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死にたい夜にかぎって/爪切男

タイトルは「死にたい夜にかぎって」なので暗い話かと思えそうだが
とにかく読んでいて面白い。

作者名が「爪切男」。個性的である。
まずは手にとって御覧あれ。

昔、ドラマ化もしていた作品だ。

 
  
物語は6年間同棲していた彼女とのやりとりを軸にしつつ
それまでの人生で出会った特別な存在だった女性を思い出したり
複雑な家庭環境を描いたり
ブラックな会社で働いていることにも触れている。

書き方が素晴らしいからネタになり、笑い話になるが 
なかなかにヘビーでハードだ。
こういう話が苦手な方も一定数いるだろう。

 
 
読んでいて、石田衣良の「娼年」を彷彿した。
様々な女性と様々な嗜好、コンプレックス、誰もが内に秘める、一般的には変態と言われるようなあれこれ。
作者はどの女性の弱さも変態さも否定しない。受け入れる。
人生で上手くいかない時も発想の転換が良い。前向きに捉えて受け入れるのだ。
「娼年」が好きな人ならおそらくこの一冊も好みだと思う。

 
「笑った顔が虫の裏側に似ている。」と言われた作者が同棲していた彼女との出会いで笑顔を取り戻し
最後の最後に勇気を振り絞って聞くところが切ない。
そう、この一冊は笑いの中にも切なさが絶妙にあるのだ。
彼と彼女の新幹線発車前のやりとりはリアリティがある。

 
 
ネタバレになるので各女性のエピソードはあまりここには書けないが
ポイントカードやペットのアサリの話、体臭の話あたりが印象的である。

ポイントカードのアイディアは良い。なかなかこのポジティブさはない。


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