ロシアのウクライナ侵攻について
ロシア軍勢と欧米軍勢の対立が激しくなってきています。とくに意識したいのが、「地政学的メリットの優先」です。日本においては、まず条約を遵守しようとの意識が強いですが、このような意識は世界から見れば少数派です。自国の軍事・経済面について、権益を守るためには、「地政学的メリット」を優先し、行動します。
そもそも、海に囲まれた島国である日本と、国境に囲まれたユーラシア大陸に存在する他国においては、その「地政学的リスク」の違いが顕著です。
いまだ帝国主義であるロシアは、自国の領土拡大に関して、「地政学的メリット」を考慮しながら画策しています。
自国の権益の拡大のために、ロシアは広大な土地を利用して、さまざまな進出ルートを見出しています。
ロシアは北海道よりも北方に位置しており、不凍港が少ないことがポイントとして挙げられます。凍る港は、他国からの進出を防御する壁のような役割を担っているのも確かではありますが、攻撃の面から言えばかなり不自由なので、どうにかして上記の南下ルートを駆使して、凍らない港を確保していきたい、という思惑があります。そもそも、ランドパワーを保持するロシアの気概は、「攻撃は最大の防御にある」と言うことができます。
また、世界最大の面積と世界最大の隣国をもつロシアは、常に多くの国境線に目を張らなければなりません。その反面、経済力はアメリカ・中国・日本などには及ばないほどのもので、弱いと言わざるを得ません。そのため、防御線となる緩衝国を押さえる必要があります。その緩衝国には、ベラルーシ・ウクライナ・ジョージアなどがありますが、近年問題になっていたのが、クリミア併合などで国際的に批判された事案であり、これはウクライナに関連するものです。
あくまでもロシアは、冷戦後に失った「元自国」の領土を、再度取り返しているだけなのだという意識、つまり、「本来は自分たちのものだったからそれを取り返すのは当然であるし返還するのが当然だろう」という、国土回復的な気概を見て取れます。
クリミア半島の掌握は、2014年、ウクライナで親欧米派勢力により親ロシア派政権が打倒されたことを受け、黒海に面したウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合したことが発端です。これには、「黒海のルート」の監視・確保が、思惑としてあります。クリミア半島を掌握し、大西洋へ進出するためのルートの監視を実現したかった、ということです。その後、ロシアの黒海での監視活動は活発化しています。
冷戦後初の「武力行使による領土変更」として国際的に非難されはしましたが、ヨーロッパ連合としてはロシアから大量の資源を輸入していることもあり、強く主張できないのが現状で、またアメリカは非難をしつつも、その情勢を危惧している、というような姿勢を取っています。
ロシアの進出ルートには、「北極海ルート」もあります。これは、地政学的には革命をもたらしたとも言われています。しかし皮肉なことに、環境問題として課題に挙げられてる地球温暖化による海氷面積の減少が、このルートの足掛かりとなっています。以下のページが、視覚的に分かりやすいです。
北極圏は、資源が豊富であり、石油や天然ガスの宝庫です。この北極海ルートには日本や中国なども共同し開発しているという現実があります。「一帯一路構想」を練る中国は、これを氷上のシルクロードと呼んで手を伸ばし、自国の影響力拡大を画策しています。「一帯」について言えば、台湾または尖閣諸島なども中国にとって重要な場所であり、日本も注視せねばなりません。
また、ロシアは、この北極海ルートのために、他国からの侵略において盾となる「北方領土」を確保しておきたい、と考えています。(国際法では日本の領土)
ロシアの最西端で起きたウクライナとの衝突。また、ロシアの最東端にある北方領土問題を有した日本。課題や問題などは確かに異なっているでしょうが、今の状況が対岸の火事ではないことを常に意識し、問題視する必要があるでしょう。
レーニンやゴルバチョフ、エリツィンなどのロシア歴代大統領の歴史を俯瞰して分かることは、ロシアは共産主義でも資本主義でも失敗している、ということ。この点を鑑みて、プーチンは、当たり障りのないイデオロギーは放棄し、強いリーダーシップをもとに、地政学的戦略を行使しています。
その戦略で考慮されるのは、「影響力の拡大」と「領土奪還」です。ソビエト連邦時には現ロシア領土に加えて多数の国が含まれており、そこにはウクライナも含まれていました。これは「領土奪還」的視点でのウクライナ情勢を俯瞰できます。また、「影響力の拡大」においては、日本の北方領土が、北極海ルート進出を現実にするためのキーとなります。
プーチンの名言を集めたサイトがありました。のぞいてみるといいかもしれません。
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