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神のDB(037)

(037)もうひとりのキュンキュンですぞぉ~|ω・)どうぞ~

前のお話:(036)乙女の想いでキュンキュンですぞぉ~

後のお話:(038)さあ~パーティの始まりですぞぉ~

《Masumi's episode》

『何かムカつくわね』

私は、あの「愛しい」バカの顔を頭に浮かべた。
どうせまたバカなことを考えているんだろうけど、ま、いいわ。そんなことより
『さて、さっさと作らないと。』
ダイキにばれちゃうわ。

ここは、カフェ「クエリ」の厨房。
時間は午後4時。ちょうど客足が途絶えるこの時間に、私は毎年の恒例となっているチョコ作りに取り掛かる。
そう、毎年つくっている。
あの出会いから16年間ずっと。

最初に作ったチョコは、ひどいものだったわ。
思い立って直ぐに作ったから、材料も知らずに適当に。。。そうねぇ、なに入れたっけ?たしかぁ。。黒いから醤油やソースを入れた気がする。
私はチョコレートがカカオから出来ていることさえ知らなかった。まあ、まだ小学校の低学年だったし。
でも、ひどいものだったわ。
ひどすぎて、私、泣いたわ。
ええ、泣いたわよ。
これでもかって。
これじゃあ、あの人にあげられない。食べてもらえないって。

まあ、そんなこと心配しなくても、そもそも渡せなかったんだけどね。あの人には。

それでも私は、チョコの作り方を勉強したわ。
包丁でチョコを砕き。
ステンレスのボールで湯煎して。
少し温めた生クリームを入れて。
甘さは蜂蜜で整えて。
あとは型に入れて冷やして。
最後に取り出して、カカオをまぶす。

何故か最初から当時はメジャーではなかった「生チョコ」を作っていたんだけど、そうねぇ。。
私の初めての料理は、このチョコだったわね。

そんなことを思いつつ、私は厨房であの人に食べてもらうチョコを作っている。
今は、兄、京耶もいない。
私に気を使っているのか、この時間には珍しく買出しに行っている。
そういえば、初めてのチョコは兄さまに食べてもらったんだっけ。
チョコを食べた時の兄さまの顔、鮮明に覚えています。あの後、確か。。
。。。悪いことをしました、ごめんなさい兄さま。

『ふふ。』
そんなことを思い出して、思わず笑みがこぼれる。
ホンと、今年は違うわね。
自分が抑えられていないのが、分かる。
チョコを作るだけなのに、心も、体も、火照っている感じだわ。
まあ、それはしょうがないものね。やっとだもの。
そう、やっとよ。
16年目でやっと、あげられるのよ。

毎年必ず作っているチョコ。
毎年あげられずに自分で食べていたチョコ。
そのチョコの味は、
毎年おいしくなっていって、
毎年食べる時の塩気が多くなっている感じだった。
でも。今年は、あげられる。
うれしい。
うれしい。
うれしい。
うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい。うれしい・・・

ホンと、駄目ね。私。
ちゃんと抑えないといけない。
この想いに満ちている心を、いつも抱いているあの人への、『ダイキ』への想いを、抑えないといけない。だって、
だって、私は彼の「騎士」だから。
私の想いは、今のこの状況では邪魔なだけ。
彼を護るのが私の使命。
彼を無事、覚醒させ、レジスタンスの願いを叶えるのが、私の使命だから。

でも。
でもね。
今年のバレンタインの日は、
この日にだけは、伝えたい。
この想いを。
あの時からの想いを伝えるから。

私はダイキ、あなたとずっと、ずっと一緒に・・・・

・・・もう、伝えられる時がないかもしれないから。。

ごめんなさい、京にぃ。

『うん?呼びましたか?ますみ』『きゃうん!!』
『おやおや。ますみ、珍しい生き物のようでいて、可愛らしい声をだして、どうしました?』
振り返るとそこには京にぃがいる。
『な、なん、なんでもないです!帰っているなら、普通に声を掛けてよ!というか、気配消して店に入ってこないでください!!』
抗議する私を京にぃは笑顔で
『すみません、ますみ。何かますみが体をくねくねしてたと思ったら、顔を上げてにやけていたり、かと思ったら今度は俯いて落ち込んでいたりと、とても楽しそうな動きをしてましたので。。。つい((⌒-⌒)ニコ)』
などと、何か見過ごせない内容を言っているような。。。
『兄さま!いつから店にいたんですか!』『少し前、ですよ(⌒-⌒)ニコ』うそ臭い。。。絶対ウソついてる。

『もう、いいです!ふん!』『うふふ。ますみ。』『なんですか!』『今年も出来たようですね、チョコ。』
息を飲む私。
『ほ~う、今年はまた、趣向を変えましたね。ふーむ、これはこれは。。。』
京にぃが私の作った「チョコ」をじっくり見ている。
『なんですぅ~京にぃ、何か言いたいことでもありますか!』
私はチョコを背中に隠しながら京にぃに抗議する。すると。。『いえ。ただ今年のチョコは。。』京にぃはこれでもか、という柔らかい笑顔で
『素直ではない、ですねぇ』
などと仰られました。

この時ほど兄の顔面を殴りたくなったことは後にも先にも無かった、気がする。

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