土地相続したくない ~ 親の不動産は?
私も高齢の親が住んでいる田舎の土地、家屋と田畑の農地が約2.8haほどあるが、土地を相続したくない、農業をする気もない、自分も高齢者の仲間入りをしてしまって年金暮らし・・・。
とても田舎の農地なんって相続したくない。
実家なので子どもの頃この地で育ってきただけに忍びないのだが・・・さてどうしよう?
|序論
実際こういう悩みを持っているのは私だけではなく結構いるのではないでしょうか?
私の知人は
「相続したが固定資産税を払うのが大変」、「農地の管理を親戚の農家にお願いしているが、高齢になりやめたいといっている・・」とやはり今後に不安を感じているのです。
田舎の親の土地や建物を自分が相続してもこの先の活用や土地の売買ができる見通しもなく、自分が死んだ後は子ども達がほとんど行ったこともない知らない土地の相続をしたり、または相続放棄の手続きをとらせるようなことになってしまうのではと不安があります。
さてこういう場合に、どうしたらよいのでしょう?
|相続登記が義務化された
2024年4月に相続登記が義務化され、土地・建物を相続したことを知った日から3年以内に、相続登記をしなければならなくなりました。
そのため、法務局に登記(不動産相続登記)の申請をする必要があります。
正当な理由がなく相続登記をしない場合には10万円以下の科料が科される可能性があるのです。
つまり、利用価値のない土地・建物であっても相続登記しなければならず、当然ですが相続すると、固定資産税などの税金が毎年発生するだけでなく、草木の伐採など環境保全のための費用もかかることになり困ったことになるのです
売却をしたくても、売却できない土地や、農地などのように農地法に基づく規制(制限)があるものもあり、保有するメリットがないため、対応に苦慮されている方も多いのではないでしょうか。
ましてや自分だけではなく子・孫に至るまでこの手続きが追いかけてくるのです。
|相続してもメリットのない土地の処分は・・
地方出身の人は、学校卒業後、都会に就職し、その後都心部で定住することが多いです。
実家の親が病気などで亡くなると、その子が親が住んでいた土地と建物を相続するのが一般的。
そして相続した不動産は、登記の義務化が決められているため、相続登記をすることになります
。
もちろん相続放棄という手続きもありますが、これもまた手続きが面倒な上相続放棄が困難であったり、相続放棄しても一定期間適正な管理を行う義務を負うことになったりととても大変です。
少子高齢化により地方、特に農村や漁村などの人口流出は著しく進行しており、地方の土地は相続後に利用不可能な建物や土地が増加しています。
相続した土地を利用する方法が考えられない、売却したくても売却自体が難しい、といった場合は、非常に悩ましいです。
これまでこのような土地は地方で多く見られたのですが、最近では都市近郊の住宅地や都市部でも増加しつつあります。
もし利用が難しい土地を相続すると、固定資産税・都市計画税がかかり、かつ家屋の保全や庭木の伐採といった管理・維持の費用も発生します。
そのため土地を保有し続けるメリットはほとんどありません。
もし空き家の手入れを怠ると、現在認められている固定資産税の減額措置がなくなるし、場合によっては所有者の管理責任が問われることもあります。
こうした背景を考慮し、国が不要な土地を引き取る「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月から運用させています。
|「相続土地国庫帰属制度」とは
この制度は、国が個人から土地を引き取ることができるように制度化されたもので、2023年4月から施行されています。いわゆる空き家対策などのための制度なのです。
この制度は、一定条件が満たされた不動産(土地・建物)に関して、所有者が負担金を支払って国に引き取ってもらうというものです。
この制度を利用したい人は、土地登記を管理している「法務局」に事前相談をすることになります。
残念ながら、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではなく、決められた条件を満たさないと、引き取ってはもらえないのです。
例えば、建物が残っている土地、大きな樹木が残っている土地、隣地との境界が不明確な土地、確認できない埋設物がある土地などは引き取ってもらえないのです。
建物は解体し、樹木は伐採するなどいわゆる「更地」にする必要があります。
法務局への事前相談の後、実態調査や正式な審査があり土地の引き取りの有無が決まります。
また、この制度の場合、条件を満たした土地だけが引きとりの対象となり、通常の土地の売買の場合とは異なって、土地を提供する側が負担金を支払うことになります。
それでも、税負担や維持・保全の費用から解放される、使い道のない土地を将来子どもたちに負担させなくて済む、といった理由から、法務局へ相談、国の引き取りを希望する人が増えています。
|制度利用希望者も増加傾向にあるが・・・
この制度は2023年に施行されたものですが、2024年7月31現在引き取りが決定した件数(帰属件数)は全国で667件(宅 地:272件、農用地:203件、森林:20件、その他:172件)とのことです。
徐々に相談件数は増えているようですが、審査期間が半年はかかること、実績が少ないこと、更地にするという条件が困難であることなどから、特に地方ではなかなか厳しいようです。
ちなみに相談件数は、2023年7月31日現在、2,481件(内訳は田・畑;930件、宅地;889件、山林;391件、その他;271)であり、帰属件数は26%程度とのことです。
|更地にすることと負担金
正式に引き取りが確定した後に負担金を納付すれば、該当の土地は国庫に帰属することになります。
負担金の金額は、市街化区域以外にある宅地と農地の場合、一律20万円。市街化区域の土地の場合、面積等を考慮し算定されることになります。当然面積が広いほど金額は高くなります。
例えば、100㎡の宅地で負担金は約55万円になり、決して安い金額ではありません。
この審査期間中に、土地のある地方自治体への情報提供がされるため、地方自治体が利用可能と判断すれば、寄付の形で受け入れに動く場合もあります。
市街化区域の土地を、公園用地などに活用できるのであれば、自治体としても好都合です。
無償提供になりますが、国に引き取ってもらう場合に比べて、負担金がないというメリットがあります。
また民間の不動産会社などでも、この情報を収集し、無償あるいは安い価格で引き取るケースも出てきているようです。
|負担金よりも大変なのは更地にすること!
都市部でも地方部でも、現に建物や大きな樹木があると、これを更地にしなければ引き取ってくれません。
建物の建坪面積などによっても異なりますが、更地にするための解体・処分費用が高額なのでこれを負担することが困難な場合あり、法務局に相談したものの断念する例も少なくないようです。
詳しくは以前掲載した記事「相続土地国庫帰属制度」などを参照してください。
|おわりに
法務局へ相談したものの建物を更地にする費用が捻出できないがために、国への帰属を諦めざる得ない人がいるようです。
そのため結果として空き家のままであったり、管理が充分にできておらず、いわゆる放置された状態にせざる得ない物件もあるようです。
私自身身に迫る問題なのでいろいろ模索しているのですが、相続放棄も含め、なかなか厳しい条件下にあると感じている。
<参考>
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