ポケットに書を

「ねぇ肺が良ければ走るということをしてみたいわ」物語を取り込んでいく
「俺はさぁ、煙草をやめたのは二十歳なんだ」と痕(やけど)を見せて君は誇る
文庫本をポケットに入れ「100万だと?悪友にしては安いじゃないか(笑)」
肺胞は怠惰の記憶を残していて「今じゃ息子が隠れながら吸っているよ」と
冗談と受け取って「じゃあこれを息子さんに」とーー
漱石の「こころ」を渡す「先生」のように人は罪人なのだ

反歌

夏引きの若さを熟した学生の陰 愛おしい岩波の赤
怠惰からタッソをつまみ読む否定するだけの過去を我は建てたい
雁が音は慕情を捨てて天(あま)立てる/男色の師の玩具の一つ

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