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毎年恒例の年に二回の益子陶器市(栃木県益子町)

栃木県益子町というと、遠足のイメージしかなかった。

小学校や自治体で遠足に行き、焼き物に絵を描く絵付け体験をする。益子焼だ。
そしてその焼き物を各自もらう。

そのイメージしかなかった。

 
 
長年特に益子町に行きたいとは思わなかった。
意識もしなかった。

だから、20代になって彼氏から「益子に行きたい。」と言われた時、私はとてもビックリした。
遠足以外で行くというか、デートで行くという発想が全くなかった。
 
 
「益子町は、リノベーションカフェに力を入れていて、若者向けの街になっているんだよ。」

 
他県出身の彼はニコニコしながら言った。
旅行が趣味なだけあり、彼は日本や世界の観光地や地理をよく知っていた。
私は若者向けの街になっているなんて全く知らなかった。
家族もだ。

 
 
約20年ぶりに益子町に行った。

なるほど、メイン通りには益子焼が売られているお店がズラリと並び、昆虫グッズのお店や革製品のお店等面白い店もあった。
小洒落たカフェもあった。
益子焼の素敵な器に盛られた料理は見た目もよく、味も美味しかった。

その日は行かなかったが、そのメイン通りから少し車を走らせたらいちご狩りもできるし、石窯パンをウリにした喫茶店もあるし、益子焼体験ができる場所もあった。

 
 
私は益子町に謝りたくなった。
遠足では益子焼体験の場所しか行かなかったし、バスに酔いやすい私は道中の街並みを見ていなかった。

彼氏の言うように、益子町はデート向きのお洒落な町だった。
人々は優しく、自然も美しかった。

 
その後、私は他県住みの友達二人それぞれから「益子町に行きたい。」と言われ、一緒に行くことになった。
そのうちの一人は益子焼体験をしたいと言い
私は初めてろくろ体験をした。
ろくろはなかなか難しいが面白く、湯呑みと大皿、一輪挿しを私は作り、プロに桜模様を入れてもらった。

ちょうどその時、私はもうすぐ誕生日だったので
友達から益子焼の高いカップとマドラーを買ってもらった。
友達とお揃いで、マドラーまで益子焼である。

 
職場で100均のカップを使っていた私は、40倍以上の値段のカップとマドラーに恐れおののいたが
その100均カップが使えなくなった後、プレゼントカップを大事に使わせていただいた。
ほんの数年で手違いで割れてしまったのが残念だった。

 
 
そんな風に益子町への見方が段々変わってきた6年前に、私は益子の陶器市について同僚から聞いた。
同僚は益子焼が好きらしい。

益子の陶器市を調べて見ると、毎年春と秋の年二回行われており
春はGW前後で約10日間
秋は11月頭くらいに一週間くらい行っており
一日3万人くらいが来場することが分かった。

さ、3万人!?

私は度肝を抜かした。
どうやら東京方面からはバスツアーも来ているらしい。

 
そ、そんなに益子町が熱いとは……。

 
HPを見て気になった私は、早速行ってみることにした。

 
 
 
益子陶器市は9:00~17:00らしく
私は9:00に到着を目指して家を出発したが、自宅を出て益子に近づくほどに、奇妙なことに気づく。

渋滞である。

そんなバカな、と思った。
益子町までまだまだ遠いのに、かなり手前で渋滞が始まったのである。
カーナビを無視して裏道でショートカットしても
それでも渋滞は続いた。

 
HPのマップで有料駐車場の位置はおさえていたが
どこも満車であり
片っ端から駐車場を当たることになった。
駐車場探しをしてから、駐車場に停められるまで一時間以上かかった。
通常益子町に行く時間の2.5倍かかったのである。

 
私は益子陶器市を舐めていた。
フラッと行くレベルではなかった。

 
 
 
益子陶器市は街中や道中にお店が溢れていて
街全体がお祭りになっていた。
通常のお店に加え、他県からもお店がたくさん出ていた。
陶器市とはいっても、そこはクリエイティブな空間で
益子焼だけでなく
ガラス細工や木製製品、革製品、アクセサリー等たくさんのハンドメイドの物が売られていた。
外国の民芸品も売っている。

また、福祉施設も商品を販売しており、私はプライベートとビジネスが入り混じった心でお店を覗き、利用者や職員の様子を見る。

 
 
食べ歩きも充実だ。

通常の喫茶店に加え、クレープやアイス、カレー等テイクアウトのお店もたくさんあるし
多国籍料理も豊富である。
何を食べるか本気で迷い、ついつい色々な物を購入してしまう。

 
 
私はほとんど休憩しないでザクザク歩いたつもりだが
朝一で行ったにも関わらず
隅から隅まで見て歩くと一日はあっという間に過ぎた。

 
 
ステージでは歌う方がいたり、【つちのこ】というユニットの、キーボードと尺八の演奏をする方もいた。

 
つちのこさんは童謡からJ-Pop、歌謡曲とレパートリーは幅広く
会場ではレパートリーをまとめたファイルを見せてくれて、観客のリクエストの曲を演奏してくれる。

初めて聞いた時から
その切なさや哀愁があるメロディに私は惹かれ
自主制作のアルバムを購入した。

 
益子陶器市で様々な物を購入し、食べ歩き、帰り道はつちのこさんのCDを聴きながら帰った。
余韻に浸りまくりである。
帰り道は夕日がひたすらに美しく、夜にどんどん近づいていく。
そんな空模様を見ながらのドライブも楽しかった。

 
益子陶器市の会場近くには
日本一大きなえびす様がいる大前神社もあり
私は陶器市の後はそこに寄って参拝もしていた。


 
益子陶器市にハマった私は、それから毎年春と秋に必ず行くようになった。

陶器市に興味がある人は何人か周りにいたし、誘われもしたが
私は陶器市は一人で行くようにしている。
あまりにも陶器市は濃厚過ぎて、ペースが合わなかったり、温度差がある人と行こうものなら
瞬く間に駐車場は埋まるし、時間内に全てを見てまわることは不可能だ。

 
私は初回の反省を踏まえて出発時間は早めたが、駐車場が埋まる時間は早くなる一方だった。
だから何回も陶器市に行っているのに、駐車場はあちこちに停めた。
後から後から車が来るので、空いていたらサッサと入らないとすぐに満車である。
毎回違う駐車場に停めることにより
新たなお店や人との出会いもあったし、バスで巡る手段も覚えた。
駐車場の方が果物やお茶をご馳走してくれたり、お店の人や周りの方と談笑したりもした。
それもまた、一人旅(というか観光というか)らしくて面白かった。

 
某保護者から、毎年陶器市に行っていることは聞いていたが
勤務日の次の日の休みに陶器市に行った時
別の利用者と保護者とバッタリ会った時は驚いた。

 
高校時代の友人も毎年東京から来ていて
私と同じ店を気に入っていることがSNSで分かり
それがまた驚いた。

世間は狭い。

 
 
私と友達お気に入りのアトリエ紡さんの作品である。
益子焼ではないが、毎年他県からご夫婦で参加している。

とにかく、かわいい。見ていてテンション上がります↓

 
 
 
私が毎年陶器市に行くことは周りにはすっかり認知され、「今年も行くんでしょ?」と言われるようになった。

毎年同じ場所に同じ店が出店していても、毎回新作は必ずあるし
春と秋でテイクアウトの品も内容が変わったし
とにかく飽きない。
見ているだけでもめちゃくちゃ楽しいのである。
陶器市は街中が活性化している。

 
つちのこさんのメロディは美しいし、行くたびに新作アルバムも出て嬉しい。
2019年春には、つちのこさんから「前も来てくれたよね?」と話しかけられ
なんとキーボードの横に座らせていただき、お茶をご馳走になった。
涙を流して女一人で曲を聴いていたり、ニコニコしながら曲を聴く私は目立ったらしい。

 
私は前々から職場イベントでつちのこさんを呼べないか企てており
その日は名刺交換をした。
つちのこさんは前々から病院や福祉施設で演奏をしていたらしく、私の職場(福祉施設)での演奏も了承してくれた。
その年は色々なことが重なり、タイミングが合わずに呼べなかったが、2020年こそは、施設のイベントに呼びたいと思っていた。

 
利用者は音楽が大好きだし、バンドの演奏会も好評だった。
ピアノと尺八の美しいハーモニーを、私は利用者にも聴かせたかった。

 
 
私は2020年の春の陶器市がより楽しみだったし
2020年こそ、利用者につちのこさんを会わせたかった。

 
 
 
そんな中での、コロナウィルス感染拡大である。

 
今年の春と秋の益子陶器市は中止になった。
万単位の人が集まるイベントなんて
野外だろうができるはずがなかった。

 
今年の益子陶器市はWEB版に変更され
通販で購入できるようだ。

 
 
 
来年はまた益子陶器市に行きたいと思った。

どうか来年は、また陶器市が開催されたらいいのに。
WEBで巡るのではなく
あの街全体が賑わう空気を吸って
マイペースに街中を歩きたい。
 
 
私は今年退職したから、もう元職場につちのこさんを呼べないのは残念だけど
次の職場や何かの機会で
つちのこさんを招待できたらいいなと思う。

つちのこさんの曲をたくさんの人に聴いてもらいたい。

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