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彫刻について考える:ヨーゼフ・ボイスの社会彫刻論とフォールド・ドローイング

彫刻家の大黒貴之です。

2020年、東京のMARUEIDO JAPANで開催された個展に合わせて執筆したテキスト「両義の間にある揺らぎ「間-振動」-⾃然 時間 ⾔葉 数字 縁起 ⽣命彫刻、ドローイング、インスタレーション 」から抜粋したものです。

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彫刻とはどういうものかと尋ねられれば「現実」と「行為」だと答えるだろう。

絵画は平面性の中にイリュージョン(幻想)を形成させるのに対して、彫刻は三次元のものが目前に厳然として「在る」ことが挙げられる。現在では彫刻の名の通り「彫る」「刻む」という概念はすでに突破されており、あらゆる表現技法や素材が使われている。

ドイツの彫刻家、ヨーゼフ・ボイスは、社会彫刻論を唱えて、全ての人は芸術家であり、彼らによって形成された社会の現前性こそが彫刻なのだと提唱した。

1つ言えることは、三次元の物体としての彫刻も社会彫刻としても、人の「行為」によって「現実」が出現するものではないかと推測します。それは行為によって押し出された「物体」や「足跡」のことであると考える。

フォールド・ドローイングは、「折る」という行為を通過して生まれる。

鉛筆や絵の具も使用するが、紙に対して「折る」という直接身体を使った行為をする。折り目がわずかに突起することで平面性は失われ、そこにはイリュージョンではなく「在る」という現実が発生する。

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フォールド・ドローイング, 大黒貴之, 彫刻
Folded Drawings with dots (white-90-90-#01), 2020, 90×90cm,
紙に鉛筆とアクリル絵具・木製パネル, 個人蔵, photo:Takayuki Daikoku

2017年から制作をしているフォールド・ドローイング・シリーズ。

fold(折って)drawing(線を引く)という意味が含まれている。初期の作品は、白と黒のみで構成していたが、やがて赤、緑、青などの色も取り入れるようになった。線というのは通常、鉛筆やペン、筆などで引くが、このドローイングに描かれている線の一部は「折る」ことによって描かれている。

その「行為」を行うことによって、フラットな二次元であった紙は、折った箇所を起点にわずかに盛り上がり三次元になる。そして、折って描かれた線の周辺には、鉛筆や筆で引かれた線の連続がある。ただ、そのどちら「線」であることには違いない。

平面と彫刻の境界、そして線の境界はどこにあるのだろうか。

Folded Drawings with dotsシリーズでは、いくつもの穴を開けることによって空間が現れる。重ねられたドットの空間に発生する光と影は、彫刻とドローイングの間を行き来させる。

ちなみに日本では彫刻のことを「立体」と呼ぶことがおうおうにしてあるが、ドイツ語で立体は「三次元(drei Dimensionen<ドライデメンジオーン>)」を指すことであり、「彫刻(Skulptur<スクルプトゥア>)」とは違う概念であるようだ。

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