歴史学から怪異学まで!? 大人のための楽しい学問のススメ
大人になっても、学びは尽きない。教科書の中だけでなく、身近なまちにも知的好奇心をくすぐる物事がたくさんある。ツアーの現場に行っていると、いつもそんなことを思います。
大ナゴヤツアーズには、多彩な学びの入り口に連れて行ってくれるガイドさんがいっぱい。難しそうな印象のある分野も、ユニークな解説によって楽しく学べます。そこで今回は、「歴史学」からちょっと変わった「怪異学」まで、4つの学問をキーワードにツアーをご紹介! あなたも、新たな学びの扉を開いてみませんか?
ジュラシック・パークの博士は何の学者?
大ナゴヤツアーズで恒例となった「古墳はしごツアー」でガイドを務めるのが、南山大学 人文学部人類文化学科 教授の黒澤浩さん。専門とする「考古学」の知識をもとに、奥深き古墳の世界へといざなってくれます。
ちなみに、考古学とよく間違えられやすいのが「古生物学」です。考古学とはそもそも、遺跡や遺物を手がかりに、人類の歴史や文化を研究する学問。恐竜など過去の生物の化石研究は、古生物学もしくは地質学にあてはまるのだそう。
わかりやすく映画の登場人物で例えると…
『インディ・ジョーンズ』のジョーンズ博士が考古学者、『ジュラシック・パーク』のグラント博士が古生物学者ということですね。
古代の人々が遺した「古墳」から見えてくるものとは
さて、今回の古墳はしごツアーは【美濃赤坂編】。4世紀代では東海地方最大の前方後円墳「昼飯大塚古墳」、前方後方墳の「粉糠山古墳」、石室がむき出しになった「堤ヶ谷3号墳」、出土品の展示がある「大垣市歴史民俗資料館」など、古墳のおもしろさがギュッと詰め込まれたコースです!
黒澤さんが優しく解説してくれるので、「古墳時代のことなんて全然知らない」という人でも楽しめるはず。当時の人々がどんな想いで古墳を造ったのか考えながら、古代のミステリーに触れてみませんか?
「考古学」と「歴史学」って、何が違うの?
歴史資料や古地図をもとにまち案内をしてくれるのが、同朋大学 仏教文化研究所 所員の千枝大志さん。主に中近世の都市史・社会経済史・宗教史といった「歴史学」を専門としています。
先ほど挙げた「考古学」も歴史学の範囲と被るところがありますが、考古学と歴史学は何が違うのでしょうか?(いろんな「◯◯学」が出てきて、ややこしくなっている人もいるはず…)
わかりやすい違いは、歴史学は主に「文献」から考察を行う学問で、考古学・文化財学は「遺跡」や「遺物」から考察を行う学問であるという点。といいつつも、千枝さんは現地を歩いて見つけた史料からも、積極的に土地の歴史を探っています。歴史の先生と楽しくフィールドワークをしてみませんか?
那古野には昔、どんな人たちが住んでいた?
千枝さんが担当する12月のツアーは、那古野界隈の土地深堀歴史学まち歩き。円頓寺商店街・四間道周辺のこのエリアには、江戸や明治の時代の面影が残っているといわれますが、「どのくらい残っているのか」まで考えたことはありますか?
このツアーでは、明治中期の「第壱区名古屋市街替地町全図」を切り口に「土地台帳」「地籍図」「地籍帳」や江戸時代の古地図、「尾張名所図会」などの紙の史料と石碑などに刻まれた史料を使って、区画の変化やかつて住んでいた人々、さらには町名の変遷まで深堀りしていきます。
一見難しそうに聞こえますが、ほとんどの資料が一般に公開されているものなので、コツさえ掴めば他の地域のことも自分で調べることができますよ!
野球選手の名前が由来!? 「超芸術トマソン」とは
みなさんは、「トマソン」って知っていますか? 現代美術家で小説家でもあった赤瀬川原平氏が提唱した「超芸術トマソン」は、まちなかの建築物などに付属し、美しく保存されている「無用の長物」のこと。
「無用の長物」とは、たとえば…
上った先の扉が無くなり、上り下りしかできない階段(=「無用階段」)、隣接する建物が取り壊されて、その痕跡がシルエット状に残った壁(=「影タイプ」)など。
トマソンの語源は、読売ジャイアンツに所属していた元プロ野球選手・ゲーリー・トマソンに由来します。元大リーガーの助っ人選手として移籍し、四番打者の座にいながらも空振りを続ける様子を皮肉って、「無用の長物」を表す名称に用いられたのです。
興味がわいた人は、次にピックアップするツアーへ! さらに、ツアーをきっかけにもっと知りたくなった人はぜひ、『超芸術トマソン 』(ちくま文庫)を読んでみてください。
「無用の長物」から、人々の営みが見えてくる?
円頓寺商店街周辺は、超芸術トマソンをはじめ、現役リタイヤ後に活用される転用道具類、絶妙な経年変化を見せる表示物など、観るべき物件が目白押しのエリアです。「美の発見者」となる小さな路上の旅を楽しみましょう。モノ本来の在り方とその変容した姿を観るとき、色々な事に気付くと同時に人の営みを深く考えさせられます。
案内してくれるのは、文筆家・写真家・美術家として活動する加美秀樹さん。街中や郊外をフィールドワークしながら、考現学的視点での観察・採集・記録・考察を継続しています。
「考現学」とは、建築学者・民俗学研究者だった今和次郎氏が提唱した学問。古い時代を考える「考古学」とは反対に、現代の社会現象や都市風俗を観察・考察することから名付けられた造語です。トマソンとも親和性の高い分野ですね! これまた、気になった人は「考現学入門」(ちくま文庫)を読んでをみることをオススメします。
不思議な存在、「妖怪」の研究は何の学問?
あいち妖怪保存会 共同代表の島田尚幸さんは、大ナゴヤツアーズでも人気のガイドさん。妖怪や怪談に詳しく、これまで手がけた編著書には『愛知妖怪事典』、共著書には『怪異学入門』などがあります。
「東アジア恠異学会」が提唱する「怪異学」は、不思議なコトやモノについて研究し、その事象が生まれた背景などを探る新しい学問。ほかにも、妖怪にまつわる学問といえば「民俗学」がありますね。妖怪伝承の裏には、地域の風習や災害被害が関係しているなど、さまざまな民俗学的要素が秘められています。
夜な夜な現れる謎の老婆とは…
島田さんが案内を務める今回のツアーは、建中寺界隈が舞台。尾張徳川家菩提寺の建中寺を中心に、大小さまざまな寺社が立ち並ぶこのエリア。歴史と文化の薫るまちだからこそ、あやしい話も数多く伝わっています。
天狗にさらわれた男が連れ去られた、その場所とは? 夜な夜な現れる謎の老婆に、百足に祟られた下女、死後も続く嫁姑のいざこざに頭を抱える旦那から、火事を知らせた怪しい老人。さらには「三大妖怪」も飛び出すかも!? この地に生きた人たちの息遣いを感じながら、あやしいまち歩きに出かけましょう!
今回は学問を切り口にツアーをピックアップしましたが、ほかにも工場見学やものづくり体験、食文化体験など、バラエティ豊かなツアーをご用意しています。それぞれの驚きや感動が、新鮮な学びにつながるはず。大ナゴヤツアーズ公式サイトから、ぜひ気になるツアーを探してみてください!
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