かれてはじめて、テキスト毎にもっとも適切な読み方が成り立つ。

佐々木講師とスピノザの読み方、すなわち、読む側とテキストとの同調は、他の方々とのそれと同じではあり得ません。佐々木さんは自らを「文字の虫」と形容し、スピノザのテキストに出てくるタームや意味、使われ方を綿密に読み込むタイプの読み方をするそうです。例えば、瞑想(meditatio)と治療する・医学(medeor)の語源が一緒であるということが分かる。このように、通常はつながりが見えてこない「瞑想」と「治療」との間に、ターム上の関係性が見えてくるところに、佐々木講師の興味があるということでした。

とはいえ、各々の読み方が同じでなくとも、基本的な読み方や、読み方の規則は学ぶことができるし、参加される方々が各々何かを感じ、自分の読み方を見つけて行ってもらえればということでした。

佐々木講師の私的ノート


さて、イントロダクションの後は、『知性改善論』(講談社学術文庫)をテキストに、参加された方々に一節ずつ音読いただき、各々の内容を皆さんで吟味していく形で進んでいきました。

個人的な(小林の)感想としては、経験的に出くわすすべてのものは空疎で、それ自身には何ら善悪はない、ただそれらによって各人が心を動かされるだけである、ならば、私が絶えざる最高のよろこびを永遠に享受することになるものが存するかどうかを探究しよう、かつ、人々と共有しうるものであって「他のすべてをなげうってでも、それのみによって心が触発される或るものが存するか」を探究しようという箇所に、(他のところにも見られますが)真理を他の人々との共同のうちに探求するというスピノザの姿勢が感じられ、とても勇気づけられました。

また、参加者の方からは、「心」「精神」「魂」の使い分け、概念の違いは何か(スピノザ自身はさほど区別していないよう)、破門の問題について、『知性改善論』が誰に向けた本なのかといったことについて質問や疑問が投げかけられていました。

さらに、ご参加された方々の感想として、下記のような書き込みもありました。

先生の読み方、面白いです。専門家とでないと読めない方法で刺激的です。(略)もっと先生の実地でありながら拡がる読み方にそいたいです。

スピノザで卒論を書こうとしているので、先生のラテン語に注意しながら読んでいくのは大変勉強になります!

というわけで、あっという間に終了時間となりました。とても濃密な古典読解体験を皆さんに体験していただけたかと思います。
今回は、邦訳14ページまで読み進めました。次回は、5月23日(木)22時からです。もちろん次回からのご参加も大歓迎です。興味・ご関心お持ちの方は、ぜひお気軽にご参加ください。

こちらのゼミについての詳細・お申し込みにつきましては、ホームページPeatixをご覧ください。

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また、ソトのガクエンの哲学思考ゼミにご参加いただきますと、月額制で、佐々木講師担当の古典ゼミだけでなく、基礎ゼミ、シネマ読書会、表現スキル思考ゼミ、大学院進学情報&原書ゼミにもご自由にご参加いただけます。ゼミメンバーであれば、これまでのゼミのアーカイブをすべてご覧いただけますし、専用Discordにて他のメンバーの方々とも交流していただけます。
哲学思考ゼミのメンバーも随時募集しておりますので、興味おありの方は「哲学思考ゼミ」のページをご覧いただけますと幸いです。

ソトのガクエン代表 小林卓也




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