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現代長歌

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「現代長歌」
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記事一覧

時と場は物語る

 立ち続けている記録する者。
 そして、切り取られた会話を、詩へと昇華する。
 この詩人は、客観性を重視している。
 だから、時間と場所を特定して、そこで起こった「音」を記録し続けている。

 しかし、しかしだ。
 この詩人の主観性も感じうる。
 つまり、「音」を書き起こす段階で
 詩人の取捨選択が行われている。
 それは、もはや街の音から詩人の言葉へ昇華されているのだ。
 しかも、この詩人のコン

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Hotel California

Smith 灯りは、この電球だけかね?
Porter えぇ、当ホテルに窓はございません
Smith 窓がない? まぁ砂に汚れるよりいいか
Porter えぇ、皆様そうおっしゃいます。砂がひどい、と
Smith 食事は?
Porter パンと簡単な魚ばかり――
Smith 多くを求めてはいけないな
Porter えぇ、皆様そうおっしゃいます。魚は貴重だ、と
      反歌
窓のない部屋でけむりと砂

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知らない町

駅から少し離れて中華屋は外から見えないように赤い

知らない町の知らないオブジェきっと昔 文化に金をかけれた時代の

人なんて駅舎にもいないタクシーの運転手さえ隠れて眠る

タバコやめたタバコの香り思い出すやることがなければ命を減らす

知らない町の知らない俺の掌 春と名付けたアスファルトの砂

パチンコやラブホテルの外壁廃れ猫も鳴かない前世紀末

駅、それは二つを結ぶアポカリプス ホテルにギデオ

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芝生は刈り均らされている

so much depends / upon
a red wheel / barrow
glazed with rain / water
beside the white / chickens【W.C.Williams】
――舌を噛む、味のしない唾液、意味のない時間
  目をかく、枯れてしまった涙、こみ上げる憎悪
  爪を切る、来ない恋人、遠のいた追いかける愛
  身体を洗う、乳の匂いをした子、死

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覆された神論

画家でなく詩人であって少しこころが弱くてよかった タクシーを止める

陰謀説ならどれだけよかったか ありのままの自分を殺す年月をおもう

祈られるのがむずがゆくてあくびする 俺にはそんな価値すらもない

きっと幾つもの連絡と意向と独断と哀れみ 死ぬには易しと理由を並べる

死の谷のホームは閉ざされたぶん地上では自己肯定している

いいワイン開けてもいいか? ほらそうだ、地上に上る前だってのに

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ミドルバース

 このブログの読者は、かつて、ブログ主が、「ミドルバース」と言っていたことを覚えているだろうか。
 未来二月号「吠える」は、そのミドルバース宣言を作品化したものである。
 改めて、ミドルバースとは何か。と言えば、
 言葉遣いはライトバースのように軽いが、過去の作品を引用することで意味上の重さを出すことを意味していた。
 それで、だ。

 「吠える」の解説をしなければならない。
 まず、すぐ分かると

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韻律について

 未来新年会記だが、
 加藤治郎さんの読みを聞いたのが初めてで、意外と遠くを見ている読みなんだなぁと思った。
 ふつーに読んだらそこまで、と思うが読み込みもまた想像力だから作家性を感じた。
 韻律が大切だ、と言っていたが、私は拍数よりイメージ伝達を重要視するから質問してみたかったが、

 お話しする機会はなかった。
 私は、破調が面白いと思って作歌を始めたタチだから韻律は崩されて意識されるという深

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吠える

犬 悲しいんじゃない、夜が我が身に重いだけだ
竹 一面の竹、竹、竹。が、嵐を呼ぶ
月 地にはないものを私たちは抱え持っている
HOWL――ギンズバーグのビートに乗って
夜 戻らない日々を想う、舌、耳、陰茎
煙 煙草をやめたのは命に抵抗しようと思ったから
  酒をやめられないのは空が蒼い幕に覆われているから
我 悲しいんじゃない、空が我が身にあまりに重いだけだ
    反歌
一枚を攫っていった鳥たち

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異化効果

なぜ私は、「異化効果」をすんなり受け入れられたか?
それはテレビドラマにあると気がついた
確かにアリストテレスの同化のカタルシスは分かる
しかし、それ以上に「異化効果」の方がいいと言う美意識は
テレビドラマにあると思う。
テレビドラマは一番いいところでCMを入れなければならない
それは、
ドラマから現実に引き戻される、という作業が必要である。

CMはCMで物語があるが
本筋のドラマとは関係がない

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忘れた頃に

 この記事によって、様々な人から見たよーって言ってもらえた。
 歌集を出して良かった。
 そして、今、押し進めてる「新しい形式の長歌」を当たり前にする。
 それが、朝日新聞に見つけてもらった報いにしたい。

 短歌ブームから長歌再発見までつなげたい!