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北欧家具と最近のこと。vol.21

今朝起きてカーテンを開けると、隣の家の屋根にうっすらと雪が積もっていました。本当にうっすら~と。
雪が降ると実際は交通などが何かと不便なので面倒ではあるんですが、
それでも「雪が積もる」と聞くとわくわくしてしまうもので。ちょっとがっかりな朝。今日はただただ、寒い。

たいへん遅くなりましたが、(もうとっくに)2020年を迎えておりますね。
本年もどうぞよろしくお願い致します。

そしてまた、日記のタイトルを変更します。(しました↑↑↑)
ころころ変えてすみません。
日記に何が書かれているか分かり易い方が良いんじゃないかとアドバイスを頂いたので、この通り。これからはこんな感じで至ってシンプルにいこうと思います。

最近の仕事のこと

暮れ頃から、年始セールをする or しない、でずっと迷っていたのですが
やっぱりやろう、と開催することを決心し、年始早々の1月2日にウェブサイト・インスタグラム・Twitterそれぞれにて急遽お知らせをして臨みました。

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前回、夏のセールの時に”ボリュームに欠けるセールだった”と反省をしていたのですが、相変わらずボリュームが物足りない。
であれば、量より質で短期決戦!と意気込み、セールに向けて新しい家具を仕上げていきました。
(↑↑↑ 10日から19日まで、実質10日間なのですが、一日店休日を挟みましたので、営業日に準じ”9DAYS SALE”と打ち出したのです。)

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セールへ向けて仕上げた家具の一つ。
こちらは日本でもとても人気のあるデンマークのデザイナー Kay Kristiansen(カイ クリスチャンセン)によるキャビネット。

これといった特徴がないことが特徴というか。
シンプルで普遍的なデザインの中にもどこか洗練された印象を感じられる作品です。
すっきりとシャープなようでいて、温かくてマイルドな風でもある。
ちょっと語彙力が足らず上手く伝えられないのですが
どんな家具とも喧嘩せず、空間に溶け込んでくれるような懐の深さ。ずっと見ていても飽きない、とにかく素敵なデザインです。

(こちらはセール期間中に売約となりまして、先日お客様の所へ納品にも伺ってまいりました。久しぶりに「納品事例」用に写真なども撮らせて頂いたのですが、納品後すぐにお客様から嬉しいメールやら改めて写真なども送って頂いたりして。そちらはまた今度)

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さらにこちらのチェア。

盟友ハンス・ウェグナーと共にデンマーク家具デザイン界の二大巨匠とも称されているBorge Mogensen(ボーエ モーエンセン)による「J39 ダイニングチェア」
アメリカのシェーカー家具からインスピレーション得て”リデザイン”されたことから日本では「シェーカーチェア」と呼ばれていますが、本国では「People's chair(国民の椅子)」などと親しまれている傑作椅子であります。

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コンパクトなサイズながらも、背凭れは一枚のオーク無垢板を曲げ木して、腰の当たりをサポートしてくれるしっかりと安定感のある座り心地。

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また脚部や脚を繋ぐ貫と言われるフレーム部分には全て丸棒のみを使用しているのですが、面のとれたやわらかく温かみのある表情や、互い違いに交錯する貫部の美しいシルエットなどがうまく調和されていて、単調なようで細部まで見ごたえのあるデザインとなっています。

さて。この素朴でいて美しい外観もさることながら、この椅子がデザインされたその背景こそ、実はこの椅子を語る上で欠かせないポイントとなっているので、語りたいのですが…(…長いので控えめにがんばります。。)

1942年。デンマーク生活協同組合連合会(FDB)より”インテリア事業を通してデンマーク国民の消費者生活水準の向上”を目的に『FDB Mobler』(FDBモブラー)が設立されました。
その初代チーフデザイナーとして任命されたのがボーエ・モーエンセン氏。
着任に際し、彼には『すべてのデンマーク国民のために、丈夫で安価で良質な家具』をデザインするという、過酷なミッションが与えられていました。

王立芸術アカデミー在籍当時にはコーア・クリント(デンマーク家具デザインの父と称される方。)に師事をしたモーエンセン。クリントの提唱する『リデザイン』の思想(温故知新の考え方。素晴らしいデザインは既にあり、そこから新しいものをデザインし直していく考え方)を受け継いでいたこともあり、アメリカの簡素ながら堅実なシェーカー教徒たちの生活様式からヒントを得て、着任から5年経った1947年、ようやくこの椅子が発表されました。

1947年というと、その当時はまだ戦後間もなく、地理的にはドイツと国境を隣り合わせるデンマークでも、その被害は深刻なものだったことでしょう。
そのため当時、首都であるコペンハーゲンには職を求めて多くの若者や労働者たちが流入してきたのですが、現実には仕事を見つけることはとても困難でした。そうした状況を鑑みて『家具の知識が無くても簡単に組み立てが出来る構造で、誰にでも編めるペーパーコード編みの座面を採用した』この『J39』ダイニングチェアがデザインされ、街に溢れる労働者たちを集め、歩合制で家具製作の仕事を与えるという役割をも担いました。

彼の培ってきた知識や経験を結集して『丈夫で安価で良質な家具』というミッションをクリアしたうえで
尚且つ、この”簡素なフレームワーク”や”ペーパーコード編みの座面”を敢えて選択しデザインに取り入れたことで、当時の社会問題とも向き合い
「家具を使う人」だけでなく「家具を作る人」ひいては『すべての人』を幸せにしたい、というそんな”想い”が産み出したデザイン。
その”想い”こそが、「People's chair」として今でもなおデンマーク国民に愛され、親しまれている所以なのだと思います。

(私事ですが、去年はそこそこ苦労してこのペーパーコード編みを修練した(いや、今でもまだ進行形ですね)ので、、、誰にでも編めるって言われると少し心外です。。)

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その他、椅子やテーブルなどもいくつか新しく仕上げ、1月10日からのセールが始まりまして

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セール開始すぐの週末は三連休だったこともあり、多くのお客様にご来店を頂けました。皆様、ありがとうございました。
↑↑↑ 3日目の閉店後の店内奥の様子。
発送する分、(自分で)納品する分、しばらく保管する分、と目的ごとに保護・梱包作業を進めていきました。

そして週明けには梱包などの作業も一旦落ち着き、補充のためにまた新しい家具のメンテナンスを行いました。

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(ディーラー曰く)スウェーデン製のキャビネット。(材の使い方や構造などを見ていると、どうもデンマークぽいなぁとも感じていますが、確証もないので。とりあえず長いものには巻かれておきます。スウェーデン製ということで。。)
本来は左右それぞれが自立をする2段式のキャビネット×2なのですが、2台をぴったりと並べたこの姿、迫力、が格好良い!美しい!と一目惚れをして買い付けたアイテムのため、とりあえず、しばらくは2台セットで提案をしていこうと思っています。

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丸い目のような把手、耳のように飛び出た側板。シンプルであり、なかなかチャーミングなデザイン。自由自在にレイアウト出来る使い勝手の良さも魅力的な、無銘ながらもハイクオリティな一台です◎

と、こんな感じで、量は少なくても質の高い家具を(セール期間にも関わらず!)ご紹介させて頂きました。
セール前半に比べ、後半はご来店されるお客様も落ち着いてしまいましたが(皆さん前半のうちに狙い定めて来てくれたのでしょう。)
期間中通して多くのご来店やお問合せ、誠にありがとうございました!

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セールの合間を縫って、(以前にお店をご利用いただいている)お客様より家具の修理依頼を頂いていましたので、そちらの作業も並行して進めていきました。

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クラシカルなベントウッドチェア(曲げ木の椅子)
モダンな北欧家具と合わせても可愛かったので店内にて撮影してしまいました。

修理としては「前脚がぐらぐらになってしまい、使用するのが怖くて、、」と相談を頂いておりましたので
①両前脚を外して古い接着剤の除去→②(恐らく経年による材の収縮によって)木が痩せてしまい、仕口部分に隙間が生じていたため、調整→③圧着作業→という、工程を経て無事完了。先日既に納品も済ませてまいりました。

今年の目標

「一年の計は元旦にあり」ということで(もうすぐ一月もおわりますが)
色々と変えていこうと思うこと、新しく挑戦してみようと思うこと。
いくつか考えています。

新しく挑戦しようと考えているコトで具体的なものは現在二つ。

一つは上にも書いていますが、「持ち込み家具の修理」
ひとつひとつ、モノも違えばその症状も異なる家具の修理ではありますが、ある程度の大まかな修理予算やお店で出来る事・出来ないことなどを分かり易いようにまとめて、出来るだけ早くウェブサイトや店頭でお知らせをしようと思っております。

もう一つ、新しい挑戦(企画?)も現在練っている最中で。決心が固まり次第、こちらは2月中(おそくとも3月中)には発表したいと思っています。

変えていこうと思っていることは(細かく言えばいろいろあるのですが)
ざっくり大きく言うとこれも二つ。

一つは『時間の使い方』
現在、ほとんどすべての家具の修理を自ら行っている。様々なタスクがある中で、一つ一つの仕事に時間を使いすぎている。(→これによって商品在庫の量も少なく、結果、上述したように量の少ないセールを開催するという始末に。商品量を増やしたい、けどなかなか増えないという葛藤。)
であればいくつかの修理作業を業者に外注してしまう、ということも一瞬頭をよぎったのですが(現在でも自分に出来ないことは外注しているが)それは何か違う気がする。
出来ることは自ら手を掛ける、という今のスタンス。
今は出来ないことであっても、少しずつでも自ら出来るようにと、学び、修練していくという今のスタンス。これを辞めたら別に個人でお店をやっていく意味、意義、そういうものがなくなってしまう気がする。

であれば、時間の使い方そのものを変えて、効率よく様々なタスクをこなせるように変革してくことが必要で、今それを考えているところ。
家具の修理に充てる時間。ウェブサイトやSNSの更新作業に事務仕事。そして家族との時間。
どれも必要だからこそ、『時間の使い方』は本気で死ぬ気で考えて、変えていく。

もう一つは『商品価格を(少しずつで良いので)上げていきたい』ということ。上の『時間の使い方』とも少しリンクする話かもしれないけど。

たっぷり時間をかけて、一つ一つの家具を修復していくこの仕事。
この地味な作業が好きで、楽しくてやっているのだけど、時々俯瞰してみると、古いモノにまた新たな命を吹き込んでいく、というなんだかとてつもなく尊い瞬間があって。
であれば、そのたっぷりと注いだ時間に相応するだけの対価を、きちんと商品価格へ反映させていきたい、と今更ながらに思ったりして。

でも『たっぷり注いだ時間=商品価格』ではもちろん決してなくて
「商品価格」とは、「お客様からの信用の値」と言い換えることが出来ると思っています。
商品価格を上げていくのであれば、その分これまで以上に商品クオリティや商品のセレクトにこだわって、納得をしてもらう必要がある。
そのために何をすれば良いか。新しく始める事もあれば切り捨てることもあると思う。

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と脈絡なく、変えていきたいこと、挑戦したい事を綴りましたが
その先にある「ゴール」を明確にしておくと、その道筋や手段、方法がクリアになると思う。というか色々考えてみると、結局その色々なことはたった一つのゴールへ向けての手段なのだと知ることが出来る。
なので今日は忘れないようにそのゴールをここに書いておこうと思います。

ゴール→『めちゃくちゃ格好良くて、愛のある、ヴィンテージ家具屋』

ふわっとしてますが。これ本気です。
やっぱり愛のない仕事は駄目だと思います。愛って、言葉にするのは恥ずかしけど、一番大事なことです。
で、格好良くないと自分自身仕事しててもきっと楽しくないし。楽しくない仕事から心トキメクものは何も生まれないと思いますので。
ちょっと”馬鹿げた”「ゴール」と思われるかもしれませんが、シンプルに(もちろん本気で)目指しておりますので、応援よろしくお願い致しますm(_ _)m

最近の仕事のこと-2

と、このへんまで書いて、日記を更新しようと思いながら見直したりなんかしているうちに
さっきもう一つ新しい家具が仕上がりました~!

デンマークデザイン・20世紀家具デザインを代表する家具デザイナー、
Hans. J. Wegner(ハンス・ウェグナー)によるロッキングチェア『J16』

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北欧家具と言えば、というくらい、ウェグナーの人気は世界中で今なお高く評価されていて、ご存知の方も多いと思います。
このロッキングチェアは1944年に発表されたのですが、先に挙げた『J39』ダイニングチェアをデザインした「ボーエ・モーエンセン」との共作とも噂されていることでも知られる名作椅子の一つ。

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美しいの一言です。

こんなに美しい椅子を、上から下まで余すところなく手を掛けられたこと。新しい命を吹き込むことが出来たこと。これ以上ない悦びです。
作業中ドキドキワクワクしっぱなしでした笑

詳しい家具の説明までしている時間がなさそうなので、詳細はこちら↓↓↓よりご覧ください~​

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今日も長いナガイ日記にお付き合いいただきありがとうございました。
もう少し簡潔に纏められるよう頑張らねば。(←時間の使い方)

それではまた次回。