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火災や地震、台風で被災した機器からのデータ復旧方法

こんにちは、デジタルデータリカバリーです。

弊社では、台風、地震などによって被災した機器のデータ復旧をご相談いただくことがあります。

ご依頼いただく機器には様々なダメージを受けたものがありますが、中には火災で焼けてしまった機器からデータを復旧したこともありました。

水没や高熱にさらされた等、損傷の激しい機器からのデータ復旧は可能なのか? どのような難しさがあるのか?

データ復旧歴9年半、累計対応件数1万5,000件以上のベテランエンジニア薄井さんへ直撃インタビューを行いました。


前回の「容量偽装機器の使用リスクとは?見極め方・万が一の場合の対処法」の記事はこちら


1.火災や豪雨・台風で発生するデータ障害

日本は災害の多い国です。デジタルデータリカバリーでは、自然災害や火災などによって被災した機器からのデータをご依頼いただくことも多々あります。

聞き手:これまでご依頼を受けてきた中で、どのような被災機器がありましたか?

薄井さん(以下、薄井):主に、大雨や台風・火災・地震などによって被災した機器がありましたね。

聞き手:中でも多いのは、どのような被災機器ですか?

薄井:特に日本は地震が多い国ですので、地震の揺れによって機器が落ちた・倒れたなどの影響で衝撃を受け、データ復旧のご依頼をいただくケースが多いですね。
時期限定では、梅雨の季節や夏の台風の多い時期には水没してしまった機器が多くなりますね。

聞き手:どのような状態の機器でも、データ復旧はできるものなのでしょうか?

薄井:どれだけプラッタに破損が生じているかによって、復旧可能性が変わりますね。
例えば、火災で焼けてしまった機器だと、HDDを覆うケース部分が焼けていても中のHDDは無事な場合や、HDDまで焼けていても部分的な場合には、復旧できる可能性が高いです。
ですが、高温にさらされてHDDの中身が変形してしまった場合には、手の施しようがなく、復旧は難しいですね、、

聞き手:なるほど、データを保存しているHDDのプラッタ部分が、どれだけダメージを受けているかによって、データ復旧の可否が左右されるのですね。

これまで薄井さんがデータ復旧を手掛けてきた被災機器の中で、印象的なのはどういったケースかを、ご紹介いただけますか?

薄井:今回、数ある被災機器の復旧事例の中から紹介するのは、2020年の熊本豪雨で被害を受け、泥まみれになってしまった機器からのデータ復旧です。

ご依頼いただいた機器は、全部で37台(HDD32台・SSD5台)ありました。これらは豪雨で土砂に埋もれてしまった機器で、回収されてから約4日後に弊社に運ばれてきました。

水に少し浸かってしまったものから、ディスク内に泥水が侵入してしまったものもありましたね。


2.熊本豪雨の被害を受けて泥まみれ、機器の内部にも泥水が侵入した機器からのデータ復旧

聞き手:機器の数も多く、大変だったのではないですか?

薄井:ご依頼いただいた全ての機器をチーム一丸となって開封して診断しましたが、丸1日かかりましたよ。

聞き手:泥まみれの機器をひとつひとつ確認していくのは、想像しただけでも多変そうです。。復旧をご依頼いただいた際の機器は、そのような状態でしたか?

薄井:HDDを開封すると、プラッタに泥水が付着している状態でした。超音波洗浄機を使用して洗浄してから、スクラッチ加工といって、傷ついたプラッタの状態をもとに戻す作業を行いました。

※スクラッチ:HDD内部のデータの記録されているプラッタに傷がついていること

聞き手:プラッタと磁気ヘッドの間は僅か2nm(ナノメートル)しかない上に、目には見えない埃が付着しただけでも傷が入ってしまうほど、プラッタは慎重に扱う必要があるのに、洗浄して泥水を取り除くことができるのですね。

薄井:データを復旧するためには、まず不純物をプラッタから取り除く必要があります。どれだけプラッタに傷をつけずに泥を取り除くことができるかが重要になってきます。
洗浄で落とせるものもありますが、中にはプラッタにこびりついている為、人の手で少しずつ落としていく場合もあります。

聞き手:ご依頼主は、どのようなデータの復旧をご依頼だったのですか?

薄井:公的機関関連のデータでしたね。
今回ご紹介しているケース以外でも、被災機器の復旧では、住民の戸籍データなど、国や自治体などのライフラインに関わるデータの復旧をご依頼いただくことが多い印象ですよ。

もちろん個人様からもご依頼はあるんですよ。大切な思い出が詰まった写真データや、仕事に使用するデータなどをご依頼ただいたこともありましたね。

聞き手:自然災害時には、とにかく命を優先して避難していただいて、大切なデータの復旧は後からデータ復旧業者にお任せいただきたいですね。

被災して大きなダメージを受けた機器から大切なデータを取り戻すために、ユーザーに伝えたいことはありますか?

薄井:被災機器を回収したら、なるべく早くご相談いただきたいです。状況的に早めにお送りいただくのは厳しいと思うのですが、劣化が進んでしまう前に…
また、そのままの状態を維持し、乾燥させないようにしていただきたいですね。


3.高難度の障害も復旧できるエンジニアを目指して

聞き手:薄井さんは、今回ご紹介いただいたような難易度の高い復旧を手掛けるトップエンジニアとして活躍されていますが、技術力向上のために現在注力していることは何かありますか?

薄井:データ記録方式や機器の種類など、新しいものが次々と出てくるので、対応していけるように意識して日々研究に挑んでいます。
主な分野としては、ファームウェア関連やスクラッチ関連の研究をしています。
今あるスクラッチ修復技術で直せないものを直すにはどうすればいいか、研究しています。

※ファームウェア:機器を動かすプログラムのこと

聞き手:常に最先端に対応できるように注力しているのですね。薄井さんは物理エンジニアとしてスクラッチ修復を手掛けることが多いですが、弊社が経営革新賞を受賞した業界初のスクラッチ修復技術を開発した研究にも携わっていたのですか?

薄井:私は後半に、前任者から引き継いで携わっていましたよ。研究はやはり面白いですね、今後も研究を続けていきたいです。

聞き手:さすが薄井さん、あの革新的な技術開発に携わられていたのですね。今後はエンジニアとしてどのように活躍していきたいと考えているのですか?

薄井:私は今後も研究に没頭していきたいと考えています。ファームウェア関連やスクラッチ関連は、終わりのない分野なので、今後も研究を続けていきたいですね。

聞き手:薄井さんのご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました!



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