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形が輪郭を持つこと

最近、コロナ禍の影響で家に篭るようになってから、ただひたすらいろんな家がを見続けていた。調子が出ると、4本くらいぶっ通しで見たこともある。

それまではどちらかというと、本の虫だった。まあ過去形でもなくて、今も相変わらずいろんな本を興味あるものから片っ端から読んでいるのだが。もともとそれほど読むのが早い方ではないので、1日に300ページくらい読めれば上出来というかんじ。

それでも、本を読むペースが映画を見るペースを超えることはここ数年全くなかったのに、それが一変した。わたしの持論としては、原作を映画で表現しようとしてもなかなか小説の内容を超えることはできないと思っていた。

でも映画は映画で、やっぱり違うアプローチの仕方があるのかな、と思い始めた。文字の方が圧倒的に表現の幅が深いと思っているのだけど、一方で映画は文字に輪郭を持たせることができる。もちろんそれを表現する人が、原作を正しく理解すればということだけど。

吉田修さん著作による『横道世之介』。小説だと、舞台は1980年代でどこか芯のないフニャッとした印象の主人公が描かれる。側からみると、大学というモラトリアム時代に見事に取り込まれてしまったダメ人間なんだけど、何故だか周囲から不思議と人気がある、そんな人間。

映画だと、もう少しまともな人間に見える。高良健吾のどこか人の良さそうな雰囲気がまた映画の雰囲気とマッチしているのである。

特に大きな展開というのはないし、ちょっと小説の印象と比べると違うような気もするのだけど、このストーリー構成もありかなと思わせてくれる映画なのだ。また祥子役を演じた吉高由里子もかなり役にハマっていると思う。見終わった後、ふつふつとその良さが滲み出してきた。映画の色調も、好き。

もう一つ、思っていたよりもかなり良いな、と思ったのが『君の膵臓を食べたい』。この映画に関しては、かなり原作を忠実に再現している。でもよく見ていくと、主人公の心の動きがよく描かれていてよくある中高生が好きな展開にとどまっていない、というところがミソだと思う。

そういえば、タイトルからして人気が出始めた当初はちょっとホラーものはな、、と思って読むことを躊躇したことを思い出した。最後まで読んでみて、途中の伏線も含めてほう、と思ったのを覚えている。

映画は映画で、細かい伏線が張り巡らされている。特に、主人公「僕」の感情の変化にもかなり配慮されていて、原作と同等あるいは映像ならではの良さがにじみ出ている作品だと思った。

そんなふうに、最近映画をたくさんみることで、少しずつ今の自分の中でモヤモヤしている言葉や文字が以前よりも立体的な形を帯びてきている気がする。

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