見出し画像

日本からスーダンを応援し、「ともに未来を築いていこう」

2023年4月15日、スーダンの首都ハルツームで突如勃発した武力衝突。前年からスーダンで暮らしていた私は、衝突の起こる2日前に、たまたま子供二人と日本に一時帰国していました。

戦いはすぐに終わるだろう、予定通り6月にはスーダンに戻れるだろう、と軽く考えていましたが、武力衝突から1週間後に「NHKニュース7」の担当の方から連絡を受けてその日の夕方に取材を受け、夜、数秒間テレビに登場する自分を見て、初めて国際ニュースの当事者に自分がなっていることを自覚しました。あの時、NHKの方々と取材のやり取りをして、ニュース番組を作るスピード感に大層感心しました。私のような名もなき市民の声を全国に伝えてもらえることはとてもありがたかったです。そして、普段全くと言っていいほど注目されないスーダンが連日トップニュースで報じられることが、嬉しいような悲しいような複雑な心境でした。

徐々にスーダンには戻れないと悟り、市役所や社会福祉協議会、ハローワークを駆けずり回って、市の公立保育園に子供を預けることが叶い、なんとか日本での生活基盤を整えました。日本人なのに突如難民のようになってしまい、日本に温かい家族や友人達がいること、日本が公共サービスの整った国であることに心から感謝しました。帰国直後から今に至るまで、様々な面で生活を支えてもらっています。

帰国直後、地元の国営昭和記念公園の龍の遊具で遊ぶ我が家の子供達。スーダンには日本で至る所にある普通の公共の公園も全くありませんでした(遊園地で有料で一度だけ遊びました)。「#かなえたい夢」プロジェクトを実施するさわかみ投信さんの代表取締役社長澤上龍さんのお名前にも「龍」が!辰年の2024年が世界中のすべての人にとって素晴らしい一年になりますように!!

そもそも、一家でスーダンに渡ったのは、「空手道場を開き、スーダンで空手家を育成する」という夫の夢を実現するためでした。空手はスーダンでとても人気があります。日本で20年間空手に励んだ夫は、その恩返しに母国に道場を開いて空手指導者を養成し、近隣アフリカ諸国でも空手セミナーを行って空手をもっと広めたいと考えていました。日本より治安の悪いスーダンでは、空手は実用的な護身術になります。精神を鍛えることが身を守るために何より大事なのだと夫は話していました。

2020年に夫がスーダンのローカル番組の生放送に出演し空手や日本を紹介した時の一場面。写真左から四番目は、夫の所属する空手之道世界連盟(KWF)首席師範矢原美紀夫先生。数々のエピソードが偉人伝として伝わる世界的に有名な伝説の空手家です。帰国後、スーダンでの夫の安否を気遣い、門下生でもない私のため時間を作って相談に乗ってくださった優しさに感謝しています。左から五番目はKWFスーダン支部長アズハリー・バシール氏。彼なしにKWFスーダン支部の発展はありませんでした。素晴らしい働きに感謝するばかりです。左から二番目は夫エルサーディク・オスマン。

武道に全く関わってこなかった私の人生に、夫は空手という特別な世界を見せてくれました。日本や世界各国の空手仲間と夫との間には、心が通じ合う独特のつながりを感じます。そんなことを教えてくれた夫に感謝し、スーダンで空手道場を開く夢を、日本人の妻として支えたいと思っていました。
以下の記事に、スーダンでの空手稽古や大会の写真をアップしました。「空手が好き!」と稽古していた子供達は、住んでいた場所を追われて今頃どうしているだろうと思うと涙が溢れます。

そんな想いの詰まった空手道場でしたし、道場以外にも飲食店などを開いて商売で生計を立てていく計画だったので、私は日本にいながらどうやってその実現に向かって進めば良いだろうかと考えました。スーダン滞在中から検討していたクラウドファンディングを活用できないかとLOCAL CREATION 代表理事の生島正さんにオンラインでご相談しました。親身になって現実的なアドバイスをくださったことを今も感謝しています。

この時に生島さんや友人に相談して最終的に気づいたことは、今スーダンの自宅に空手道場を開いても、誰も稽古に来れないという現実でした。戦いが広がり、強盗略奪レイプが頻発して治安が悪化している町。停電・断水・ガス欠も日常化し、物流も不安定な状況。スーダンでは商売を始められない。愕然としました。私はこれから子供達と一緒にどうやって生活していけば良いだろう。

そんな時に生島さんと女性起業支援の草分け的存在である叶理恵さん株式会社はっぴーぷらねっと代表取締役、一般社団法人ライフミッションコーチ協会 代表理事)との対談Youtube番組(「幸せ女性起業家大学」叶理恵 -女性が自分らしく生き方・働き方を考える-『【超有料級】クラファンで成功する人は何をしているのか?このように信用の可視化装置を攻略せよ。』)をみて、とても腹落ちしたことがありました。私がお話から理解した本質は、自分のことばかり考えていてはダメだということでした。自分が周りの役に立つことをする。それが成功するために必要なこと。

空手道場も飲食店も役に立つことではあるのですが、今のスーダンの状況では、もっと大きく役に立たなければ全然足りないと私は感じました。スーダン社会が良くならなければ。戦いが終わり、社会が安定して発展に向かい、争いが繰り返されないスーダンにならなければ、道場を開くことは難しいと感じました。

オムドゥルマンに建設中の自宅兼空手道場



スーダンのことを日本の皆さんに知ってほしい。戦争が終わったら、技術力の高い日本の企業がこぞってスーダンに投資してくれたら…破壊された首都も美しい街によみがえり、資源豊富なスーダンは世界の注目の成長を遂げるのに、と思っていました。

そんな時に、さわかみ投信さんの「#かなえたい夢」プロジェクトを知りました。「最優秀賞:当社が夢の実現にむけて本気で応援します。」…って、一体どういうことだろう?!「当社による応援とは、夢の実現に向けた機会の提供や金銭的な支援等を想定しています。」え?ええっ?
スーダンのために絶対最優秀賞を取らねばならないと思いました。


1.かなえたい夢とその理由



カフェ、美容サロン、宿、そして農園ヴィラ

空手道場は建物の地下に予定しており、1階には飲食店、2階には美容サロン、3階から上は賃貸マンションあるいはホテルにする予定でした。飲食店がスーダン人の生活に欠かせないのは言わずもがなですが、美容サロンもスーダンの街中で沢山見かけました。マンションの一部は短期滞在用の宿泊施設にするのも良いねと夫と話していました。

私は、これらの場所で日本のサービスや製品を体験できるようにしたいと夢を描きました。和室を作って、季節折々の行事を感じられるディスプレイを置き、日本の伝統文化を発信する場にしたい。ラーメンなど日本の味を試してみたい人、家電など日本製品が欲しいけれど高価で買えずにいる人、憧れの日本に行くのは難しいと思っているスーダン人が気軽に立ち寄れるカフェと宿泊施設。それほど日本に興味がなくても、娯楽の少ないスーダンですから、他にない珍しさできっと話題になります。さらさらストレートヘアへの憧れが強いスーダン女性は、日本製の性能の良いヘアアイロンや、馴染みのあるヘナ染の高品質な製品、ヘアクリームなどを体験できる美容サロンがあれば、サービスを受けてみたいだろうなと思いました。

通りに面した飲食店スペースを仲良く掃除する異母兄弟たち
飲食店スペースの内部の様子

スーダンの生活は相当過酷だと私は感じており、日本の両親や友人達に気軽に「遊びに来てね」と言えないことは悩みの種でした。せめてトイレとお風呂だけでも、欲を言えばエアコンも、日本製品を設置できたら快適に過ごせるのにと思いました。そして、食事が合わなかったりお腹を壊した時に日本食が手に入る場所があれば、日本人観光客が安心して快適に滞在でき、スーダンの良さを知ってもらうための拠点になるのではないかと思いました。

郊外には農地を購入していたので、特産品のマンゴーや柑橘類、バナナなど様々な果物、野菜を育て、家畜を飼って自給自足の農園ヴィラを作る構想もありました。スーダンは農業国です。農薬の散布を受けていない未開拓の肥沃な農地でどんな農業ができるのか、スーダンの農法は一体どんなものなのか、私は専門家ではありませんが興味があります。

スーダンの食事は、良質のピーナッツバターやごま油を用いる料理、雑穀の発酵食品など、アラブの他地域の料理とは異なる特色もあり、医食同源の考え方が日々の食事に根付いているのを感じました。屠ったばかりの新鮮な羊肉のバーベキューやナイルの川魚のフライもとても美味しいです。日本でほとんど紹介されていないスーダン料理の奥深さを存分に味わえるレストランを農園ヴィラに作り、現地から日本に向けてスーダン文化を紹介したいと思いました。

スーダン人は農園を貸切にして大勢で出かけ、一日ピクニックを楽しむ習慣があります。日本にあるような清潔で洗練された農園レストランを作り、スーダンの人々にも観光客にもゆったり楽しんでもらえたら嬉しいです。

路上で野菜果物、ピーナッツバターなどが売られている様子

2.夢をかなえることで実現できる未来

4月に紛争が始まり、その夢は一気に吹き飛びました。夫は苦労して基礎を築いた自宅を守るため、日本に帰る気はないと言いました。略奪や強盗の横行、家の中に飛び込んでくる銃弾や砲撃で、今も毎日人が死んでいると聞いています。断水、停電、燃料不足も続いています。

どうしたら戦争が終わるだろう。早く戦争が終わって欲しいと心から思いました。家族のために日本からできることは、わずかなお金を送ることと、無事を祈ることのみでした。

戦闘員も、略奪強盗に走る輩も、本来そのようなことはしたくないはずです。スーダンを始めアフリカの若者には仕事がないのです。食べていけない。家族を養えない。兵士になれば稼ぐことができる。そこに問題があります。スーダン人が働くことのできる場所をたくさん作り、できる限り多くの人に給料を支給できたら。働くためには基礎教育や職業訓練を受けられる場所も必要です。

私の夢を実現するためには、とにかく戦いを終わらせなくてはなりません。人々が安全な日常を過ごせるようにならなければ、現地で商売をすることなど不可能です。そして、武力による争いが再発しない社会にしなければなりません。きっと平和な未来を実現できると信じて考え続けました。

スーダンに作りたい理想の職場

私は、スーダンへの帰国を諦め、日本でパートの仕事を始めました。採用してくださった会社と、温かく私を受け入れてくださった職場の皆さんには感謝するばかりです。その勤め先が、古き良き日本の会社という感じでとても雰囲気が良く、スーダンにもこんな会社を作れたら、と思いました。人員構成面では女性中心の職場で、実務では女性がリーダーシップを発揮しています。子育て中の母親が活躍している職場です。スーダンでも、結婚後に子育てをしながら働きたいと思っている女性達がいます。パートの仕事は、女性が子供から離れて母親ではない自分に戻れる貴重な時間でもあるのを、私自身も実感しました。また、たとえわずかでも収入を得ることが、女性の自立への第一歩であると感じています。

民主主義を支えるもの

私のパートの仕事は、行政文書データの確認入力業務です。国の議会で法令が定められ、それを受けて地方議会の条例規則が定められますが、そのデータベースを構築し、保守点検、更新管理など運営し、時代の変化に合わせてサービスを開発するのが私の勤める会社の仕事です。私がパート勤務する会社の親会社は、日本が法治国家であることを実務的に支え、地方自治の発展に貢献してきた歴史ある企業です。

株式会社ぎょうせいは、現在の日本の全ての法令を収録した最高権威の総合法規集『現行日本法規』やその他多くの法律関係の書籍を作る法令出版社で、1893年(明治26年)京都にて創業しました。

ぎょうせい『法律のひろば』編集部のnote記事「法律のひろば編集部note始めました。」より

私は、この会社が明治時代から130年の歳月をかけて構築してきたものを日々の仕事で目にして、民主主義を実現するためには、思想や政治活動だけではなく、地味でも日々コツコツ積み重ねる更新作業のようなものが膨大に必要なのだと感じました。スーダンにはこのようなデータベースや更新管理のシステムはあるのだろうか?と疑問に思いました。

そもそも、このようなシステムをささえる電気やインターネットのインフラが弱いスーダン。日常生活をより快適に過ごしたり、集中してスムーズに仕事を進めるためのあらゆるインフラが、スーダンには著しく欠けています。逆にいえば、インフラ整備事業に着手できれば、仕事の機会は山ほど生まれるに違いありません。

軍事独裁政権を倒し、民主主義を実現することはスーダンの人々の悲願でした。けれど、2018年末に始まった民主化の動きは最終的に武力衝突を引き起こして首都や文化遺産を破壊し、今なお戦いに終わりは見えません。今こそ戦うのをやめて、戦闘力が建設的な事業を進める労働力に転換すればと願って病みません。

スーダンが戦後復興し、社会を発展させ、産業を育てる上で、日本の技術支援や豊富な経験に基づくアドバイスは、スーダン人が求めてやまないものです。先の世界大戦で焼け野原となった東京、原爆が落とされた広島と長崎、地上戦が戦われた沖縄…戦後大復興を遂げた日本の都市の姿やストーリーは、スーダンの人々に希望と勇気を与えるに違いありません。どうにかして日本の優秀な企業にスーダンに目を向けてもらえないか。

日本の約5倍の国土面積のスーダンは、決して貧しい国ではありません。豊かなナイル川が国を縦断し、広大な農地に膨大な数の家畜、金やウランなど現在注目されている地下資源も豊富な国です。観光開発は進んでいませんが、世界遺産や自然豊かな国立公園もあります。スーダンの発展に日本が貢献することで、日本が恩恵を受けることもあるはずです。

3.夢を実現させるために挑戦したいこと

私の夢を実現させるためには、まず紛争を終わらせスーダンが安全な場所になること、次に日本企業にスーダンに注目してもらい投資してもらうことが必要です。

2023年は、日本の人々にスーダンのことを知ってほしい想いで、YouTuberの方にご協力いただいたり、スーダンの友人や心ある仲間に様々なご支援をいただいてイベント開催など行いました。そして、平和の実現と子供達の未来のために1,000人で祈るイベントを思い付き、メンターの方と仲間と共に実現に向けた挑戦の始まった年でした。

昨年末、いつも近くで私たち家族を支えてくださっている友人が、スーダンにいる夫を日本に呼び戻すため、私には全く思いつかなかったアイデアを考え出してくださいました。それは結婚式を開くこと。言われてみれば確かに 、2018年にスーダンで夫の家族や友人達と結婚式を挙げましたが、日本で披露宴をする機会を逸して、自分の家族や日本のスーダンコミュニティ、友人達には正式にご挨拶できずにいました。

2024年は年初から能登半島地震や羽田空港の事故、北九州市小倉北区の大規模火災が相次ぎ、多くの方の命が失われました。スーダンだけでなく、ウクライナやパレスチナ、世界の戦場でも毎日命が失われ続けています。

こんな悲しいニュースが続き、暗い気持ちになる時だからこそ、明るく幸せな結婚式を開き、そこに集う人々と共に心を一つにして世界の戦場と被災地、子供達の未来のために祈りたい。宗教を超えてつながることのできる多くの人々と共に祈りたい。そして戦争を終わらせて平和な世の中を実現することが私の挑戦です。

平和が実現した暁に、スーダンの自宅で、夫と家族と一緒に空手道場を開く夢がかなう。
そう信じています。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
ぜひ、スキ♡を押して応援していただけたら嬉しいです。
スーダンで、こんな「機会の提供や金銭的な支援等」が欲しい!という具体的なアイデアはありませんか?
特にスーダン関係者の方、一緒に最優秀賞を受賞しましょう!!!
ぜひコメントをお待ちしています。


2023年にスーダンの話を聞いてくださった方々

編集中


nasreen(藤野さくら)
5歳の時、両親に連れられ3ヶ月の中国放浪バックパッカーの旅を経験して以来の旅好き。2017年よりアラブとイスラームを知るサロン「デーツカフェ」主宰。2023年4月、スーダン紛争に巻き込まれる。一夫多妻のスーダン人の妻。3歳、4歳の年子育児中のママ。

プロフィール(長くなるのでキーワードだけ)
立川、国立、国分寺、府中|岐阜|奄美大島
ピアノ|バレエ|吹奏楽(クラリネット)|優等生|赤面症|読書好き
立川高校|帰宅部|応援団
国際基督教大学|サイクリング部|ワンダーフォーゲル部|タイワークキャンプ|休学|ピースボート|屋久島ユースホステル住込みヘルパー
みずほフィナンシャルグループ|支店法人課|投信投資顧問会社|信託銀行
性被害|離婚|再婚|国際結婚|一夫多妻
サウジアラビア王国大使館附属アラブイスラーム学院|中東|アラブ|イスラーム|スーダン
自己啓発|氣功|スピリチュアル
帝王切開|HTLV-1キャリア(母乳育児が難しい)|年子育児|アトピー
ぎょうせいデジタル|パート|大家族(二世帯同居)
英語|古代ギリシア語|ラテン語|アラビア語|スペイン語|簡単な会話が好き


最後に、今回の応募記事を書くにあたり、こちらの記事を参考にさせていただきました。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?