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Separation After Darkness

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短編、掌編を載せます。 幻想小説だったり(恥ずかしい)日常の一場面を切り取ったり、そうではなかったり。 私が見ている景色、感じた情景をみなさんにも共有したくて。
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2020年3月の記事一覧

A4用紙に書かれていたこと

 彼女の身体は銃身で、放った後は良く歌う。
"よく熱せられた銃が好き。あなたの次に好き"
 それ言うの待ってって。ちょっと言うのまだ早いって。まだだって。
"アギトをぐっと、奥歯をぐっと、食いしばって"
 俺と教授は彼女が穿つ様子をモニター越しに眺める。
"そのまま千まで数えて引き金。銃痕・イン・ザ・頭蓋"
『また頭蓋かい?』
 教授が俺に言う。
「そうなんだよ」
『カレイニナはよくはずしてしまう

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やけにうそぶくじゃないか

 やけにうそぶくじゃないか 
 引きちぎったくせに
 きのう 窓辺で 精霊たちと交感していたのを 知っているぞ?
 お前が 夜更けに風呂を炊いた 匂いが この部屋まで届いていた
 俺は まるで 黒曜石と寝床を 共にしている気分だったよ

 うそぶくじゃないか お前
 空も風も ごたごたにして 
 ラタトゥイユをつくっても 
 おれはわかっているのだよ

ラ(したさきが星をなぞる)
タ(硬口蓋を破裂

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ありていに言えば

 ありていに言えば、フォスターは不幸だったのだ。彼は救いを求め、彼女は救いを与えた。それ以上でもそれ以下でもない。
 フォスターの一日の大体のスケジュールは決まっている。朝目を覚まし、(人はそれを昼と呼ぶが)必ずコーンフレークを食べ、そして「何か」をするのである。再び夢を見たり、職を探したり、サボテンに水をやる事などだ。フォスターは人を惹き付けるものを何も持っていない。顔は公園の砂のようにざらつい

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