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遺言と法定遺留分の関係は・・

テレビドラマでよく目にするのは、遺言ですべての財産を特定の者(受遺言者)に贈与するというような内容が多く、しかも法定相続人がいるにもかかわらずすべての財産を相続しているような内容のドラマなのだ。

えっ・・・それってホント!

視聴者に誤解を与えるのではないか?と思い、今回は「遺言贈与と法定相続人の遺留分」について、記すこととした。


|法定遺留分とは

法定遺留分とは、法律で定められた法定相続人に最低限保障される遺産の取得分のことをいう。

遺留分があるのは配偶者、子供、親(祖父母)が法定相続人となる場合であり、兄弟姉妹が法定相続人になる場合に遺留分はない。

遺留分については、もらえる人やその割合は法律よって決められているのだ。
遺留分の割合は、下記のとおり。

イメージ:筆者作成

|遺言相続
遺言を書いておけば自分の希望どおりに遺産相続させることができるが、法定相続人がいる場合には「すべて」ということはかなり難しいと思った方がよい。

つまり遺言を作成しても法定相続人の遺留分を「ゼロ」にすることはできないのだ。

もちろん法定相続人も遺言書記載の内容を容認すれば、遺言通りに非遺言者が全財産を相続することは可能だ。

そのため、遺留分を侵害する内容の遺言を書くと、後日、相続開始の際にトラブルになり「遺留分侵害額請求」される可能性が残るのだ。

相続トラブルを避けるために遺言書を作成する場合には、遺留分対策をしておかないと相続発生後に思わぬトラブルに発展する恐れもあるので要注意。

|遺留分侵害額請求

遺言により法定の遺留分が侵害されたとき、例えば遺言で「全財産を内縁の妻Aに相続させる」と記された場合、本来の妻子は法定の遺留分がもらえなくなることになり、法律上の相続遺留分を侵害されたことになる。

そこで相続人は侵害者へ遺留分の取り戻すための請求をすることができる。これを「遺留分侵害額請求」という。

一方遺言人からすると、せっかく遺言によって遺産を特定のAに残したつもりでも、遺留分侵害額請求がされるようなトラブルに巻き込まれることになる。

|遺言と遺留分の関係

前記のように、遺言を作成しても法定相続人が遺留分を主張する権利を奪うことはできない。

そのため、遺言の内容が遺留分を侵害している場合には「遺留分侵害額請求」を行使される場合があり、遺言などで遺産を多く受け取った人物は遺留分相当額の金銭を支払わなければならなくなるのだ。

とはいえ、遺留分侵害額請求をするかどうかは、侵害を受けた人の自由ということになる。

すなわち、遺言者本人の意思を尊重し、遺留分を侵害されても請求しない人も世の中にはたくさんいるのだ。

|遺留分を侵害する遺言書とは

これまで説明したように遺言書の内容が遺留分を侵害していたとしても、遺言書の内容そのものが無効になるわけではないのだ。
あくまでも、遺留分侵害額請求をされた場合に、遺言で遺産を受け取った人が遺留分相当額の金銭を支払わなければならないということなのだ。

|遺留分を侵害する遺言の事例

〇 すべての遺産を特定の相続人に遺す遺言
例えば、3人の子どもが法定相続人になるにもかかわらず「すべての遺産を長男へ」という遺言を書いたら他の子供たちの遺留分を侵害することになる。

〇 すべての遺産を相続人以外の第三者に遺す遺言
例えば、愛人のいる人が「すべての遺産を愛人に残す」という遺言を書くと、妻や子どもの遺留分を侵害することになる。

〇 著しく不公平な遺言
例えば、複数の子どもがいて、特定の子どもの取得分を多くして他の子どもの取得分を少なくした場合にも遺留分侵害となる可能性がある。

この場合、遺留分侵害された子どもは侵害された限度で侵害者に遺留分の返還を求めることができる。

|遺言が遺留分を侵害していたときの対処法

遺言書が自分の遺留分を侵害していたときの対処法を紹介する。
これまで記載したように、遺言書の内容が遺留分を無視していた場合に、遺留分侵害額請求を行うことが認められている。

具体的には、以下の流れで遺産を多く受け取った人物に対し、遺留分侵害額請求を行うと良い。

① 相続人と財産を調査する
まずは「相続人は誰」で「遺産はどのくらいあるのか」を調査する。
   ↓
② 遺留分侵害額請求の通知を行う
遺留分請求するという意思表示を相手方(侵害している人)に行う。
通知方法について特に決まりはないが、通知したことの証拠が残る「内容証明郵便」を利用するのがベストである。
   
なお、遺留分侵害額請求権には「期間制限」があるので注意が必要。時効は相手方に遺留分侵害額請求をしたら、ストップするが、除斥期間は、時効のように請求行為があってもストップできないので要注意だ。

③ 返還額や返済期限について話し合う
返還額や返済期限について当事者間で話し合い和解する。
最終的に、双方が合意したら遺留分返還に関する合意書を作成し、後にトラブルを残さないようにきちんと支払をすませて解決。

④ 遺留分侵害額請求の調停や訴訟を検討する
相手方との話し合いがまとまらない場合には、遺留分侵害額請求の調停や訴訟を行う。

調停とは、裁判官や調停委員などの第三者に関与してもらい、話し合いをすすめる手続きである。
訴訟とは、裁判所に強制的に判断してもらう手続き方法である。

イメージ:筆者撮影

相続トラブルを回避する目的で遺言書を作成しても、遺留分トラブルに発展しては元も子もありませんね。

|まとめ

遺留分を払わないとどうなるの?
遺留分を支払いたくないからと無視をしていると、相手から裁判を起こされる可能性があるのだ。

裁判で支払いを命じる判決が出ても支払わないでいると、最悪の場合、財産や給与を差し押さえられることにもなるのだ。

いずれにしても、ドラマのように、法定相続人がいるにも関わらず、遺言により愛人等第三者が全財産を相続してしまう、法定相続人の遺留分侵害額請求を念頭に置かないというのは、いささか不思議なストーリである。


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