見出し画像

移転と異動と退職

母親の年度いっぱいの退職が決まったのは割と最近の出来事で
私のバセドウ病が発覚してからだったと思う。

 
三年前の私と同じように辞めたくないが辞めざるを得ない状況だったらしく
母親はひどく落胆したり、怒ったりしていた。

 
「〇〇さんなんて何もしていないのに、なんで待遇がいいんだ。なんで私が辞めなきゃいけないんだ。」

ポジティブな母が珍しく憤るその姿に
かつての私が重なる。

 
母はその職場で15年働いていた。

 
「しばらくはゆっくりしようかな。」と母は言い
別の業種を考えていたようだった。

 
だが、お声がかかり
あっという間に面接→内定の流れになり
4月から別の場所で働くことが決まった。

 
母は私と違って割り切るのが上手いので
次の仕事が決まったことで
気持ちはそちらにいっていた。

私は転職してからまだ揺れたままなので
母は逞しいなぁと思った。

 
母親の退職が決まる頃、父親の異動も決まり
私は私で職場の移転があり
3月は家族みんながバタバタしていた。

 
最終勤務日の前の日、母は夜手紙を書き
そこにささやかなお菓子セットを添えていた。
同じ事業の人には更に追加で何かプレゼントを用意していた。

 
母が退職することは最終勤務日の前の日に発表だったらしい。

そんな母の姿や行動はかつての私で
見ていて私まで切なくなった。

 
最終勤務日の日
父は花束を、母は花束とバッグいっぱいのプレゼントをもらってきた。

そのプレゼントの量から、母が惜しまれ、慕われていたのがよく分かる。

 
「子どもに泣かれてもらい泣きした。」と言いながら
母は目を潤ませた。

 
最終勤務日の日、仕事終わりにライブに行った母だが
全てを割り切れたわけではないのだろう。

 
それは痛いほどに分かる。

自分が担当していた人に泣かれるほど辛いことはない。

 
父、母、私とこの春から新しい場所でのスタートとなる。

どうか私の家族がみんな
新しい場所でも馴染んで頑張れますように。
新しい日々が幸せに溢れますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?