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【弁護士が解説】税理士が知っておきたい!雇用をめぐる最近の法律問題#3 労働時間③

「働き方改革」といった言葉で表された一連の労働法規制の改正が行われてから数年、雇用関係をめぐっては続々と変化が現れてきています。

この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、最近の雇用をめぐる法律問題をご紹介していきたいと思います。

今回は前回に引き続き労働時間について取り上げますが、特に休憩時間について取り上げたいと思います。

1 休憩時間に関するルールとは?

労働時間については、労働基準法で原則として1日8時間以内、週40時間以内でなければならないとされています。そして、これを超える時間労働させた場合には、割増賃金を支払うことが義務づけられています。

そして、同じく労働基準法では、休憩についてもルールが決められています。一定時間を超えて働かせる場合には、途中で休憩を取らせなければならないのです。

具体的には、労働基準法第34条で、労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない、と定められています。

2 最近多い、休憩をめぐる紛争

さて、法律上はこのような形で取り決められている「休憩」ですが、最近の紛争を見てみると、休憩が取れていたか否かが争いとなっていることが非常に多くなっています。

例えば、朝9時に出社して20時まで勤務しており、うち1時間休憩を取ることとなっているが実際には15分しか休憩が取れていない、といった請求をされ、会社側からは、いや、1時間は休憩を取っている、と反論されるようなケースです。

残業代に関する紛争が増えている中で、休憩に関して争われることが非常に増えていることは押さえておくべきポイントです。

3 そもそも休憩とは?

休憩を巡る紛争が増えている、といっても、そもそも休憩とは?という問題があることは非常に重要です。

法律的には休憩時間と評価されるためには職務から離れて、自由に過ごすことができる時間でなければなりません。

例えば、昼休みの時間に電話がかかってきた場合や来客があった場合には休憩中であっても対応しなければならないようなケースがよく例で示されます。これは実際に電話がかかってきたときには対応を余儀なくされますので、法的には休憩時間と認められません。

ここで大事なのは、実際に電話に対応している時間だけでなく、食事をしていて特に業務に従事していない時間についても法的には休憩時間と認められなくなってしまうという点です。  

実際に対応している時間以外の時間も休憩と評価されなくなってしまう点は運用上、気をつけなければなりません。

4 まとめ

以上のように、実際の業務の状況などから、法的に見て休憩時間と評価できる形で休憩時間を付与することは非常に重要です。昼休みなども交代で取るようにしたり、昼休み中は電話も留守番電話に切り替えるといった対応が必要になるケースがあります。

また、トラブルを避けるためには、休憩についても何時から休憩に入り、何時まで休憩を取ったかがわかる形で行うことも検討して良いかもしれません。いずれにしても、いざトラブルとなると休憩時間が取れていたかが争いとなることは多くなっていますので注意が必要です。

【執筆者プロフィール】
弁護士 高井 重憲(たかい しげのり)
ホライズンパートナーズ法律事務所
平成16年 弁護士登録。
『税理士のための会社法務マニュアル』『裁判員制度と企業対応』『知らなかったでは済まされない!税理士事務所の集客・営業活動をめぐる法的トラブルQ&A』(すべて第一法規) 等、数々の執筆・講演を行い精力的に活躍中。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2023年3月号より


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