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<後編> ワーキングメモリってなんだろう? 〜 日本テレビ 「世界一受けたい授業」 でのコメントを深掘り!

みなさまごきげんよう。
HAPPY NEUROZINEの中の人です。

このnote「HAPPY NEUROZINE」は、世界最先端の脳の研究を私たちの生活に応用しながら、人間をより深く理解しようと活動する会社 DAncing Einstein の広報 兼 脳のおもしろ情報を発信するメディアでございます。


さてさて、前回、3月11日(土)に放送された日本テレビ様のゴールデン番組「世界一受けたい授業」に出させていただいたコメントを受けて、さらに理解を深めるため、当社代表の青砥に事情聴取を行いました。

少し時間が空いてしまいましたが、今回はこちらの続きを書いていこうと思います。

わたくしと一緒に脳筋トレーニングを行いたい方、ご準備はよろしおすか?
(※お気軽に読んでくださいまし)



忙しい人のための前回のあらすじ


ことの発端は、番組冒頭の脳活性化クイズ「アハチェンジ」でした…。

↓3月25日(土)19:55まで視聴可能!(※終了しました)


3/11放送 「世界一受けたい授業」 より

画面に映し出されたのは、女性と子どもが写った写真A。
写真Aをよ〜く見て覚えていただき、その後、グレーの画面が現れ、Aの一部分だけが変わった写真Bに切り替わります。
さぁ、どこが変わっているかわかりますか?

…というクイズ。
これが意外と気付けない!

このとき、脳の中ではどうなってんの?ということについて、青砥から以下のコメントを出させていただきました。

写真と写真の間にグレーが入ることで、脳にある、一時的に記憶を活動状態にする「ワーキングメモリ」が機能しにくくなるので、変化に気づきにくくなるんです。
しかし、この変化に気づくと、観察力にまつわる脳の神経細胞の活動の活性化が期待できます。

青砥瑞人のコメント(2023年3月11日OA日本テレビ「世界一受けたい授業」より)


ははーん、なるほ・・・・・ど?
(わかったようなわかってないような、いややっぱりわかっていない…)

きっと、どういうことか理解できなかった視聴者も多いはず!彼らの声を青砥に届けて、ことの詳細を明らかにしなければ!
という正義感をたぎらせたわたくしは、青砥に証人尋問を請求。

聞きなじみのない「ワーキングメモリ」という脳のしくみについて、現在の神経科学的な立場を示したところで・・・さぁ!本日の本題でございます!

ワーキングメモリについて詳しく知りたい方は、前回の記事をご覧ください♪

↓再掲

(忙しい人のためのまとめではなかったのか・・・・・)



登場人物


青砥 瑞人 株式会社DAncing Einstein CEO
応用神経科学者。DAncing Einstein代表。小中高は野球漬け。高校は中退。しかし、脳の不思議さに誘引され米国大学UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の神経科学学部を飛び級卒業。神経科学を心理学や教育学などとコネクトし、人の理解を深め、その理論を応用、また実際の教育現場や企業とコネクトし、人の成長やWell-beingのヒントを与えられたらと、2014年にDAncing Einsteinを創設。対象は、未就学児童から大手役員まで多様。空間デザイン、アート、健康、スポーツ、文化づくりと、神経科学の知見を応用し、垣根を超えた活動を展開している。また、AI技術も駆使し、NeuroEdTech/NeuroHRTechという新分野も開拓。同分野にて、いくつもの特許を保有する「ニューロベース発明家」の顔ももつ。近年では、海外や国連関連のイベントでの講演活動に加え、大手企業やNPO、教育機関と連携、提携し、新しい学び方、生き方、文化づくりに携わる。 著書:『HAPPY STRESS ストレスがあなたの脳を進化させる』(SBクリエイティブ)、『4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中』(KADOKAWA)、『BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方』(SBクリエイティブ)など



聞き手:中の人
DAncing Einsteinの様子を独自の視点で発信するnote「HAPPY NEUROZINE」の中の人。まだまだ脳初心者のため、代表の青砥や他のスタッフたちを捕まえてはインタビューと称した自身の脳学びtimeをつくることに全力を注ぎ、HAPPY NEUROZINEでアウトプットしてやろうという魂胆。
画像のパンダさんは仮の姿(by. Zoomさん)。次回お目にかかる際はまた違った風貌かもしれない。絶賛キャラ迷子中。



Wideに注意を向けるか、Narrowに注意を向けるか


中の人:ワーキングメモリがなんたるかがわかったところで、本題ですね。短期記憶を保持するワーキングメモリが機能しにくくなることで、変化に気づきにくくなる、とのことですが、

青砥:はい。

中の人:これちょっと納得できない!だってめちゃめちゃ真剣に(世界一受けたい授業の)クイズの出題を見ていたんですよ!?なぜ気付けないのワタクシ!SHOCKED!!!

青砥:うんうん。じゃあ実際にクイズの映像を見ていたとき、どんな感じで写真を見ていましたか?

中の人:えーっと・・・・どこが変わるかわからないから、まずはとにかく引いて全体を見るようにしてみたんですけど、まぁわからず・・・。2回目はキョロキョロと視線を移動してはみたものの、こんなに気付けないことある!?って感じでした(笑)。

青砥:そうなんです。あのクイズのように初めての写真を見るとき、だいたいの人は、全体に広く注意を向けているんですよ。「4Focus」で解説しているアテンション(注意)の仕組みは覚えている?

中の人:はい!意識が内側に向いているか外側に向いているか、広いか狭いか、という4つの集中のモードのことですよね。


「4 Focus 脳が冴えわたる4つの集中」 青砥瑞人 著(2021年)/KADOKAWA
BRAIN DRIVEN」に続く青砥2冊目の著書。集中状態というのは、一般的にイメージされる「一点集中」的なものだけではなく、実は4つの集中力があるんです!ということを、脳の観点からその仕組みを知り、丁寧に紐解いていく一冊。DAEによる実際の講座の教科書的に使われることもあります。即日実践できる簡単ワーク付き!ぜひご一読ください♪


人間のもつ集中力(注意を向ける方向)は、大きく分けて4つあります。というお話

(右上から時計回りに)1.外に広く:全体視して直感的に動ける、総合的な意思決定を導くモード/2.外に狭く:一般的にイメージされる集中力で、仕事や勉強に打ち込んでいるモード/3.内に狭く:1つの課題に対して思考し続けている状態で、課題解決型の集中力。…4.内に広く:意識を離れ、ありのままの脳が自由に脳内の情報を展開させる、無意識に近い状態で考えを巡らせている状態。


青砥:そうです。人間のアテンションの仕組みとして、広く注意を向けるWideと、狭く注意を向けるNarrowがあります。先のクイズでは、Wideを使って見ていたんですね。どこかに焦点を当てるのではなく、「どこを見たらいいんだろう?」「なにー?どこどこ!?」という感じで、いろんなところをうわーっと見ているわけです。

中の人:そう言われると、私の見方はまさにそれですね。

青砥:ただ、もし写真に写った建物が自分の家だったりとか見覚えのあるものだったとしたら、きっと変化に気づくはず。

中の人:あ、それがワーキングメモリとの関係性ということですね!ベースに「自分の住んでる家」という長期記憶があるから、短い記憶を保持していられるという。

青砥:そうそう。けれどクイズの写真は今まで見たこともない、もともと持っていない情報だよね。その状態でWideに全体を見ても、入ってくるそれぞれの情報は薄まってしまい、情報を記憶として保持できる時間も極めて短くなる。だから家の窓の情報だったり、人の情報だったり、細かい情報を取ることがなかなかできないんです。

中の人:なるほど、そういうことですか。(見ているようで見ていないとはこういうことか…)

青砥:それともうひとつ。たとえば、写真と写真の間に何も挟まずにぱっぱっと画面が切り替わったら、きっと違いに気づくはずだよね。

中の人:クイズの答えではそのように切り替わっていて、違いがすごくわかりやすいんですよね。あれはなぜなんでしょう?

青砥:なぜかというと、我々の脳は「差分」に反応しているからです。

中の人:つまり、間に別のものが入ってきてしまうことで、前後を直に比較できない=差分を認識できないということですね。

青砥:そういうことです。まとめると、①情報をWideに見ていることでワーキングメモリにも薄くて短い記憶しか残らないということに加えて、②比較対象の間に別のものが入ってしまうことによって、脳の中で情報の差分が生み出されない、という状態になっています。

中の人:自分自身の経験を振り返ると、あれはそういうことだったのか!と納得することばかりです。


変化に気づく注意の向け方


中の人:番組のコメントでは、「変化に気づくと、観察力にまつわる脳の神経細胞の活動の活性化が期待できる」とお話しされていますよね。この変化に気づくことで、具体的にどのように観察力が養われるのでしょうか?また「気づく」ために、どういうところを意識して見るといいでしょうか?

青砥:まず、気づくためのポイントという観点でお話しすると、なんとなく見るから記憶に残らず気づけないわけだから、目の前にある情報に対してなんとなく見ないということが大事です。

中の人:アテンションの向き方としては、Wideではなく、Narrowを使うということですね。

青砥:はい。「内側に狭く」の注意を使う方法だね。具体的には、情報の意味づけをしていくことが一番やりやすいと思います。
たとえば、この建物は2階建てで、窓は何個あるね。この人は今笑っているね、といった感じで。限られた時間の中で、いろいろなところに注意を傾けては即座に意味づけをし、情報を自分の中にストックするための引き出しをつくるような作業をやっていきます。その一連の作業を繰り返すことが、自分にとって新しい情報と出会ったときの観察力に通じていくところですね。

中の人:初めての業務にてんやわんやしている私が今とっても欲している力ですね!注意を向けてラベリングっと…..(メモメモ)

青砥:ただね、ビジネスだったり、自分が精通して何かをやり続けている領域において大事なことは、Wideのアテンションを使って物事を見ることなんです。

中の人:(イマメモシタコトトギャクノコトイッテル…)

青砥:たとえば陶芸業界の方が、良い作品とそうではない作品の目利きができるのは、どうしてか?それはたくさんの作品を見て、作成して、という経験を培ったからできることですよね。つまり、長期記憶がベースにあって、いろいろな差分を生むことによって、良し悪しを感じることができるようになっているんです。
日常生活、自分が培ってきた記憶のベースと照合して、「あれ?」っていう違いを見つけていくこと。それは新しい発見につながることもあれば、何らかのエラーに気づくこともできる。ちょっとおかしいなと思うところはケアすることもできるよね。そのセンサーがとても大事なんです。

中の人:センサーの大切さは身に沁みて感じます。(昨日睡眠時間少なめだったし疲れがたまってるから、今日飲み会に誘われているけど、飲んだら具合悪くなりそうな予感がするから烏龍茶で過ごそう。みたいな感じだろうか・・・・)

青砥:我々の脳は、何か新しいものの中から新しい気づきを得ることとと、よく知っているものの中から新しさを見出すことと、これらはまた違った脳機能を使っているっていうことが知られています。ゆえに、Narrowに注意を傾けながらひとつずつ意味づけをしていく力も、Wideに全体視して違和感や違いを見つける力も、どちらも必要で大切なアテンションの使い方です。

中の人:場面場面でWideを使うかNarrowを使うかを判断し、またその中から生まれる差分、「気づき」というものをしっかりと拾い上げられる意識を持ちたいなと思いました。
瑞人さん、ありがとうございました!!!




おまけ


前編・後編にわたって、私たちの記憶のしくみ、そして変化に気づくことの重要性を教えていただきました。
わたくしといたしましては、観察する対象がまさか自分の内側にあるとは!!!という驚きとともに、とてもよき学びをいただいたように思います。

センサーを大事に、自分の中の違和感に気づいていきたいところです!


というわけで、
今回の記事は写真が少なくて、みなさん文字疲れしてませんか?大丈夫ですか!?

そんなみなさんに口取り代わりとして、素敵なお写真とともにごきげんよう☆






注)瞼を固定した際の物体の見え方についての実験を説明している青砥瑞人氏



(わたしのセンサーはどこに向かっているのだろうか…)






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我々DAncing Einsteinは、脳の不思議・おもしろさをより多くの方々に知っていただきたいと思い、いろいろな活動をさせていただいております♪

「脳、なんだかおもしろそう…」

そう思っていただいた方!
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脳にまつわる不思議、疑問、なんでも結構ですので、コメントいただけますと、中の人のわたくしめが飛び上がって喜びます。ついでに内部共有してしっかりフィードバックさせていただきます!(ついでかーいw)


最後までお読みいただきありがとうございます!


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