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縄跳びをする大人

2019年12月。
私は東京国際フォーラムで行われたCoccoのライブに参戦した。

WOWOWで後日、その日を放送したから、もしかしたら私も映っているかもしれない。
我が家はWOWOWに加入しておらず
同僚に録画してもらったが上手く再生できなかったので
それは定かではない。

 
 
Coccoのファンになってから10年以上が経過し
Coccoがライブをやるたびに東京公演に行っていた。

Coccoの生歌は凄まじい。
まるで金縛りにあったように動けないし
涙がボロボロ止まらない。

 
 
去年の12月、私は振替を使って仕事を半日で早退し
東京国際フォーラムに行った。
東京国際フォーラムは大学の入学式を行った場所で
何度行っても入学式を思い出す。

街はイルミネーションで、国際フォーラムもクリスマスツリーがキラキラしていた。

 
そんなロマンチックなムードの中、私はライブ会場を目指した。

 
 
Coccoのライブグッズは人気がすごい。
すぐに完売してしまう。
ネット通販もすぐに完売してしまう。

私はCoccoのライブに何回も行っていてそれを知っていたが
会場はあまりの人だかりに
物販を中断していた。

 
なんということだ………早めに来たのに。

 
長蛇の列は会場入場列と、物販列に分かれていたが、非常にゴチャゴチャしていて分かりにくかった。
周りのファンもおろおろし

「こっちが物販列ですかね?」
「多分こっちですよね?」

と、お互いに言い合って、見知らぬ人同士で絆が生まれた。

 
 
 
その時、私の隣にいたのが、美人な女性だった。
私もぼっち参戦だが、彼女もぼっち参戦だったらしく、私達はどちらからともなく話し出した。

彼女Aさんは神奈川在中の方らしい。

 
お互いに身につけていたグッズが昔のツアーグッズだったので
あの日のツアーはどうだとか、あの日のライブはどうだったとか
新作アルバムはどうだとか、今日のセトリ予想だとかを
私達は語り合った。
周りから見たら、私達は出会って数分前には見えなかったはずだ。

A「バンドでCocco歌ったんですよ~!」

 
私「え…すごい!なんてバンドですか?」

 
A「YouTube見ます?」

 
私「見ましょう、見ましょう。私も地方アイドルのジャケット絵を描いたり、作詞をしたことがあって…。」

 
A「えー!すごい!なんてアイドルですか??」

 
 
グッズ列は一向に動かなかった。
私達はその間に、キャッキャと話しながらYouTubeを見た。
趣味でバンドマンの方と、趣味で作詞をした私がたまたま隣同士なのだから、人生とは面白い。

 
 
待ちに待って、物販列は動いた。

ファンは一斉に階段をかけ登る。ライブ時はこれだから、歩き慣れたスニーカーに限る。

 
階段上の物販は、現金エリアとカードエリアに分かれていて
これまた人がゴチャゴチャしていた。
どうやら現金エリアよりカードエリアの方が売り切れが少ないらしい。

A「私はカードエリアに行きます!」

 
私「私はカードないので、現金エリアに行きます!」

 
私&A「また会えたら、会いましょう!」

 
 
私達は物販列で離れ離れになった。
バーゲンセールではないが、人だかりがすごい。
既に待機時間中にAさんとSNSのアカウントは交換していた為、はぐれても連絡を取り合えた。

Aさんと私はチケットも見せ合っていたので知っていたが
ライブの座席がだいぶ離れていた。

 
 
 
Aさんと離れた後、ようやく物販会計に辿り着くと
目当ての商品はほとんどが売り切れだった。

 
バ、バカな……!
あんなに早く並んでいたのに………!!

 
私は仕方なく、バッグとジャージとキーホルダーを買った。
他の目当ての商品は売り切れだったので仕方ない。

ジャージはLサイズが欲しかったが、売り切れでMサイズしかなかった。

 
写真を見ると、細身なデザインなんだよなぁ…
Mサイズで入るかしら……
高額だし、試着はできんし………

ええい、ままよ!

 
いつも、ライブグッズの洋服は半袖しか買ったことがなかったが
ジャージ上下を買ったのは初めてであった。
カラフルな星が散りばめられた、Coccoデザインのジャージはキュートで
私は春になったら仕事着にしようと目論んでいた。

 
ジャージが着られる職場、万歳!

 
 
グッズを買った後はかろうじて売っていたサンドイッチを買い、食べ
それから再び走って、ガチャガチャ列に並んだ。

物販列とガチャガチャ列は別であり
ガチャガチャ列がまた長蛇の列であった。
私の後ろにもどんどん人が並んだ。

 
 
ガチャガチャをして、トイレに行き、座席に着いたのはライブ開始3分前であり
私はライブ前に汗だらけになった。

 
ライブは文句なしの最高オブ最高であり
Coccoにどんどん引き込まれた。

このライブの後に
2020年にCoccoが初めてライブハウスツアーを行うことが発表されたが
コロナウィルスで延期になり
やがて中止が発表された。

 
12月に国際フォーラムに行っておいて本当によかった。

 
なお、ライブの次の日は一泊二日の旅行で神奈川県に行った。
Aさんと偶然会うことはさすがになかったが
ライブ後もやり取りは続いている。

 

 
 
 
 
神奈川旅行から帰宅した後、恐る恐るジャージを着たら、Mサイズだが、ちゃんと入った(私は身長165cm)。
一万円近い買い物だ。
無事に着られてよかった。

 
ただ、私は寒がり屋だし、ジャージは生地からして春~秋用だった。
更に、ジャージはサイズは問題がなかったが、ズボンはやはりシャープなデザインで、脚痩せをしたらよりかっこよく着こなせると思った。

 
ダイエットを頑張って、春になったらこのジャージを着て、私は仕事に行こう!
あぁ楽しみ楽しみ!!

 
私はルンルンした。
大事に大事にジャージをしまった。

 
 
 
なお、ライブ当日買えなかったライブグッズは後日通販でおおよそ買えた。
何故おおよそかと言うと、通販開始直後にあっという間に完売したからである。

ライブ会場に置かれたグッズの表も、あまりの人だかりに間に合わず、私が会計に着いた時点で表よりもソールドアウトが多いレベルだったのだ。

 
 
 
 
 
2020年2月になり、私は諸事情で3月いっぱいの退職が確定した。

春になったらCoccoのジャージを着て仕事に行くという私の夢は破れた。
それが残念だった。

 
 
私が有給休暇消化をしている時はちょうどコロナウィルスが世界中で問題になっている時であり
毎日毎日暗いニュースが続いた。

段々と春の陽気になり、私はCoccoのジャージを着た。

 
やっぱりめちゃくちゃかわいい。
カラフルな星柄が可愛すぎる。

 
コロナウィルスで先が読めない中、予期せぬ退職で未来が分からなくなった中
私の気持ちを盛り上げてくれたのは、Coccoのカラフルなジャージだった。

 
Coccoのジャージを着て、ジャージの星柄を見るたびに
私はいちいちテンションが上がったのである。

 
 
趣味がライブや東京観光だった私は、三月以降それらに行けなくなった。
散歩は推奨されていたので、仕事を辞めてから
私は毎日のように散歩をし
室内運動に励んだ。

 
Coccoのジャージをかっこよく着こなしたい。

 
それが私のモチベーションだった。

 
 
 
そんな中、湊かなえさんの「山猫喫茶」というエッセイを読み、湊さんがダイエットで縄跳びを行ったことが書かれていた。
調べてみると、縄跳びはウォーキングの3倍の消費カロリーで全身運動だという。

これだ!

と、私は思った。

 
 
もともと私はものぐさで、ウォーキングよりも水泳の方が短時間で消費カロリーがすごいと知り、水泳にも手を出していた。

【ウォーキングよりも短時間で消費カロリーがすごい】

という縄跳びに
私はアッサリと食いついた。

 
 
私はガサゴソと部屋を探した。
3年前に急に縄跳びがやりたくなり、私は100均で縄跳びを購入していた。
カウンター付である。

購入しつつ数えるほどしか使っていなかったが
今こそ使う時が来た!
無職だし
ステイホームだし
痩せたいし
今こそ、縄跳びをやる時だ!!

 
私はカウンター付きの縄跳びを手に、メラメラ燃え、外に飛び出した。

 
 
私の敷地にはコンクリート部分があり、縄跳びをやるスペースがあった。

とりあえず、300回を目標にするか…

と、数年ぶりに縄跳びをしてみたら

 
 
これがまぁ、連続で跳べない。

 
 
基本中の基本の前跳びさえ10回連続でできず
そのくせ腕も足も痛くなり
息は上がり、汗は止まらず
初日はようやく300回を終えた。

 
な、縄跳びってこんなにキツいんだっけ?

 
 
私は小学生時代の自分を遠くに感じた。

 
 
 
【一ヶ月にマイナス1kg】
【毎日300回縄跳び(雨天、生理時は中止)】

を目標に掲げた私は
とにかく毎日縄跳びをした。

 
汗だらけだろうが、体が痛くなろうが、Coccoのジャージを着こなせる女性になりたかった。
縄跳び以外にも室内運動をしたり、散歩をしたり、時に泳ぎに行ったりと
とにかく運動をした。

 
だが、毎年三月は私が一番太りやすい時期で
ステイホームも重なり
体重は2kg増えた。

 
確かに運動はしていたが
仕事をしていた時と比べると、運動量は雲泥の差だった。

 
コロナウィルス前は、週6勤務は当たり前だし、休日は出掛けてばかりいた。
ステイホームを原則とした無職の頑張りなんて
あまりにちっぽけだった。

 
 
ま、負けてたまるか、こんちくしょう!!

 
四月からは毎日400回
五月からは毎日500回
六月からは毎日600回


と、私は毎月縄跳びノルマを100回ずつ増やした。
毎日縄跳びをやるごとに体は馴染んできて
体の疲れや痛みは軽減したし
連続で跳べるようにもなった。

 
食生活も見直した。
炭水化物の量を減らし、たんぱく質や野菜を摂る量を増やした。

 
すると
4月に1kg痩せた。
5月にも1kg痩せた。
6月も7月も1kg痩せた。

 
つまり、マイナス4kgである。

 
 
 
リバウンドをすることなく、毎月1kg痩せるペースは実に理想的だった。

コロナウィルスの影響により、年内いっぱいの遠出や就職が難しそうだと思った私は
転職活動をしつつも

【今年は断捨離や自分の心身を整える年にしよう】

と、目標を設定した。

 
 
年末ではないが、普段掃除をしない場所を掃除し
断捨離をした。
スキンケアやパックを見直したり
医療脱毛をしたり
ドライブレコーダーをつけたり
自分が楽しいと思えることを行ったりと

自分の心や体
自分が過ごす家や車

の環境を整え、ひたすらに病まないように気をつけた。

 
【30代無職独身彼氏なし】という自分のステータスにコロナ禍が加わることで
私は余裕やゆとりをなくしていた。

別にこのステータスではない方も余裕やゆとりはなくしていた。
未曾有の大危機が、コロナウィルスなのだから。

 
【心さえ元気ならばどうにかなる!】
【体を鍛え、痩せることで自分に自信が持てる!】
【体の健康は心の健康!】
【貯金はまだある。早めの転職にこだわるな。ブラック企業に今就職したら、尚病む!】

 
【今自分にできることを!今私は、やる!!】

 
 
 
 
そうした意識のせいか、今年は会う人に

「キレイになった。」
「痩せた。」
「表情が明るくなった。」

と言われることが増えた。
シメシメである。

 
私は単純だから、褒められると素直に嬉しい。

 
 
体重よりもボディラインを意識した方がいいと
部分痩せについても調べ
大嫌いな腹筋も、【好きな曲一曲分だけで休憩ありでもいいからやる!】と目標にし
今年は人生で一番腹筋をやっている。

 
 
 
だが、毎月1kg減ることは、7月でストップした。

私が日焼けを避けたことと
暑いことが苦手なせいで
散歩等の時間が減ったせいである。

 
プールはステイホーム中の方で賑わっていたり
土日は感染リスクを減らすためになるべく出歩かないようにした結果
逆に夏場こそプールには行けなくなった。

 
 
 
それでも、毎月縄跳びは続けていた。

8月に800回、9月に900回を目標に跳んでいたところで
9月中旬頃に縄跳びの持ち手はポキッと割れた。
限界が来たのだ。

 
100均の縄跳びがよくぞここまで持ちこたえてくれた……
ありがとう。

 
私は縄跳びにさよならを告げた。

 
 
 
 
さて、その後どうなっているかというと、別の縄跳びを買ったが使い勝手がよくない為
私は縄跳びが壊れたことを機に、縄跳びを卒業した。

現在はテレビを見たり、音楽を聴きながらエア縄跳びを行っている。

 
 
室内運動も継続して行っており、最近は小顔体操も加えた。
体重は7月より更にマイナス1kgである。
なかなか、いいペースだ。

 
 
去年の12月、Coccoのジャージを買わなかったら、ここまで痩せようとは思わなかった。
そして、もしも縄跳びがカウンター付きではなければ
ここまで躍起にならなかっただろう。

あと○回で目標の●●●回だ!!

カウンター付きだからこそ
カウンターを見ながら頑張れた。
100均で実にいい買い物をした。

 
Coccoのジャージと縄跳びは
値段以上のものと素敵な時間を確かに私に与えてくれた。

 
 
Coccoのジャージは部屋着や運動着に大活躍している。









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