見出し画像

容量偽装機器の使用リスクとは?見極め方・万が一の場合の対処法

こんにちは、デジタルデータリカバリーです。

データ復旧やハードウェアについての情報を発信しているこのnote。今回は「容量偽装」のトラブルについて触れたいと思います。

HDDやUSBメモリなどを購入する際、なるべく安くいもの、容量が大きいものを探す人は少なくないでしょう。

実は、あまりにも価格の安すぎる機器や、正規ルート以外で手に入れた機器の場合、容量が偽装された偽物の可能性があります。

当社もこれまでにデータ復旧のご依頼をいただいた中で、お客様からお預かりした機器がデータの正常に保存されていない「容量偽装品」であると判明するケースに出会ってきました。

容量偽装品の機器を使用してしまうと、どのようなリスクがあるのでしょうか?
どうすれば、容量偽装品であると見極めることができるのでしょうか?

容量偽装の記憶媒体について、論理エンジニアとして活躍中の譚さんへ直撃インタビューを行いました。

前回の「大切なデータが詰まったスマホ、データ復旧技術の最前線」の記事はこちら

1.容量偽装の記憶媒体について

聞き手:容量偽装の記憶媒体とは、具体的にどのような手口で容量を偽装されているのでしょうか?

譚さん(以下、譚):例えば、記憶媒体の実際の容量が64GBであるにもかかわらず、2TBであると偽られているといったケースです。

また、外見はUSBメモリの形状をしており、USBメモリとして販売されているにもかかわらず、解体して中身を見たらTFカードであったなどといったこともあります。

※TFカード:マイクロSDの別称。日本ではマイクロSDと呼ばれるが、海外ではTFカードと呼ばれている。

聞き手:容量偽装の機器は、USBメモリに多いのですか?

譚:国内で流通している分に関しては、USBメモリが多いですね。弊社で復旧のご依頼を受ける機器の中でも多いです。ですが、HDD・マイクロSD・SDカード・SSDなど、どの機器でも容量偽装は可能です。

聞き手:容量偽装の機器を使用すると、どのようなリスクがありますか?

譚:論理的な問題としてはデータを消失したり、物理的な問題としては機器自体が破損するリスクがあります。

論理的な問題が生じるケースでは、ファイルシステムが破損してデータが壊れることが原因にあります。文字化けやフォーマット要求、データが開けない、カメラで使用しようとすると画面が真っ黒で何も見えない、などの症状が出ます。

※ファイルシステム:保存されたデータを管理し、操作するための機能のこと。

物理的な問題が生じるケースでは、機器自体が使用できなくなり、最悪の場合は復旧もできなくなることがあります。


2.被害にあわないために

聞き手:容量偽装の機器の特徴や、見極めるポイントはありますか?

譚:容量偽装の機器を使用して被害にあわないために、気を付けるポイントは4つあります。

1つ目は、市場価格より極端に安いものに気を付けることです。ネットで探すと出てきますが、例えば2TBのSSDで3,000円台のものなどは怪しいです。種類にもよりますが、このくらいの容量だと通常は2~3万円はかかります。

2つ目は、メーカー不明のものや、有名なメーカー(東芝など)の偽物に気を付けることです。偽物の場合、色やデザイン・パッケージが若干異なる程度で、一般人には見極めが難しい程よくできています。なるべく正規店や家電量販店など、信頼できる場所で購入するようにしましょう。

3つ目は、大きすぎる容量が記載された機器に気を付けることです。例えば、USBメモリで2TBもの容量があると記載されているものは怪しいです。USBメモリでここまで容量が大きいものは、一般に流通していません。

4つ目は、買ってすぐに容量偽装チェックソフトで調べることです。容量偽装品は、初めて使用する時点からエラーが発生することが多いのも特徴です。おかしいと感じたら、調べてみることをおすすめします。

聞き手:なるべく安いものを購入したいと考えて探したり、そもそも記憶媒体の市場価格がどの程度かを理解していない場合には、容量偽装の機器を購入してしまう可能性が高いですね。

譚:そうですね。容量偽装とは知らずに購入して使用し、被害にあうケースが後を絶ちません。
また、記憶媒体が適切に処分されないことが、容量偽装の機器による被害を生み出してしまう可能性があります。

聞き手:記憶媒体の適切な処分ですか?

譚:はい。記憶媒体をちゃんとした業者に引き取ってもらうなどしなくては、容量偽装品を製造する悪徳な業者に利用され、次の被害者が出てしまいます。64GBのUSBメモリの外見をした機器が、解体して中身を確認すると、実際は4MBしか入らないTFカードであったという事例も、結局は適切に処分されなかった機器が悪用された結果です。


3.もしも自分の機器が容量偽装品だったら

聞き手:機器が容量偽装品であると判明するのは、どのようなタイミングなのでしょうか? 当社へデータ復旧をご依頼いただくお客様は、ご自身で容量偽装品だと気付かれているのですか?

譚:お客様が容量偽装品だと気付いていることは、ほとんどありませんでした。当社の復旧エンジニアは何千台もの機器に日々触れていますので、大体のケースでは見ただけてすぐ偽装品だと分かりますが、一般の方は余程意識していなければ気づかないものだと思います。

聞き手:万が一、使用している機器が容量偽装品だとしても、データを失わないためにできる対策はありますか?

譚:やはりこまめにバックアップをとると良いでしょう。2つ以上の機器に保存するなどすれば、リスクヘッジができます。

4.容量偽装の機器からのデータ復旧は可能?

聞き手:データ復旧したい機器が容量偽装の機器である場合、データを取り戻すことはできますか?

譚:データを取り戻せる可能性はあります。ですが、データの保存状況に依ります。実際の容量よりも少ないデータを保存していた場合は、取り戻したいデータを全て取り戻せる可能性があります。

聞き手:データを安全に取り戻すために、データに不具合が生じてから注意することはありますか?

譚:それ以上通電せず、データ復旧業者に相談しましょう。
容量偽装の機器からのデータ復旧は、正規の機器とは事情が異なるため、安全に取り出したいのであれば、復旧ソフトの使用など、ご自身での対処は控えた方が良いでしょう。

聞き手:実際に、容量偽装の機器はどのくらい弊社に届いているものなのですか?

譚:月に3~4件はあると思います。容量偽装であっても無くても、復旧できる状態であるかの確認が最優先のため、あまり意識してカウントするものではないのですが、感覚としてはそのくらいあります。

聞き手:復旧実績の方はいかがでしょうか?

譚:容量偽装の機器からでも、データ復旧の実績はかなりあります。先ほど説明したような理由でカウントしていませんが、正規の機器と同じように、データが見られないなど不具合の原因を追究し、それに対する的確な修復を行えば復旧は可能です。

聞き手:容量偽装の機器からのデータ復旧において、正規の機器と比較した違いや難しさはないのですか?

譚:論理的な面では特に違いはありません。ファイルシステムの破損や、データ削除・上書きに対する考え方・作業に違いはありません。
物理的な面では、違いがありますね。容量偽装の機器では、ファームウェア上に嘘の情報が書かれているため、本当はどのような機器であるか不明という難しさがあります。

聞き手:なるほど。データ復旧業者としても、容量偽装の機器はやっかいなものですね。


5.語学力を生かして活躍する譚さん

聞き手:ここからは譚さん自身についてお聞きしたいと思います。譚さんがエンジニアとしてやりがいを感じるのは、どのような時ですか?

譚:エンジニアはお客様と直接触れ合う機会が殆どありませんが、お客様からお礼のお手紙などで感謝を伝えられると、とても嬉しくなります。


また、先日、海外から来た友人と仕事についての会話をしていた際に、データ復旧の仕事をしていると言ったら、"Saving the life”と言われました。デジタル化が進んだ現代、データは命と同じくらい大事なものです。それほど重要なデータを救い出すエンジニアとして日々働くことは、かなり大きなやりがいがあります。

聞き手:本当にそうですよね。様々な情報をデジタルデータで管理する時代ですし、データが無くては世の中も回りません。データ復旧の最前線でする譚さんやエンジニアの方々は、世の中に大きく貢献していますね。
それに、譚さんは会社の中でも語学力を活かして活躍していますよね。

譚:私は日本語・中国語・英語の3か国語ができるので、ファイルシステムの修復に関する海外の文献や論文を翻訳して、会社のノウハウ蓄積に貢献できていると思います。

聞き手:譚さんのバックグラウンドを活かした素晴らしい貢献ですね。今後挑戦してみたい研究や、やってみたい復旧はありますか?

譚:やってみたい研究は、Macから削除したデータの復旧です。これは、まだ世界的にも復旧方法が見つけられていないものです。
Macに保存されたデータは、保存時から暗号化されますが、削除してしまうとその時点で複合化キーも削除されてしまうといった仕組みになっています。
論理エンジニアとして、非常に興味深い課題です。

聞き手:世界的に未だ解決されていない課題に取り組みたい…素晴らしい意気込みですね。本日はありがとうございました!


データ復旧のご相談はこちら

デジタルデータリカバリーでは、データ復旧のご相談・初期診診断を無料で行っております。お困りの方は公式HPよりお電話にてお気軽にご相談ください。
公式SNS(復旧事例多数発信中!)
TwitterFacebook


デジタルデータリカバリーのエンジニアインタビュー

譚以外のエンジニアの声もご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?