リワークのジレンマ
自分のリワーク先は、お世辞にも人数が多いとは言えない。
それがいいなと思うときもあれば、もうちょっと人数が多い方が楽しいなと思うときもある。
少人数なら、「自分が話す時間」が増えるし、スタッフの方も一人一人に目が行きやすい。
一方で、グループ分けが必要なプログラムは実施することができない。
リワーク先を選定する前、いろいろなところに見学に行った。
「リワーク必須」とEAPに言われた直後から、近くて通えそうなクリニックや施設を、調べて電話をかけまくった。
最終的に、5ヶ所は見学や説明会に行ったと思う。
まぁ、結局は「見学不可」のクリニックに行くことになったのだが。
自分が見学した場所は、どこも今のリワーク先のクリニックの参加人数よりも多かった。
20人くらいはいたと思う。
「見学可能」に依るところが大きいのだろうか。
一方で、今のリワーク先は10人にも満たない。
少人数のメリット/デメリットは冒頭に書いた通りである。
自分は「もっと参加者が増えればいいけど…」というジレンマに似た感情を抱いていた。
参加者が増えれば、リワーク・デイケアにも活気が出てくるが、一方でメンタル疾患の多さを示していることになるので、社会的には喜べるものではない。
「病気を根絶するために薬を作っているけど、病気がなくなったら薬が売れなくなる」という、製薬会社のようなジレンマだ。
それに、今のリワーク先に通い続けると、なぜここが「見学不可」なのか、なんとなく見えてくる。
ここでは「見聞きしたことは外に漏らさない」という、(性善説かもしれないが)ルールがある。
そういうルールを守るかどうかわからない見学者を入れるのは、確かにリスクが高い。
また、事情はどうあれ部外者が定期的に入ってくる環境だと、患者も気軽にいろいろなことを話せなくなってしまう。
実際、患者ではなくメンタル系のコンサルタントが見学を申し入れたことがあったが、スタッフの方の配慮で、患者側が萎縮しないように調整をしてくださった。
こういった安心感を醸成することが、良いリワーク環境の提供につながるのだろう。
しかしながら、それは外部の目に触れさせない空間を作ることにも繋がる。
実際、今のリワーク先のwebページには、患者のリワーク体験談は乗っておらず、「プログラム概要とリワークの効果」が載っている程度である。
したがって、リワーク先を選定する患者は、「どういう場所なのだろう」というある程度の不安感を持って、クリニックのドアを叩くことになる。
もう一つ。
転院必須というのも、今のリワーク先の良いところだと思う。
リワークスタッフと主治医がスクラムを組んで患者を診る。
そうすることで、情報を集約することができ、「何回も診察を受ける」という患者側の負担を減らすことができるのである。
ところが、見学もできない場所に転院してリワークを受けるのは、結構な壁を感じる。
自分もはじめ、EAPに今のクリニックをオススメされたのだが、見学もできず転院が必須だということから、真っ先に候補地から除外した。
「転院必須」は、通い始めれば理解できるごもっともな理由なのだが、選定している段階ではそのメリットになかなか気付けない。
本当はもっと患者を増やしたいが、いろいろな事情から情報公開を制限せざるを得ないし、しかも患者が増えることは社会的に喜ばしいことではない。
しっかりしたリワークを提供するクリニックの、永遠のジレンマかもしれない。
(リワークに通ってみて思ったことは、Googleの口コミはあまりアテにならないということだ。そういう悪評を払拭する意味でも、リアルな中身を知っている自分が情報を提供して困っている人の一助になりたいのだが、先のルールがあるし、そもそも人数が少なくて身バレする可能性が高く、やはり自分もクリニックのようなジレンマを抱えているのである。)
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