岩崎大|生と死の哲学者

哲学者/大学教員/博士。みなさまに生や死について考えてもらうために活動中。難しい言葉を…

岩崎大|生と死の哲学者

哲学者/大学教員/博士。みなさまに生や死について考えてもらうために活動中。難しい言葉を使わず、なるべくふざけます。思考実験も創作します。哲学と死生観について考えるための入門書『スマホと哲学』(春風社)を出版しました。

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スマホも便利だけど、哲学も便利です(『スマホと哲学』著者インタビュー)

『スマホと哲学』という奇妙なタイトルの本がある。スマホについて語られるのはごく一部であるが、哲学というものを知れば知るほど、スマホを手放せない自分が、大事なものを見失ってしまっているのではないかと思えてくる。考えることの大事さについて、著者にインタビューした。 ──まず素朴な疑問として「哲学ってなに?」という疑問が多くの人にあると思います。  哲学にもいろんなジャンルがあって、世界の真実を知ろうとしたり、人間の意識の秘密を知ろうとしたり、正義や法律について考えたりもします

    • 質問する気で聴きなさい

      シャイにもほどがある小学生だった。 先生が「これ、わかる人いる?」と生徒に問いかける。 誰も答えない。私は答えがわかっていたが、手をあげない。あげられるわけがない。 不意に「岩崎くん、わかる?」と聞かれ、ムチで打たれたような衝撃が走る。 消え入りそうな声でなんとか答える。「その通り」と先生。 私は正解を答えたが、恥ずかしくて泣いていた。泣いている自分が恥ずかしくて、さらに泣いた。 時が経ち、私は大学院生になった。 4月の授業で指導教授は「岩崎くん、どう思う?」と私に問いかけ

      • プロの哲学者が「生きる意味」を問わない理由

        「職業は哲学者です」と自己紹介する。 謎の職業を聞かされ、戸惑いと好奇の混じった「へー」が返ってくる。 その惑いを引き受けて「大学で講義とかしてるんです」と補足する。 すると今度は、「すごい!教授なんだ!」と言われたりする。 「いや、教授ではないんです。教授って会社員でいえば部長みたいなもので、私なんか教授とは程遠いですよ・・・」と、興味のないだろう大学の構造を自虐的に説明してお互いがちょっと切なくなるのは嫌なので、 「まぁ、教員です」という曖昧な返事でごまかす。 ほかにも

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        • コスパ重視はコスパが悪い

          コストパフォーマンスというビジネス用語は、人を黙らせる説得力がある。効率、時短、節約は賢い。「コスパが悪い」ことはするべきではない、と。 やや強引だが、外出先でコーヒーを飲む際の諸要素を数値化してみる。 缶コーヒー:お店や自販機でいつでも安く飲める。 コンビニコーヒー:近所のコンビニで本格的なコーヒーを気軽に飲める。 スタバ:おシャレな空間で本格コーヒーを楽しめる。 バリスタ世界一のお店:こだわりの空間で最高の味を堪能できる。 もちろん、人によって味覚も財力も忙しさも住

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          どのレジが正解ですか?レジスター・ジャスティス問題(思考実験ラボ)

          宇多川さん(52歳、男性)は本屋のレジ前で一歩も動けなくなってしまいました。 目の前のレジには若くてキレイなアルバイトのお姉さん。 右隣には明るくて人なつっこそうなパートのおばちゃん。 左隣には店長らしき、仕事のできそうな同世代の男性。 いちばん奥には、研修中のバッチを下げて緊張している若いアルバイトのお兄さん。 どのレジも空いています。ではどのレジに行けばよいのでしょう? 他のお客さんが私の後ろに並びはじめました。誰か助けて! 部下の涙 宇多川さんが身動きをとれなくなっ

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          「彼氏が分裂しました」思考実験ラボ

          今井さんは困ってしまいました。 彼氏が分裂したのです。 ある日のデート中、身の丈ほどの大剣をもった黒い剣士が現われ、彼氏の浅野くんを左右真っ二つに切り裂いて去っていきました。 しかし、再生医療の研究をしている浅野くんの体は、すぐさまブヨブヨと活発に動き出しました。血が止まり、骨ができて、左右それぞれが元通りの浅野くんに再生したのです。こうして彼氏が分裂したのです。 今井さんは思いました。 「私がすぐ断面をくっつけてあげていたら、2人にはならなかったのかな・・・」。 しかし

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          「彼氏が分裂しました」思考実験ラボ

          笑うスマホ、笑われる脳ー『スマホ脳』の幸福を考える(2)

          ベストセラー『スマホ脳』から現代を哲学する第2段。 今回はスマホが現代人に何をもたらしたのかについて考えていきましょう。 現代というコント前回の話で大事だったのは、「数万年単位の生物としての進化と、日進月歩のテクノロジーの進展の時間スケールの違いがもたらす矛盾」。 つまり、脳はそう簡単に変化しないが、文明は飛躍的に変化するので、いままで生存のために脳がやっていたことが逆に生存を脅かしてしまう、ということでした。 たとえば食欲は成人病を、テクノロジーの欲求は環境問題を、コミュ

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          死なないためにスマホがあるー「スマホ脳」の幸福を考える⑴

          なぜスマホを使うのか? 便利だから? 人とつながりたいから? みんなが使っているからしかたなく? では、なんで便利や、人とのつながりや、人と同じがいいのでしょうか? スマホをテーマにして、少し立ち止まって考えてみましょう。 スマホを使うことについて、なんでなんでを続けてわかってくるのは、 「日々の生活を快適したい」という願い。 では、なんで日々の生活を快適にしたいのか? それは「死なないため」、つまり生存本能。 おおげさに聞こえるかもですが、実際、ホモ・サピエンスが誕

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          『鬼滅の刃』からはじめる哲学ー鬼舞辻無惨はGoogleである編ー

          『鬼滅の刃』をきっかけに哲学の世界を知ってもらうシリーズ第2弾。今回もまた鬼の話です。鬼は悲しい生き物ですが、そこから学ぶことは多いです。 前回は鬼ってそんなに悪くない、それどころかスーパーマンじゃんという話をしました。 今回はそんなスーパーマン達のボス。ウルトラスーパーマンである鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)について考えていきます。 ※この記事は『鬼滅の刃』全23巻の内容を含んでいます。ネタバレに注意してください。 パワハラ殺戮上司全ての鬼の生みの親であり、支配者でもあ

          『鬼滅の刃』からはじめる哲学ー鬼舞辻無惨はGoogleである編ー

          『鬼滅の刃』からはじめる哲学ー鬼っていう奴が鬼なんだ編ー

          「鬼」は西洋でいえば「悪魔」。善悪でいえば悪、ダークサイドだ。 しかし、鬼=悪と決めつけるのは哲学的にはよろしくない。 「鬼」という差別用語はやめて、「スーパーマン」と呼んでみよう。 『スーパーマン滅の刃』としてこの物語を再解釈してみよう。 ※この記事は『鬼滅の刃』全23巻の内容を含んでいます。ネタバレに注意してください。 スーパーマンの主な特徴 「鬼は老いない。食うために金も必要ない。病気にならない。死なない。何も失わない」(上弦の陸 堕姫) つまり、アンチエイジング

          『鬼滅の刃』からはじめる哲学ー鬼っていう奴が鬼なんだ編ー