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「絵を描く」という作業〜緩和ケアでのOT〜

いよいよ暑くなってきましたね!
そして今年は初のじゃがいも掘り。
無肥料で、大して工夫もしていなかったので収量は大したことがないですが、「じゃがいもはこうやって育つんだ」「こんな葉っぱなんだ」ということが体感できて良かったです。
体感が畑をする一番の目的なので(^^ゞ

さて、今日のテーマは今年の3月から久しぶりに担当することになった緩和ケア病棟での話です。
緩和ケア病棟とはがんを始めとした終末期の方が苦痛を緩和することを目的とした病棟です。
看取りが目的ではなく基本的に退院を目指すことがホスピスとの違い。
それでもかなりの方が在院中に亡くなってしまう、厳しさがあります。

緩和ケア病棟に入るにはいくつかの条件があり、そのうちの一つに「積極的治療をしない」というものがあります。
それは最期が近いということを受け容れるということでもあります。
身体的、精神的、そしてスピリチュアルな痛みの中でリハビリテーションは何ができるのか。
答えのない中で患者さんと向き合っています。
リハビリテーションは「良くなっていく助けをする」というイメージが強いかと思います。
一方、がんの終末期は徐々に身体機能が落ちていくステージ。
単なる機能改善が目的とはなりにくい病期です。

リハビリテーションとして何もできないままお亡くなりになることも多々あります。
そんな中、印象的な患者さんがいました。
がんの終末期で脳卒中も発症された方。
麻痺は軽度ですが片方の手足に動かしにくさがありました。
リハビリテーション依頼が出た時、既に一旦お家に帰ってからすぐに施設へ入られることが決まっていました。
色々なものを諦めたような表情をされていたことが印象に残っています。
幸い痛みはさほど強くない様子。

私は「何かやってみたいことはありませんか?」と尋ねてみました。
すると「絵を描いてみたい」とおっしゃいました。
7年ほど前から水彩画を習っていたそうでそれが生きがいだったようです。
既に退院が決まっていて3日間しか残っていなかったのですが即座に「やりましょう!」と答えました。
やりたいことを尋ねてすぐ答えられる方は少ないです。
即答できるということは相当に強い想いがあるということ。
それは「やるしかない!」となるわけです(^^ゞ

リハビリテーション室を探すと水彩画の道具を発見♪
画用紙を買ってきて足りない道具は子どもに借りてきました(息子よ、ありがとう)。
無事、翌日からスタート。
ご本人と相談し、ベランダに咲く花を描くことに。

とても集中して描いていました。
そこに初めに感じた諦めの表情はありませんでした。
隣でジッと見つめられていてはやりづらいことこの上ないので私も横で描いてみます。
絵を描くことはどちらかというと苦手な部類ですが、教わりながら描いてみます。

下絵を描いて色を塗っていくわけですが、水彩画初心者としては目からウロコの連続。
絵の具はほんの少しで水を多めにすることでとても繊細な淡い色合いを表現できることを教わりました。
少し水を足すことで濃淡をつけられることに驚きです。
見様見真似で描いてみますが全然違います😅
(お見せできるシロモノではないのでアップしませんが…)

見事3日間で描き上げることができました。
とてもいい色合いの絵でしたが、ご本人としてはやや納得がいっていない様子…。
「思ってた色とちょっと違ったなぁ…」と言いつつ
それでも概ね満足されたようです。
最後はとてもいい笑顔を見せてくれました。

退院の際は挨拶ができなかったのですが次のようなうれしいメッセージをいただきました。

「入院してもう絵なんて描けないと思ってました。でもリハビリさんが『描いてみましょう』と言ってくれたお陰で描くことができてとてもうれしかった。本当にありがとうございました。」

うれしかったですね。
諦めていたことを1つ叶えるお手伝いができたこと。
そしてまた笑顔を見ることができたこと。
OT(作業療法)における作業とはその人にとって大事な活動。
この方にとって水彩画を描くことはかけがえのない作業でした。
「作業」をすることが生きること、と言っても過言ではないのかもしれません。
そのチカラを改めて感じることができました。

当然そううまくいくことばかりではありませんが、これからも1人1人にとっての価値を生み出せる存在でありたい。
そんなことを思いつつOT、そしてめぐりやをやっています。

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