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初恋相手と再会したら、若社長になっていた件

私の初恋は小学校一年生だった。
ませガキだったと思う。

初恋相手の名前はA君。
クラスメートである。
A君は目がパッチリしている浅黒の男子で
クラス内で男子ナンバーツーのポジションにいた。
明るく元気で声が大きく、スポーツが得意だった。

小学生時代はなんといっても、スポーツが得意な男子がモテる。

私にはないものをたくさん持っているA君はキラキラ輝いていた。

当時の私は内向的で声はボソボソ小さかったし、肌は白さを通り越して青白く、スポーツはとにかく苦手だった。
目立つことも嫌いで、なるべく地味な存在でありたかった。

 
A君は照りつける太陽のような存在感だった。

 
 
だが、初恋とはいっても所詮小学校一年生だ。
淡い淡いものだった。

私はやがて心変わりし、B君を好きになった。小学校二年生からだ。
小学校二、三年生はB君が好きで
小学校四年生~中学校二年生までC君が好きだった。
私は成長と共に、同じ人を長く想い続けられるようになっていった。

 
なお、B君、C君にはバレンタインデーで手作りチョコを渡したり、告白をしたが
A君にはそういった類のことは一切していないので
A君は私の気持ちは知らない。

 
 
A君とはなんと、小中学校9年間もクラスが同じだった。
心変わりしようが、クラスメートであることに変わりはない。
クラスの思い出にはA君が必ずいたし(お互いに皆勤賞であった)
修学旅行に至っては行動グループが同じだったので
修学旅行の自由行動の思い出さえある。

 
 
A君はすれることなく、順調に成長していった。

顔の系統としては野球の新庄選手系だ。
実際、A君は野球部でもあったわけだが
私はテレビで新庄選手を見ると、いちいちA君を思い出す。
顔がそっくりではないのだが、系統は似ている。
まぁつまり、A君はイケメンだった。

 
 
A君には年の離れた弟がいて、A君は面倒見がよかった。
兄弟仲がよかったのだ。

ハッキリ本人から聞いた訳ではないが
離婚か死別により
小学校高学年で父親がいない生活になったようだった。

 
だが、A君はそういったことを口にしたり、不幸自慢したりはしなかった。
離婚(死別?)から、引っ越しをしても
学校では明るく元気なままだったし
働く母親に代わり
料理を作ることも多かったようだ。

一度だけ、複数人のクラスメートでA君ちに行った際に炒飯を作ってもらったが美味しかったし
調理実習の際も手際はよかった。

 
今でこそ、家事は男女で行う時代になったが
私が小学生時代に男子が料理上手なのは稀で
長男として母親や弟を支える姿を私は尊敬していた。

 
下級生の面倒見も良かったし、女子の面倒見も良かった。 
周りの大人(先生や地域の方)にも、いつも元気な声で挨拶をしていた。
単純な分かりやすい性格で
喜怒哀楽や優しさをストレートに出すタイプだった。

初恋相手が成長と共に更に素敵な人になっていったのは見ていて喜ばしかったし
小学校五年生にして初カノができたのも納得した。
一歳年上のキレイ系な先輩と付き合い
確か二~三年付き合っていたと思う。
小学生時代からの付き合いで、二~三年もてばすごいと思う。
きっとA君は彼女を大事にしただろう。

 
 
 
中学校を卒業し、私とA君は別々の高校に進学した。
お互いの高校自体が離れていたので、中学校を卒業してから偶然会うこともなかった。
連絡をとったりもしなかった。

 
だから中学校卒業をしてからA君と再会したのは
成人式の会場だった。

A君は白い袴をはいていて、髪型は派手で金髪に近かった。
だいぶ成人式ハイというか、張り切っているというか、ヤンチャな感じが伝わった。

成人式や同窓会でA君と会いはしたが
なんせお互いにたくさんの人と再会だったので
軽く挨拶くらいしかしなかったような気がする。

 
 
 
だから久々にじっくり話したのは更にその5年後
私が25歳の時だった。

私の小中学校時代のクラスメートが海外に留学し、久々に帰国したらしく
それに合わせてプチ同窓会をしようという話になった。
 
 
中学時代、仲良しグループにいた子は全員が仕事等で不参加だったので、参加する気持ちは少し揺らいだが
参加メンバーには成人式でよく話せなかった人だらけだったので
私は「滅多にない機会だし…!」と思い切って参加することにした。

 
プチ同窓会メンバーは男女合わせて8人。

プライベートで今でも小まめに会っていたり、連絡をしている人はメンバーにいないという中
私は参加した。
まぁ中学校時代はクラス仲が良かったし
中学時代から私は社交的になったこともあり 
楽しい時間が過ごせる自信はあった。

 
 
プチ同窓会は居酒屋で行った。

久々に会ったみんなはキレイになっていたり、かっこよくなっていた。
成人式の際の同窓会は三桁の人が集まっていたので
8人規模はちょうどいい。

お互いにジックリと近況報告をした。
留学をしていた子は今は仕事をしていないらしいが
他の子は全員がどこかしらで働いていた。
留学の話や社会人の話を皆とするのは楽しかった。
小中学校が同じ人と
大人の話をするのは楽しかった。

友達「ともかちゃん、指輪してるー!?彼氏いるの?」

 
私「うん、お付き合いしているよ。」

 
友達「どんな人?」

 
私「お医者さん。」

 
一同「医者!?!?!?」

 
みんなはぶったまげていた。
なんせ私は学生時代、色気も可愛げもない、女芸人のようなポジションだった。
中学時代から比べたら痩せて、メイクして、お洒落になり
彼氏ができていて、しかもその彼氏が医者というのは
みんなからしたらアンビリバボーだろう。

 
私は私で爽快だった。
なんせ成人式の時に私はまだ年齢=彼氏いない歴で
みんなの恋バナを聞く側だった。
私はいつも片思いだらけで失恋だらけだった。

今日くらい
人生でたまにはくらい
彼氏がいる自慢をしたかった。
彼氏が医者自慢もしたかった。

いやまぁ、付き合いだした時は彼はまだ医学生だったし
医者目当てに付き合ったわけではないが
モテない人生を歩んだ私は
たまにはちょっとスポットを浴びたかったのだ。
許して欲しい。

 
 
私の隣席にいたB君は、私と小中学校クラスが9年間同じで
男子の中では仲が良い方だった。
一緒に児童会役員をしたり、男女グループで遊んだこともある。
B君は漫画やゲームやアニメが好きな草食系な地味な男子で
私達はよく、ヲタクトークをしていた。
小学生時代から私を見下したりせず、公平な態度で接してくれた珍しい男子で
私はB君を友達として好きだった。

高校が離れ離れで遠方になり、B君は遠くの大学に進学し、大学の近くの地域で就職したらしい。

中学校卒業後、成人式や同窓会で再会した際、多少話したり写真を一緒には撮ったが
バタバタしていてあまり話せなかった。

 
B「その彼氏には、ヲタク趣味話してあるの?」

 
私「話してあるもなにも…私よりガチだね。ガンダムフィギュア飾ってあったり、一緒に部屋で彼オススメアニメ見たりする。」

 
B「羨ましい。いいなぁ~趣味を理解し合える関係、最高だね。実は俺、会社でもヲタク隠してて、今日真咲さんと再会できて嬉しいんだわ。

久々にヲタトークできる!」

 
私「学生時代、一緒にイラスト描いたり、アニメや漫画の話よくしていたよね~。懐かしい。」

 
B「一緒にアニメ主題歌、昼休み放送でリクエストしたりね(笑)」

 
私「そうそう。したよね(笑)懐かしい。
成人式の時、あんまりB君と話せなかったから今日会えてよかったよ~。」

 
B「連絡先交換していい?」

 
私「もちろん。しかし、会社でヲタ隠しはキツいね。」

 
B「本当キツい。」

 
私「話せそうにはないの?誰か一人くらい、同じ属性の人いないの?私、職場でもヲタク隠してないよ~。」

 
B「真咲さんはそういうところいいよね。明るいヲタクだし、オープンヲタクだし、ヲタクバレしても受け入れられる人柄じゃない。俺なんかだと、ガチオタだからマジキモいじゃん?」

 
私「キモさなら負けないわ!私はB君が好きだし、ヲタクなB君も好きだよ。あの頃も今もB君と話していて楽しいよ。」

 
B「真咲さんくらいだよ、そう言ってくれるの。」

 
 
留学をしてきた子の帰国記念同窓会のはずが、途中から私はB君とヲタ話に突入してしまった。
「まぁまぁ飲もう飲もう。」と、お酒をすすめたり、久々に話をした。

私はずっと地元にいて、友達に囲まれた生活をしているけど
遠く離れた地でヲタ趣味を隠して生きるのはしんどいだろう。
なんせB君はなかなかのガチヲタだ。

 
 
居酒屋でみんなで飲み食い二~三時間して色々話したはずだが
私はこのB君とのやりとり以外はよく覚えていない。
まぁ確か近況報告をして、今みんなが何をしていて、恋愛がどうのこうのの話が中心だったと思う。

 
 
二次会はボーリングをして、プリクラを撮った。
このメンバーでボーリングもプリクラも初めてで
めちゃくちゃ盛り上がって楽しかった。
中学校時代に戻ったようだ。
本当に、中学校三年生のあのクラスは、和気藹々としていていいクラスだった。

プリクラは8人だと全員入るのがなかなか大変だったが
なんとか全員おさまった。
成人式の日はプリクラを撮っていないし
おそらくもうこの8人で集まることはないだろう。
貴重なプリクラとなった。

 
 
帰りはA君とその奥さんが車を出してくれて、私達全員を家まで送ってくれた。
A君はお酒が好きなはずだが、車を出す目的で今日は飲まないと初めから決めていた。
更に、みんなが気兼ねなく夜通し遊べるようにと
奥さんにも運転手を頼んでいた。
なんと男気があることか。

 
私他数名はA君の車に乗せてもらうことになった。
A君の車に乗ることは初めてだった。
仕事で利用者を乗せることがあるとは言え
私は積極的に誰かを乗せて運転はしたくない。
だからA君はすごいなぁと思った。

 
話によると、A君は高校卒業後から真面目に働いていて
今年、社長に就任したらしい。
会社名はなるほど、A君の名字が入っていた。
社員旅行がハワイといっていたから、景気はいいのだろう。

数年前に結婚し、お子さんもいるそうだ。
奥さんとお子さんを溺愛していた。
写真も見せてもらったが、幸せそうだった。
今日は夫婦で私達を送る為、母親に子どもの面倒を任せたらしい。

母親思いなA君は家を建て、母親と同居しているらしかった。

 
私達が25歳……A君は誕生日が過ぎていたから26歳になっていたが
私はA君の人生設計におののいた。

 
私は大学を卒業した後、更に専門学校に通ったから
皆より遅く社会人になっていたし
社会人歴が短い。
恋人はようやく20代でできたばかりだ。

 
だが、A君は高校卒業後から真面目に働き
まさかの20代で社長として社員をまとめている。
結婚しているし、子どもはいるし、家は建てたしで
あまりのスケールの違いに驚いた。
医者の彼氏アピールをする私との格の違いに、私は情けなくなった。

 
私の初恋相手は、すごい男だった。
相変わらずストレートに優しさを伝える面倒見のよい人で
その変わらないところに嬉しくなった。

 
 
私「あ、そこ右曲がってね。」

 
A「真咲んちは覚えてるよ(笑)道案内いらんて(笑)」

 
 
私は驚いた。

そりゃA君ちを私も覚えているが、それはかつて遊びに行ったからだ。
A君は我が家に来たことは一度もない。
実際、A君よりB君との方が私は仲が良かったが
私はB君ちを知らない。
中学時代に引っ越したのは知っているが
そもそも引っ越す前も後もおおよその場所しか知らない。

クラスメートの家を私は全員分は知らない。
特に異性のクラスメートの家は尚更だ。

 
 
A君は迷わなかった。
夜道でも迷わなかった。
本当にすんなり我が家に着いた。
運転もソフトで優しかった。

私「今日は送ってくれて、ありがとう。楽しかった!」

 
A君&みんな「楽しかった!また会おうね!」

 
私「うん、また会おうね!帰り、気をつけてね!」

 
 
私は車が見えなくなるまで見送った。
A君はこれから他の子を家へ送るべく、車を再び走らせた。

ルート上、私はトップバッターで送ってもらえたのだ。

 
 
私は家に入った。

私「ただいま。」

 
母「おかえり。A君送ってくれたの?(※メールで伝えておいた)」

 
私「送ってくれた。私以外の子もみんな送るらしい。」

 
母「A君は昔から面倒見良かったからね。」

 
私「お母さんはよくA君からかったり、挑発して、行事のたんびにA君と楽しんでいたよね。」

 
母「そうだっけ?」

 
私「そうだよ!お母さんは派手で目立っていて、真咲と母親はちっとも似てないって、小学生時代は散々皆に言われて、私は恥ずかしかったんだから。」


そんな風に、母親とプチ同窓会の話やA君の話、学生時代の話をして
夜は更けていった。

あの日は本当に楽しい夜だった。 

 
 
 
 
 
あの後、みんなは結婚したり、出産したり、仕事が忙しくて
もうあの8人で会うことはなかった。

アラサー前は頻繁にあった同窓会や複数人の集まりは
段々と回数が減っていき
関係は自然消滅となっていった。
 
 
SNSや年賀状で近況報告をしたり
内輪で集まり
連絡をするのが主流となり

かつての同級生でも、誰が今どこで何をしているかを
私も知らない人が増えていった。

 
 

 
  
コロナ禍により、私は散歩をする時間が増えた。

かつてA君が住んでいた家の近くを私はよく散歩する。
思い出すのは、A君との学生時代の数々の思い出や最後に会った25歳のあのプチ同窓会だ。

 
初恋は実らないという。
確かに実りはしなかった。

だけどA君は私にとって、再会してもなお、いい男だった。

私の初恋相手は
自分に嘘をつかずに真っ直ぐに突き進み
周りの人を大切にする素敵な大人になった。
きっと今でもそうなんだと思う。

 
あなたが初恋で、よかった。








 

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