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イブとクリスマスで彼氏が違う女性

クリスマスデートに憧れる。

寒い中、恋人と手を繫いだり、腕を組みながら 
ツリーやイルミネーションを見て
チキンやケーキを食べて
何らかのアクセサリーをもらうというシチュエーションに憧れる。

 
それなのに、私は人生において、そのようなクリスマスをほとんど過ごしたことがない。

 
何故なら私に初彼ができたのが、大学四年生一月だったからだ。
クリスマスイブもクリスマスも基本的には平日で
私の憧れのシチュエーションデートをするにはネックがあり過ぎる。
大抵クリスマスは仕事だし、その次の日も仕事だ。 

だから23日の祝日だとか
クリスマス付近の土日に
大抵クリスマスデートは行われた。

 
イルミネーションを見たり
クリスマスマーケットを見たり
プレゼント交換をしたり
ディナーやご馳走やケーキを食べたり
夜景を見たり
カラオケに行ったり
水族館に行ったり
部屋でまったり過ごしたり

クリスマス当日以外にクリスマス風デートを彼氏としたことは
何回かはあるのだ。

 
 
だがしかし、私はあくまでイブやクリスマス当日のデートに憧れる。

イブやクリスマスが一番心寂しいのだ。
リア充したいのだ。
いっそ出掛けなくてもいいから
ちょっとだけでいいから
イブやクリスマスに好きな人に会いたいのだ。

電話やLINEだけじゃ寂しいのだ。

 
そう力説しても「でも明日は仕事だし、今度の土日会うからいいじゃん。」と流されてしまう。
「ともかだって仕事忙しいし、体力ないじゃん。」と。

分かっている。
ごもっともなのだ。
私は仕事柄、12月はとても忙しく、残業や持ち帰り仕事率も高い。
職場でクリスマス会の行事があるからだ。
頭はクリスマス会(仕事)でいっぱいだ。
彼氏へのプレゼントよりも
利用者へのプレゼント準備に大忙しだ。

 
分かっている。
私だってそんな師走っている12月の平日は
まっすぐ家に帰り、次の日の仕事に備えたい。
分かってはいるが
おそらく学生時代にクリスマスデートをしなかったことが心に引っ掛かり
当日デートにこだわり、憧れてしまうのだろう。

 
 
私は実家暮らしだから、基本的に毎年クリスマスは家族と過ごした。
姉がクリスマスが誕生日なので、姉のお祝いも兼ねたクリスマスを過ごした。

学生時代、イブやクリスマスは
大抵女友達と過ごした。
彼氏なしの友達はすぐに私を誘うし
私も誘うし
毎年なんだかんだで予定がないクリスマスの方が少なかった。

 
イブもしくはクリスマス当日

イルミネーションを見たり
遊園地や水族館に行ったり
ウィンドーショッピングをしたり
ディナーを食べる時
大抵隣には女友達がいた。

彼氏としたい過ごし方は
大抵女友達により叶えられてきた。

 
アラサーになったらライブ仲間ができて
近年は仲間と仮装して
ケーキやらなんやらを食べることも増えてきた。

 
クリスマスに予定があり
一緒に過ごす家族や友達や仲間がいても
それがどんなに楽しくても
それでも私は
いつも少しだけ寂しさを感じずにはいられなかった。

  
イブやクリスマス当日に、デートがしたい。

 
毎年私はそれを願ってしまう。
彼氏とクリスマスにデートがしたい。
願わくば、特にイブにデートがしたい。

 
 
 
 
 


 
あれは、私が大学一年生の頃だ。

大学生になり、周りには少しずつ初彼・初カノがいる人が増えていった。
友達と女子会をすると、「実は彼氏ができて…」なんて話を誰かしらがして、バカみたいに盛り上がりがちだった。

 
だが、私が仲良くしている大学の友達は、たまたまみんな恋愛体質ではなく
私含めてみんな、年齢=恋人いない歴で
友達同士でキャッキャッしていた。

 
私は高校時代から彼氏がほしくてたまらなかったが
周りは彼氏を欲していなかった。
周りはみんな、恋愛体質ではなかったのである。
同じ彼氏がいないでも
恋バナで温度差があった。
忘れられない恋や失恋や好きな人さえみんなにはいなかったし、なかった。

初恋がまだだったり、昔に初恋はしたが極めて淡いものだったり、芸能人やアニメキャラにキャーキャーしていたりと
現在進行形で恋をしている人はいなかった。
恋をしたがってさえいなかった。

 
 
そんな中、同じグループのAに彼氏ができた。
東大の彼氏である。

「私は断ったけど、その人からガンガンアプローチされて、成り行きで付き合うことになった。」

らしい。

 
Aは恋愛体質ではなかったが、周りが彼氏を作っていたこともあり、とりあえず付き合うという選択をしたらしい。
その彼氏とやらのプリクラを見ると、お洒落な方だ。しかも東大生。なんといっても東大生だ。

  
別の友達も初彼は東大生だったが
一体みんなどうやって東大生と知り合い、付き合うに至るのだろう………?

 
その彼氏の容姿は私は好みではなかったが
スタイルはいいし、顔もイケメンだし、東大生だし、とにかく羨ましかった。
そんな人が自分を彼女にしたいと猛プッシュしてくれるなんて
幸せだろうなぁと思った。

 
大学で出会った友達の中で、初めて彼氏ができたのがAだったので
恋愛体質な私はキャーキャー盛り上がった。
なんとなく付き合った当事者のAよりも
私の方が浮かれていたと思う。

 
 
話を聞いていると、順調に定期的にデートをしているようだったし
彼氏はマメに連絡をしてきて
愛を伝えてくるらしい。

いいなぁ~
私も彼氏ほしいなぁ~
羨ましいなぁ~

と、私はひたすらに夢を見ていたが
Aはどんどん冷めていった。

 
「なんであんなにデートしたがるんだろう?」
「なんであんなに連絡をしてくるんだろう?」
「なんであんなにキスしたいとか言って、キスせがむんだろう?」
「なんであんなに好きって言ってきて、私にも言わせようとするんだろう?」

「付き合うって、面倒くさい。」

 
私は衝撃だった。

私が羨ましがること全てが、Aにとっては面倒で煩わしいことだった。
 
 
Aは恋愛体質ではなく、プラトニックな付き合いを求めたらしく
その辺りで段々とすれ違いが起きたようだ。

二人の年齢や付き合った期間を考えると
手を繋いだり、キスをしたりするのは普通だし
それを男性が求めるのは普通だし
まして、割と時間がかかっている印象さえあったから
私はAの彼氏に心底同情した。

いやいや、あなた頑張ってるよ…
10代で性欲ありあまっているだろうに、Aが嫌がるから必死に堪えてるんだね……
やるじゃん、東大生!

と、私は会ったこともないAの彼氏を評価していた。

 
 
やがて季節は冬に変わっていく。
クリスマスデートに張り切ったAの彼氏はバイトを増やし、ディナー代やプレゼント代を稼いでいるらしい。

「バイトバイトで連絡つかないし、デートしてくれない。男って釣った魚は放置なんだね。」

 
いや、ちょ、お前何様だよ…
彼氏はクリスマスのために頑張っているんじゃん……

 
段々と私は腹が立ってきた。 

 
 
もともとAを私は友達と思っていなかった。

他グループとうちのグループが仲が良くて
他グループ内でAは上手くいかず
気づいたら私になつき、うちのグループに移籍してきただけだ。

同じグループの子、としか私はAを認識していなかった。
Aは自己顕示欲が強く、周りを見下し、私が誰かと話していると間に割り込み
愚痴をひたすらに聞かせる癖があった。

  
だから私はAを友達とは思っていなかった。
ただ、同じグループだから無碍にもできなかった。

 
彼氏ができてからの、Aの心ない発言の数々に
私は更にAに苦手意識を持った。
うちのグループの中で、他のメンバーもAを「同じグループの子」としか認識していなかった。
私以外の子とAも、特別仲はよくなかった。
Aもそれは分かっていて、私にばかり色々悩みを相談してきた。

それがどんどん苦痛になってきた。

 
 
Aに何か言っても、「私は」とか「みんなと私は違うからね」と自慢ばかりなので 
面倒になって
Aが喋るほどに私は無口になり、同じグループの他のメンバーに任せた。

講義以外で自由時間の時に、Aからよく「二人で話したい。」とメールがあったが
私はAが前にいた他グループの子達(Aと敵対している)と過ごしたり
別の用事を作って
なるべくAと二人きりにならないようにしていた。
グループで過ごす時はなるべく他メンバーにAの話し相手になってもらうように工夫さえしていた。
Aと関わるのがストレスだった。

 
Aは私を大学で一番仲良い友達とみなしていたようだが
私は大学で一番苦手な知り合いがAだった。

 
 
12月に入り、Aは幼なじみから告白されたらしい。
さすがモテる女は違う。
東大生の彼氏がいて、幼なじみから告白とか、少女マンガや恋愛ドラマにありそうな展開だ。

  
「彼氏がいるから断ったんだ。でも、最近彼氏が構ってくれないし、幼なじみ君としょっちゅう電話やメールをしているの。話聞いてくれて、優しいんだ。」

 
私は正直、よかった…………と思った。
Aと話をするのがしんどかったからだ。
幼なじみ君とやらは、柴犬のような顔をしていた。
人が良さそうだ。

 
幼なじみ君とやら、後は頼んだ…
私はもう疲れた……
Aに惚れてるなら、話し相手になってくれ……

 
私はそんな風に思った。

 
 
やがて、クリスマスイブを迎えた。

Aは彼氏とクリスマスイブデートをし、私は同じグループの子とケーキを食べに行き、友達の家でDVDを見た記憶がある。

 
確かその年はちょうどクリスマスイブとクリスマスが金土だか、土日だかで
私はAがどんな風にデートをしたかは知らないまま
休日を過ごした。

 
 
そして週明けの月曜日に、Aからクリスマスの話になった。

A「彼氏とイブにデートしたけど、段取り悪いし、料理イマイチだし、プレゼントは好みじゃないし、腹が立ってきて、デート早めに切り上げちゃった。

それで、クリスマスに幼なじみ君とデートして、付き合うことになったの。」

 
私「!?………じゃあ、彼氏とはイブに別れたの?」

 
A「別れ話はしてないけど、もう連絡全部シカトするもん。自然消滅って感じかな?

それよりもさー!聞いてー!幼なじみ君ったら、クリスマスにさ~(以下略。惚気)」

 
 
お、女をぶん殴りたいと思ったのは、生まれて初めてだった…………

 
 
神を冒涜してる、と思った。
クリスマスはそもそも、イエス・キリストの誕生を祝う、キリスト教の聖なる日じゃないか。

 
え?
イブに彼氏とデートしたけど、ムカついたから早めにデート切り上げて?
え?別れ話をしないで、連絡そのままスルーにして?
え?
クリスマスに、幼なじみ君とデート?付き合う?

 
 
私は頭が混乱して、吐き気がした。

イブとクリスマスで彼氏が違うって、前代未聞じゃないか……?
いや、正式には別れてないから、二股になるのか………?

私からしたら誠意がないとしか思えないが
東大生の彼氏も、幼なじみ君も
Aが一番好きなのか……………

 
世の男性は、こういう女性を選ぶんだ………………

  
 
私は落胆した。
それこそ私はAを見下していたのだ。
Aが選ばれてなんで私は彼氏ができないのだろう、と納得できなかった。

だが、Aは美人だ。
メリハリのあるボディラインで、毎日痴漢被害にあうともいっていた。

 
世の中は顔だ。体だ。

私は容姿がイマイチだから、男性に異性として認められない。
顔と体さえ恵まれていたら、Aみたいな女性でもチヤホヤされるんだ。

 
バカバカしい。
神も仏もありゃしない。

 
Aのマシンガントークの惚気を聞きながら、私は複雑な気持ちになった。

 
 
 
Aは新彼の幼なじみ君と和装で決め込み、初詣デートをしていた。

クリスマスに神を冒涜しただけじゃなく
初詣に和装で決め込んでちゃっかりデートしている神経が分からなかった。

A曰く元彼の東大生と、Aはケジメをつけないまま、おいしいとこ取りだったからだ。

 
男と女ってなんだろう…
恋愛ってなんだろう……
付き合うことってなんだろう…………

 
私は自分の価値観や概念が分からなくなった。
自分に揺るぎはないが
実際に選ばれているのは、Aだ。

 
私は私が好きだけど
異性から相手にされない女でしかない……

 
私は女としての自信をなくしていった。

 
 
 
だが、Aと新彼の幼なじみ君は、三ヶ月ももたなかった。
元彼の東大生とも三ヶ月くらいだったから
三ヶ月でAに限界が来るらしい。
Aがプラトニックな関係を望むが、男性はそれ以上の関係に進展したいからだった。

Aは、新彼の幼なじみ君を振った。

 
「なんで男って彼女には手を出してもいいと思ってるんだろうね?

やっぱり付き合うのって面倒くさい。私は彼氏は当分いいや。」

 
 
Aが新彼ときちんと別れ話をしたかは分からないが
尋ねる気にさえなれなかった。
どうでもよかった。

 
ただ、Aは宣言通り、大学生活中に新たに誰かと付き合うことはなかった。
二人の元彼に復縁を求められたようだが
スルーし続けていた。

その点に関して言えば、潔かった。

 
 
クリスマスデートに強い憧れがあったが
私はAに関しては羨ましさを感じなかった。

イブとクリスマスで彼氏が異なったり
平気で遊びに行ける女性には
私は決してなりたくなかったからだ。

 
 
 
それから数年後、私は初めて彼氏とクリスマスイブを過ごした。

神戸で異人館や夜景やイルミネーションを楽しんだ後
フレンチディナーを一緒に食べた。

 
私は手編みのマフラーや手作りお菓子、市販の手袋をプレゼントに渡し
彼は私に手作りのアクセサリーと、万単位の高い指輪をプレゼントしてくれた。

雪がちらついていて、ホワイトクリスマスでもあった。

 
20数年間彼氏がいなかった私に、そのクリスマスイブはあまりにも贅沢過ぎた。
まるでドラマのようなロマンチック過ぎるデートに
私は幸せと共に
切なさを感じた。

クリスマスイブデートのピークだと思った。

もう彼氏と
そしてこの人生において
これほどのクリスマスイブデートはできないだろうと感じた。

 
そしてその予感は的中した。
あんなに豪華で、THE クリスマスイブなデートは
今のところ過ごせていない。

 
 
私はクリスマスデートに憧れている。
毎年彼氏や好きな人と過ごせるイブやクリスマスを夢見ている。

だけど大人になり、私は気づいたのだ。

好きな人とクリスマスを過ごせたらそれでいいし
彼氏がいる状態で迎えるクリスマスならば
当日に会えなくても、切なさの量が違う、と。

 
 
今年はコロナウィルスの影響もあり
また24、25日と平日であることもあり
全国的にクリスマス感が少ないクリスマスになっている。

外出自粛やイルミネーション、クリスマスイベントの中止も相次ぎ
恋人がいる人も、いつもよりはひっそりとした過ごし方をするだろう。

 
 
とりあえず今年のクリスマスイブは
イケメンの友達と電話をして幕を開けた。
悪くない始まりだ。

さて、今日と明日はどんなクリスマスになるのかな。




 







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