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『鬼滅の刃』からはじめる哲学ー鬼舞辻無惨はGoogleである編ー

『鬼滅の刃』をきっかけに哲学の世界を知ってもらうシリーズ第2弾。今回もまた鬼の話です。鬼は悲しい生き物ですが、そこから学ぶことは多いです。

前回は鬼ってそんなに悪くない、それどころかスーパーマンじゃんという話をしました。
今回はそんなスーパーマン達のボス。ウルトラスーパーマンである鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)について考えていきます。

※この記事は『鬼滅の刃』全23巻の内容を含んでいます。ネタバレに注意してください。


パワハラ殺戮上司

全ての鬼の生みの親であり、支配者でもある無惨。
知能も高く、戦闘力も圧倒的。性格は名前の通り残酷で、幹部達を集めての「パワハラ会議」が話題になりました。
逆らうどころか提案することも許されません。

歴史を紐解けば、現実にもパワハラ殺戮上司はいます。暴君ってやつですね。
ただ、原理的に反抗ができないほどの圧倒的な力をもった人間はいるのか。
そう考えてみたら、近くにいましたね。Googleはほぼ鬼舞辻無惨です。

Googleは企業なので人間ではないですが、法人ではあります。
人間の心をもたない人間。現代の鬼は法人なのかもしれません。

鬼舞辻無惨とGoogleの共通点

無惨:人間を鬼にして、スーパーな能力を与える。
これは前回の記事で説明しました。
Google:サービスというかたちで、人間にスーパーな能力を与える。
主に膨大な情報に即時アクセスできるという能力です。
ググればだいたいのことはわかります。アリストテレスもびっくりです。
無惨:鬼を自分の目的のために利用する。
鬼をつくることで、完全な存在になることと、鬼殺隊の壊滅という目的達成を狙っています。鬼はこれに逆らわないようにできているようです。
Google:サービス利用者や企業から利益を得る。
経済活動としてサービスの対価を得ます。利用者も他企業も文句はありません。
無惨:鬼から様々な情報を収集&提供する。
目的達成のためです。鬼達に情報をシェアすることもあります。
Google:利用者から様々な情報を収集&提供する。
ビッグデータは経済的利益をもたらします。無料の検索サービスの対価として、利用者はある程度の情報提供を承認しています。
無惨:人間を吸収して強くなる。
食べるほどに強くなる。もしくは鬼にしてチームビルディングする。
Google:人間を吸収して事業拡大する。
よい人材を集めるだけでなく、よい法人も吸収合併します。代表的なのがYouTubeですね。

ひとまずこんなところで。
もちろん無惨とGoogleで違うところもあります。
先日GoogleのAI倫理研究者の黒人女性が解雇されましたが、思想に反する人間でもさすがに殺されはしません。
それに、現実にはGAFAMやYahoo!、Twitterといったライバル法人鬼もいるので、完全な独裁ではありません。なので、Googleとの関係を断ち切ることもできます。
でも事実として、みんなGoogleを使っています。そこが重要。

大きな違いと大きな共通点

大きな違いとして、鬼とは違い、私たちはGoogleに支配されている感覚はありません。
しかし、大きな共通点として、どちらも反抗しがたい圧倒的な力をもっています。
力の使い方が違うだけで、やることは同じです。
私たちはGoogleというサービスを自主的に利用しています。
支配どころか、Googleが与えてくれる膨大な情報と可能性は、私たちをより自由にしてくれます。そこが魅力なんです。

でもちょっと待ってください。
Googleが提供するのは、Googleのフィルターのかかった情報だということに注意しましょう。
勉強熱心なGoogleは、あなたが喜ぶ情報を探して選んでくれているわけです。
それは逆にいえば、あなたが好きになるかもしれないけど、Googleがおすすめ(レコメンド)しない情報にはアクセス不可能だということです。

ちなみに私の記事「鬼滅の刃からはじめる哲学」は、「鬼滅の刃 哲学」とGoogleで検索しても、現時点で10ページ目にも出てきません。Googleの世界では私の記事は誰にもおすすめできない無価値なもののようです。悲しいです。私を見捨てないでください。

Win-Winだから反抗できない

Googleはあなたを喜ばせたいのであって、無惨のように支配したいわけではないでしょう。
しかし、喜ばせるコツを理解したGoogleは、あなたをチョロい客だと思っているかもしれません。
圧倒的な情報と可能性を示し、本人に自由に選ばせているようでも、実は示し方を工夫することで、都合のよいものを選ばせる。マジシャンがよく使う技です。

これは支配ではなく、操作です。
ただしこの操作は、お客様を喜ばせるためでもあります。つまりGoogleに操作されることは喜びをもたらす。win-winなんです。
(Googleのお客様にはスポンサーも入るので三者の利害は複雑ですが)
喜びを与えてくれるのだから、反抗する気にもなりません。
無邪気な私たちは喜んでGoogleに操作されます。やめられないとまらない。

Googleは金儲けのために人間を利用していると文句を言いたいわけではありません。
無惨は太陽の光を克服することで完全体になることを目的としていましたが、
Googleも不老不死のテクノロジーを開発する会社を設立したりしています。
金儲けは未来の理想のための手段なのかもしれません。

暴力か、救済か?

無惨もGoogleも、理想のために人間に能力を与えます。そして無惨は「命令」で、Googleは「喜び」で人を動かします。どちらも反抗しようと思えません。
あなたがその理想を善として共有するなら、無惨は偉大な上司で、Googleは頼もしい仲間です。夢を叶えてくれる救済者かもしれません。
そうでないなら、無惨は暴君で、Googleは詐欺師です。

Googleはあなたを喜ばせながら、あなたの可能性をひっそりと奪っているのかもしれません。そこをちょっと疑ってみてもいいかもしれません。
鬼舞辻無惨ほどの圧倒的な力がない分、やり方が巧妙です。だまされている人は、無惨様に褒められて血を分け与えられた十二鬼月のような万能感さえあるでしょう。
まぁ、だまされていることに気づかなければ幸せな人生なのですが。

(ちなみに私の記事を「陰謀」によって検索から除外するGoogleは私にとって悪です(笑)。逃げずに戦います。同じ理由でYahoo!もTwitterも悪です。もっとがんばります)


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