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『武器としての土着思考』を海士町で読んでみた

やっと本が1冊読めた

来島してすぐに、海士町の中央図書館で
青木真兵さんの『武器としての土着思考ー僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』が
カウンター前に置かれていて、
「わー!!」とか言いながら、すぐに購入。

というのも来島前に、
青木さん夫妻が奈良県の東吉野村で
開かれている私設図書館
「ルチャ・リブロ」に数回行ったこともあり、

4月にルチャリブロを訪れたときの一枚。
素敵な蔵書と空間!

(めちゃくちゃ素敵な空間なので、
みなさん関西に来た際にはぜひ行ってみてください)

青木さんが6月に海士町の中央図書館で、
『武器としての土着思考』の
出版イベントをされていたことも
見聞きしていたので、早く読みたい~!と
思って買ったはいいものの、
めまぐるしい新しい暮らしの中で、
なかなかゆっくり読めず、やっと読了。

海士町で暮らしながら読むと、
より自分の実感もありつつ読めたので、
少し感想も交えながら
日々感じてることを書いてみようかな~。

まずは本のご紹介

本書では、実際に都市部から
奈良の東吉野村という山村に
ご夫婦で移住され、
私設図書館を開かれている青木さんが、
どうして都市の資本の原理から逃れるように、
山村へ移住して私設図書館という
市場の原理では説明できない場を
開いているのか、
という理由について述べられている。

その中で、現代社会の生きづらさの根源として、
「資本の原理」という
ただ一つの原理のなかだけで
生きることしか選択肢がないことが
挙げられていて、

そうではなく「資本の原理」が働かない、
「別の原理が働く世界」にも
行き来できるようになること。

つまり、
自分にとっての「ちょうどよい」を見つけ、
身につけること=「土着、地に足をつける」
ことの大切さが書かれている。

「資本の原理」では、
数値化できるものや金銭によって
値付けされるもの(商品)で
価値が測られるけど、
そうして他者に価値判断を委ねるのではなく、
自分の感性によって、
ものや事柄の価値判断をしていく
ことの重要性。

土着することは、
自分の感性を「手づくり」することでもあり、
それは「資本の原理」との
終わらない格闘を通じて、
時間をかけて手づくりしていくもの
だ、
ということが述べられている。(p.19-27)

https://str.toyokeizai.net/books/9784492224205/

、、、と、ここまで書いてみたというものの、
全然わかりやすくまとめられないし、
趣旨と違うこと言ってるかも、、苦笑

本の概要をまとめたりするのが
めちゃくちゃ苦手なので、
ぜひ気になる方は図書館で
手に取ってみてください
(投げやりですいません)。

自分の生き方を他者の価値判断で選ぶしんどさ

そういえば来島する前、
職選びから暮らし方まで、
「人並みに」「それなりの」ものを選ばないと、
と追い詰められていたように思う。
(そもそも「人並み」とかの基準って
何なん?って話やけど)

周囲の人の声にも影響されて、
そうしないと社会で
生きていったらあかんのじゃないか、
くらいに思うようになっていた。

まじで息しづらい、、、
これはとにかく逃げ出さないとやばいな

ってことで来島したのもある。

その状況って、
まさしくこういうことやなって腑に落ちた。

ただ、僕が問題だと思うのは、物質的な豊かさと引きかえに、「僕たちの生」は「商品を選ぶ」ことと同じ意味になってしまったことです。
(中略)
そもそも商品は他者のニーズがなければ成立しません。つまり、生き方さえも、誰かのニーズがなければ選んではいけないかのように思わされてしまうようになったのです。

青木真兵『武器としての土着思考ー僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』, p.30, 東洋経済新報社.


「あなたくらいの学歴だったら、
こういう企業に就職しなきゃもったいない」
とか、
「なんでそんな仕事してるの?もったいない」 とよく言われた。

私がこれがしたい!って選んだ道なのに、
しきりに稼げる額や
社会的な地位とかを引き合いに、
「もったいない」とか周囲に言われつづけると、
自分ではよかったはずの選択が、
だんだん周りの声に応えないと、、、
って思えてくる。

自分の選択は間違ってたように
感じてくるのが、
しんどかったのを思い出す。
(てかそもそも、
その意味での「もったいない」って、
生き方とか進路を思いっきり
他者が価値判断してる言い方やなあ)

とにかく、自分の感性や
純粋にただやってみたいことを脇において、
他者から認められるか否かで生き方を選ぶのは、
自分にとってはものすごく苦痛
だったし、
そこからひとまず抜け出す方法はないかな
と思って選んだのが、海士町への来島だった。

他者ニーズを介さない個人的な体験

本書では、
なんでも商品化する社会から抜け出すためには、
他者ニーズを介さない
「個人的な体験」の積み重ねに
そのヒントがある
、と書かれている(p.42)。

不合理の塊である山村ではなく、合理的に設計された都市では真っ先にコストを考え、生産性を気にするような経済合理性に基づくスマートな行動を求められてしまうので、そもそも不合理と出会うことは難しい。
でもそうすると、僕たちは「商品という檻」から出ることはできません。
経済合理性をいったん捨て、一見不合理な状況に身を置くこと。
まずはそれが、他者ニーズから抜け出す個人的な体験を生み出すことになります。

青木真兵『武器としての土着思考ー僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』, p45, 東洋経済新報社.


いま海士町で暮らしながら
日々経験することの中に、
そうした状況はたくさんあるなあと実感する。

まず、ここでは毎日計画通りに
日々のスケジュールが
進んだことってあんまりない。(笑)
コストだの生産性だのでは、
語れない体験も多い。


例を挙げると、、、

①朝、散歩に出かけたら、
ご近所さんにたまたま出会って立ち話。
偶然出会っただけなのに、
お裾分けにたくさんのキュウリをいただいた。
でも、会話に夢中になって、
私は朝ぎりぎりに(笑)

とれたてのキュウリをたくさん!
ありがたすぎる、、、

②また別のご近所さんは、
たくさんのサザエを持って、
シェアハウスに来てくれた。

料理の仕方も、
時間をかけながらイチから教えてくれた。
「なんでそんなんも知らんのや~」
とか言いながらも、
一緒に作ってくれて、ワイワイ言いながら
サザエ料理の晩ごはんをたべた。

サザエとキュウリの酢の物!
本当に知らないことだらけで、
何もかも教えてもらった。

これらの出来事はどれも、事前に計画して、
予定していたわけでもない、
偶発的なコミュニケーション。
それらが頻繁に起こる。


だから自然と、
計画通りに一日が進むことなんて、
まあ無い
ことなんやなあ、と思える。

都市に住んでると、
計画通りに行くのが当たり前で
そうじゃなくなると、イライラしたり焦ったり。
でも今は、計画通り進んだら進んだで、
刺激もなくて面白味がないなあ、と思えてくる。

それにこれらの出来事は、
経済合理性にもとづいて起きたものはない
ということもわかる。

だって、ご近所さんたちにとっては、
私たちにキュウリをあげたり、
獲れたサザエを持ってきて、時間をかけて
料理の仕方まで教えてくれたりすることに、
なんの金銭的な対価も発生しない。

むしろ、手間がかかることだったりする。

私の立場でも、合理性だけで考えるなら、
朝ぎりぎりまで
立ち話する必要はないかもしれないし、
晩ごはんも手早くレトルトで一人で済ませて、
余った時間で
仕事なりなんなりすればいいかもしれない。

でも、それは楽な反面、
人とのつながりもうまれないし、
楽しさみたいなものがないなあって。

偶発的なコミュニケーションをしていると、
関係性が生まれてつながっていくのが嬉しいし、
心が満たされることが多い。

「消費による解放」は、地縁、血縁によってがんじがらめにされていた人びとを「自律した人間」にしてくれました。
この「自律した人間」を成り立たせた道具こそ、お金です。
つまり資本主義とは、「お金によってすべてを清算できる制度」とも言うことができるでしょう。

青木真兵『武器としての土着思考ー僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』, p64, 東洋経済新報社.

だから、それらに簡単に
お金で清算するなんていう、
値付けみたいな失礼なことはしないし、
できない。

現代社会は、なんでもお金で
解決できるシステムになってるけど、
それだけだと人との関係はつむぎづらいし、
なんだかさみしいなあと思う。

仲良くさせてもらってる
近所の一人暮らしのおじちゃんが、
最近みるみる元気になってるという話を、
同じ地区の別の方から聞いた。

どうやら、シェアハウスに住む私たちの面倒を、
「ワシがみたらなあかんのや~」
と嬉しそうに言っていたらしい(笑)

そのおじちゃんから、こじょうゆみその作り方も
1から教わった。

いつも良くしてもらってるのに、
自分には何ができてるのかなあと
思っていたけど、
ただその場にいて楽しくかかわるだけでも、
誰かの元気のもとになるんだな
と思うと、
すごくうれしくなった。

ここでは、
お金で清算できないやりとりが多い分、
なにか今の自分がやりたいことやできることー
経済合理性とは別の部分で、
関係性をつなげていきたい。


しかもそれが、家族とか友人とかではない、
「ご近所さん」との間で起きてるのが、
私にとっては新鮮だった。
それに、なにかあったとしても、
この人を頼ったらなんとかなるかも、
という安心感も生まれる。

それこそ
「他者ニーズを介さない個人的な体験」だな、
と思う。

そうした「一見不合理」な状況に
身を置いていると、
時間、手間、お金がもったいないから、
周りが認めてくれるような
合理的で経済的な判断を
次々していかなきゃ、
っていう切迫感が
少しやわらいできた
ように思う。

すべてが商品化されてない

さっきも書いてたように、
おすそわけやご近所づきあいの中で、
経済合理性とは別のところで
関係性を築いていくことを少しでも知ると、
全てがお金で解決できてしまう状況は、
逆に自分を苦しめる
こともあるんだと実感した。

ほとんど頂き物のお野菜で作ったごはん

もちろん、お金で何かを買ったり
サービスを受けることは、
生活するうえで必要不可欠だし、
海士町での暮らしでも当然お金は必要だ。

お金を得るには働かないといけないんやけど、
でも人って、いろんな理由で
働けなかったりするときもある。

そんなときに、お金でモノを買ったり、
サービスを受けることしか知らないと、
辛いのに無理してでも働かなくちゃ、って、
追い詰められたりする。

近代の原理の大きな特徴は、すべてを商品化できることです。すべてが商品化されるということは、お金さえあれば欲しいものが買えるし、受けたいサービスを受けることができる。
(中略)
つまり、むしろ社会が近代の原理だけで組み立てられればられるほど、お金がないことが「不自由」な状況へと人びとを追い込むことになってしまいます。

青木真兵『武器としての土着思考ー僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』, p80, 東洋経済新報社.

もちろん、働くことで人は社会とつながれるし、
お金もある程度必要。

だけど、お金を直接介さないやりとりで
関係性をつくっていくことや、
ただその場にいて、やれることをやっていると、
誰かのためになることもある

実感として知っていると、

「働かないと生きてる意味ない」
「生産性がない」
みたいな考えからは、
少し距離がおけるような気がする。

人間は理由などなくても存在してよいという「ケア的な部分」と、社会の中で役に立つことで自分の存在をより明確にできる「就労的な部分」どちらかだけでも人は苦しくなってしまいます。
ただ僕が思うのは、健常者と言われる人は知らず知らず就労的な部分だけで生きていることに気がついているのかということ。
いつのまにか僕たちは、この世界に存在するための理由を求められている。だから就職活動に失敗したり、仕事を退職してしまうと、自分は無価値なのではないか、生きている意味などないのではないかと思ってしまう。

青木真兵『武器としての土着思考ー僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由』, pp.141-142, 東洋経済新報社.

ここでいう
「ケア的な部分」と「就労的な部分」を
行ったり来たりして、バランスがとれることが、
地に足ついてる状態のひとつ
なのかなあと思う。

海士町に来る前、
「働けなくなっても、
人は無価値になんてならないし、
生産性で人の存在価値をはかるなんておかしい」
って頭ではわかっていた。

だけど、いざ自分がその立場になったら、
「働けてない自分は社会の中で
なんの役にも立ってないし、
早く働いて稼げるようになって
自立しないと社会で生きていけないかも」
って自分を追い詰めてたこともあった。

でも、「一見不合理な状況」で
「他者ニーズを介さない個人的な体験」を
する中で、
不思議とそういう切迫感はだいぶ和らいできた。

夕焼けを眺める余裕も少しできた

存在しているだけでもいいんや
っていう「ケア的な部分」が
自分自身の体感として
わかるようになってきた
と同時に、

私もそろそろ役割を持って
誰かの役に立ってる実感がほしいな~
と、
自然と「就労的な部分」も出てきて、
この二つのバランスがうまく取れるように
なることが「地に足をつけて生きる」上で、
大切なんやなあ
と、実感する日々です。

さいごに

めちゃくちゃ長くなったけど、
まとまりのない文章にお付き合い
ありがとうございます、、笑

簡潔にまとめるのが難しいけど、
とりあえずこの本と海士町での暮らしを通して
考えたことを書き留めておきたかったので、
それができてうれしい!
(完全なる自己満足!笑)

大好きな海士町の図書館で文章打ってました

日々私に関わってくれる人たちに感謝しながら、
残りの1か月の島生活も、
どうやったら自分は地に足つけて、
心地よく生きられるのかを
考えながら過ごしたいなあと思います。








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