大阪公立大学 小春さん「好きな研究ができ自分らしくいられる進路を」
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■ 高校時代はどんなことに力を入れた?
・高校の研究がきっかけで課外活動に打ち込む
能登: まず、小春さんがどのような高校生活を過ごしていたか教えてください。
小春さん: 私は中学、高校では医進・サイエンスコースにいたのですが、そこで幹細胞について扱う生命科学系の研究をしていました。具体的には、プラナリアという生き物の、どんな幹細胞の遺伝子が再生に作用するかをテーマに研究していました。
課外活動でも、JST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)のグローバルサイエンスキャンパスに参加して、大学の研究室で先生方にアドバイスを頂きながら毛細血管幹細胞の研究に取り組んでいて。
能登: 高校生のときから研究をされてきたんですね!
でも、小春さんは高校1年生のときに「GTE サマースクール」に参加していますよね。なぜアントレプレナー育成(起業家教育)系のプログラムに参加したのですか?
小春さん: 高校での研究活動で、外部に向けて研究発表をする場に立たせてもらえたことがあったんです。その経験から、黙々と研究をするのではなく「研究成果を社会につなげたい!」という意識がすごく育まれたんだと思います。
ただ、研究活動を社会還元するためには、それを実装するための力が必要だなと気づいて。社会実装のやり方の一つがスタートアップだと知り、そこから起業に興味がわいたのが GTE に参加したきっかけです。
・全て英語のプログラムで、たじろいでしまう
能登: GTE サマースクールは全て英語の宿泊型サマーキャンプだから、大変だったのではないですか?
(※ GTE Summer School 2023 以降は、講義やディスカッションは日本語、テキストは英語と日本語併記、作成するビジネスプランとプレゼンは英語にしています)
小春さん: はい、本当に大変でした! 本当に GTE は自分にとって大きなきっかけになったプログラムでした。
講義はすべて英語、海外から参加した生徒との会話も英語で。私は英語を使うプログラムに参加したのも初めてでしたし、ビジネスプランに挑戦したのも初めてで、本当に色々な初めてを経験できてたくさんの刺激がありました。
能登: GTE に参加した生徒は英語に自信がある生徒が多く、みんなとてもアクティブでしたよね。それでも、小春さんは気落ちせずガンガン行っていたので、英語を使った課外活動に慣れ親しんでいるんだろうなという印象でした。
小春さん: 全然!(笑) あんなガッチリと体系立ったプログラムで、かつ講義もすべて英語というのは初めてでしたね。留学したこともなかったですし。
人と関わるのが好きだったということもありますが、「物怖じしないぞ!」と気を張っていたところがちょっとあって。周りが帰国子女だったりそもそも海外の生徒が参加していたりしていたので、英語という部分で最初はとても苦戦しました。
能登: もともと英語は得意でしたか?
小春さん: 学校の英語では得意だと思っていましたが、実践で英語を使う場に入ってみると、最初はすごくたじろいでしまって。
でも、あきらめずに取り組んで、挑戦していたことで、チームの生徒やメンター、サポーターの方々がとても優しく気にかけてくれて。私にちょっと苦手なことがあっても寛容に接してくれたおかげもあって、どんどん突っ込んでいけたんだと思います。
それで自分がとても成長したな、成長速度が全然ちがったなと感じて。同じ高校生同士が高いモチベーションでお互い刺激し合いながら、切磋琢磨していけた環境がすごくよかったです。
小春さん: 英語を使うことにも格段に自信がつきました。参加する前はハードルが高く感じられたのですが。
能登: ハードルというのは、言語能力面や費用面でしょうか?
小春さん: 気持ちの問題ですね。「英語だから難しそう」と、挑戦する前にあきらめてしまいそうになる。
当時は英語力がまだまだで。GTE 2018 は完全に英語で、海外の生徒と混ざって行うプログラムだったので、本当にとても緊張しました。でも、どんな環境であっても高い環境に身を置く、自分で高い環境に飛び込むことが、やはり自分をすごく成長させる大きな要因だと思います。
■ なぜ大阪公立大学 生命環境科学域に決めた?
・自分らしくいられる環境を何よりも重視
能登: いま在籍している大阪府立大学(現、大阪公立大学)生命環境科学域を進路先に選んだのは、課外活動の経験も影響しているのでしょうか?
小春さん: そうですね、高校の医進・サイエンスコースでも、また JST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)のグローバルサイエンスキャンパスでも、ずっと幹細胞を研究してきたので、課外活動も影響しているかなと思います。
能登: 大阪公立大学は獣医学で有名だから、研究にとても良さそうな環境ですね。
小春さん: はい。でもそれだけではなくて。
大阪には親戚の家があって、小さいときから何度も遊びに来ていました。もともと住んでいたのは東京だったのですが、大阪の文化、カルチャーがとても自分に合うなと思って。実は、大阪を選んだ理由はそこにもあるんです。
やはり高3の受験の時期になるととてもプレッシャーを感じていて、心が苦しく感じる時期もありました。自分らしくいられない環境にずっと身を置き続けるのはつらいな、って。
それで、東京から一度離れて、自分らしくのびのびいられるカルチャーの中で大学生活を送りたいなと思ったんです。もちろん研究への興味もありますが。
能登: そういう進路の選び方もあるんですね! 上手く言えないですが、今まさに進路選択に直面してプレッシャーを感じている中学生・高校生やその親御さんにとっては、救いになる話かもしれないなと思いました。
・自分が知らない領域を体験できる活動に時間を使う
能登: GTE が終わったあとも、色々な課外活動に参加されたのですね。例えば、どんな活動に参加してきましたか?
小春さん: GTE のようなアントレプレナー育成(起業家教育)プログラムの他、創造性を育むプロジェクト、高大連携の研究プログラムや翻訳ボランティアなどにも参加してきました。
能登: それって、自分の将来のキャリアをある程度決めて、それに沿った内容の課外活動に参加してきたのでしょうか?
それとも、パッと見て「興味ある、うん受けよう!」という連続だったのでしょうか?
どのような基準で課外活動を選んできたのか教えてください。
小春さん: 私は、目に留まって「面白い!」と思ったらまずはとりあえず参加してきました。あまり精査はしていなくて。
自分の能力的、時間的に参加できるものがあれば参加してきました。「自分の持っている限られた時間を、できるだけ多様な視点をもらえるための時間につぎ込みたい」という思いがあったからです。
自分がやりたい、興味を持ったというところがすごく大事だと思っていて。それは、もしかすると自分が知っている領域ではなくて、新しい領域に飛び込む必要があることかもしれない。でも、なんだろう、自分の枠からちがうところに飛び込むと、興味ある分野が見つかるのかなと思います。
・なぜ受験を目の前にしても課外活動を止めなかったのか
能登: 高3になると受験勉強がおろそかにならないか、不安はなかったのですか?
小春さん: そうですね、私は高1のときに初めて課外活動という世界を知ったのですが、そのときは何も気にせずどんどん参加していました。
でも、やはりだんだん高校生の時間がわずかになってくると参加できるものが限られてくるので、「残された期間でどうしてもやりたい課外活動か?」と自分に聞くようにしていました。
「それでもやりたい!」という自分自身の声を聞いたので、結局、高校3年生の12月まで JST のグローバルサイエンスキャンパスの研究に取り組んでいました。
能登: そのときは、時間配分をうまくすることで不安を乗り切った、という感じでしょうか?
小春さん: うーん、学業と課外活動のどちらに比重を置くかは人それぞれだと思いますが… 私は自分自身の声を必ず聞くようにしていて。「これは今しかできないから、たとえ受験があっても絶対やろう!」という自分の声を聞いたら、そう決めて取り組んでいました。
能登: すごい。
小春さん: でも実は、外部からの圧迫もやはりあって。私自身、高3のときは「課外活動を止めた方がいいのかな」と悩みました。
それでも、「高校生は授業以外の時間は自由に使えるからのびのびと活動しよう」と決めて。ちょっと大変そうだと思ったことでも、たぶん全然できちゃうのかなと思います。
能登: いま高校生の方にとっては、勇気をもらえる言葉ですね。
小春さん: ぜひ、いま自分がいる環境の最大限を飛び越える気持ちで、挑戦してもらえればいいのかなと思います。
周りの意見に惑わされすぎずに、自分自身が「やりたい!」と思う方向に進んでほしいですね。
■ さいごに、受験にのぞむ高校生にメッセージを!
・自分の気持ちに純粋になることで、自分の個性を磨ける
能登: さいごに、中学生・高校生の進路選択について小春さんのご意見をうかがいたいなと思います。
今の時代、一般入試だけでなく総合型選抜(AO入試)や学校推薦型選抜、海外留学も選択肢に入って来たせいか、課外活動に興味を持つ中学生・高校生が多くなってきました。ただ、課外活動が色々ありすぎて、「時間がタイトな中で何に参加したらよいか分からない」という人が多いようです。
それで、コスパ(コストパフォーマンス)というか、「大学入試に有利な課外活動はどれが正解? 参加する前に知りたい」という声を、高校生、保護者、それに先生方からも質問されることが多くて。そういう方々にアドバイスがあればお願いします。
小春さん: 私は効率重視よりも「楽しそう!」と思った課外活動への参加を大事にしてきました。自分がやりたい活動を続けることで、他の生徒との差も生み出せると思います。
能登: 他の生徒との差別化になる?
小春さん: 効率性だけを求めると、だんだん皆、同じことをするようになってしまうと思うので。
能登: あ、そうか。効率性だけを基準にすると、その人それぞれの個性に関係無く、同じ課外活動が選ばれますものね。
それって、大学から見てもその生徒が何をしたいのか、その人の人間性が見えづらくなるように思います。
小春さん: やはり自分自身が「いいな」と感じた気持ち、ときめきが重要だと思います。ぜひ皆さんには、純粋な心で、周りの外圧に流されないでほしいなと思います。
ものごとって「私、それ知っている」と思ったら多分そこでダメで。自分はほとんどそのことを知らない、上には上がいる、と思って挑むことがすごく大事だと思います。だから本当に純粋な、無垢な状態の自分がそこに飛び込むことで多様なことを吸収できて、色々な変化を生んでいくんじゃないかなと。
自分を何か型にはめ込むようにするのはあまり良くないなと感じます。
能登: 純粋な心で、というメッセージが響きました。小春さん、今日はありがとうございました!
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