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利用者を庇う

利用者が不穏になり
物を投げた。

 
室内がピリつく。

職員はサッと近くにいる利用者の前に移動する。

 
その後、職員を襲おうとした。
リーダーが動く。利用者の手をおさえる。

利用者がリーダーを蹴る。
利用者が奇声を上げ続ける。

 
同僚を叩けないと分かると
利用者は他の利用者を叩こうとした。

その利用者のそばにいた同僚がかばい
その同僚は三回思い切り叩かれた。

もしも私がそこにいたら
私が叩かれただろう。  
別の同僚でも同様だ。

職員とはそういうものだ。

 
その後再びリーダーがおさえる。
利用者は興奮し、奇声を上げ、リーダーを蹴ったり、叩いたりしている。

別室に移動してからも暴れている音が聞こえる。

 
慌てて
机の上の物を片付けたり
落ちた物を拾う。
またいつ戻ってくるか分からない。

「大丈夫ですか?」

みんなで、叩かれた同僚に声をかける。
大丈夫だと答える。答えるしかない。

 
庇われた利用者は震えていた。
怖くて動けなかった。

「大丈夫?痛くない?」

同僚に声をかけるが
利用者から問われたら尚更
大丈夫と言うしかない。

 
私達職員からしたら利用者に怪我がなくてよかった。

だけど
一番いいのは誰も痛い思いをしないことだ。

 
目の前で庇われて
職員が痛い思いをするのを目の当たりにした利用者の心も
きっと痛いだろう。

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