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海外映画の考察

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2020年2月の記事一覧

『魂のゆくえ』(2017)  ポール・シュレイダー版『生きる』

『魂のゆくえ』(2017)  ポール・シュレイダー版『生きる』

Reformed Church(改革派教会)は、改革派といっても急進派や進歩主義ではなく、16世紀の改革派、ようはローマ・カトリックから分離したプロテスタントである。アメリカで一番多いのがプロテスタントで、その中でも一般的なのはイギリス発祥のバプテストである。チューリッヒで始まった改革派教会はドイツ系やオランダ系が多いようだ。アメリカの主流派のバプテストでもないし、ヨーロッパ系でも後から来たアイリ

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『叫びとささやき』(1972)

去年の12月頃に、いったんプライム無料に追加されたのだが、翌日には視聴不可になっていた(プライム・ヴィデオではよくこういうことがある)。気が付いたら、いつのまにか復活している。

デジタル修復版のようで、画質はもちろん音質も良い。123分版である。撮影は後にアメリカ映画でも活躍した国際的有名撮影監督スヴェン・ニクヴィスト。本作品でアカデミー撮影賞を受賞している。

なんか赤い。『サスペリア』の赤で

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『魔術師』(1958)  デジタル修復版がプライム・ヴィデオに追加

音楽はエリク・ノルドグレン

映像の魔術師といわれるフェリーニが撮ったは『道化師』、ベルイマンが撮ったのが『魔術師』。まあベルイマンはフェリーニの影響も受けていますね。フェリーニがベルイマンを知ったのは60年代になってからだと言っていた記憶がありますが。

というわけで、プライム・ヴィデオの『フェリーニの道化師』に日本語字幕つけてくださいよ、マイシアターDDさん。

『ブラック・クランズマン』(2018)   批評家ウケするタイプの映画だが

『ブラック・クランズマン』(2018)   批評家ウケするタイプの映画だが

結論から言うと小ネタ盛りだくさんのコメディとしては面白い。だが、字幕を追っているだけだとジョークの半分は理解できないだろう。

トランプ大統領批判は2018年公開映画(2019年の第91回アカデミー賞の対象)としてはネタが古かった。もう2年早ければアカデミー作品賞や監督賞を獲ってたかもしれないが。アカデミー会員のほとんどが民主党支持者といわれ、トランプ氏を批判しまくった2017年のアカデミー賞授賞

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『クワイエット・プレイス PARTII』 (2020)の予習とパート1のおさらい

『クワイエット・プレイス PARTII』 (2020)の予習とパート1のおさらい

『クワイエット・プレイス』(2018)の核心や結末に関する記述あり

パート1のおさらい

まず、音を立てても即死とは限りません。というか「音を立てたら、即死」というのは日本の配給会社が勝手に付けたコピー。音を立ててもセーフな場合もあるじゃないかとツッコんでいる人がいたのは日本だけです(たぶん)。

クリーチャーは人間を「狩って」いるらしい、ということしか解っておらず、その場では殺していないのです

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『家族の波紋』(2010)   イギリスの女性監督ジョアナ・ホッグの小津安二郎愛あふれる作品

2019年4月29日に日本でレビュー済み
形式: Prime VideoAmazonで購入
まず序盤からカメラが固定で動かない。ズームもパンもしない。続いて、遠ざかる自転車のロング・ショット。次に女性2人が笑顔で自転車で走っているシーンでは、自動車にカメラを積んで撮影している。ひょっとして『晩春』の原節子のシーンのオマージュではないか?
屋内のシーンで確信に変わる。膝の高さくらいのロー・ポジション

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『オンリー・ザ・ブレイブ』(2017)    ほとんどの人物が実名のままの実話

『オンリー・ザ・ブレイブ』(2017)    ほとんどの人物が実名のままの実話

〈結末や核心に関する記述あり〉

2013年にアリゾナ州で起きたヤーネルヒル・ファイアを描いた実話であり、エリック・マーシュ(ジョシュ・ブローリン)、デュエイン・スタインブリンク (ジェフ・ブリッジス)、アマンダ・マーシュ(ジェニファー・コネリー)、マーヴェル・スタインブリンク(アンディ・マクダウェル)などほとんどの人物が実名のままとなっている。

グラナイト・マウンテン・ホットショットと呼ばれる

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『悲しみの皮』 バルザック原作『あら皮』

オノレ・ド・バルザックの『あら皮』ですね。フランス語ができる人やフランス文学に詳しい人なら、すぐピンと来るのかもしれませんが、私は10分過ぎまで気が付きませんでした(笑)。
そもそも「あら皮」(おそらく漢字だと麤皮)って何?と調べてみたら、表面の粗いロバの皮の事のようです(本作品の中でもロバの皮と言っています)。この皮が仏語で"chagrin"(おそらく英語のshagreenと同じ)なんですが、仏

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『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(2017)   ヴィクトリア女王と実在したインド人従者アブドゥル・カリムを描いたコメディ

2020年1月1日に日本でレビュー済み
形式: Prime VideoAmazonで購入
ヴィクトリア女王の死まで14年間仕えた実在のインド人(ムスリム)、アブドゥル。アブドゥルとヴィクトリア女王が一緒に収まった写真は何枚も残っているし、意外かもしれないが、本作品は概ね実話である。
女王の足に口づけしたというのも実話で、ヴィクトリア女王の日記に記されている。
またヴィクトリア女王の日記や手紙による

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『KOKORO』 (2016)   中年フランス女性の『不思議の国のアリス』

2020年1月6日に日本でレビュー済み
形式: Prime VideoAmazonで購入
(核心や結末に関する記述あり)

主人公の名前もアリスとそのまま。
フランスからすれば地球の裏側の極東日本は不思議の国だろう。東京の人なら分かるが、羽田空港から電車を乗り継いで新宿へ出るというのは結構面倒だ。新宿ならリムジンバスで行けばいいのだが、東京メトロ丸ノ内線は「ウサギの穴」なのだ。
ヒロミは「白ウサギ

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『戦場のピアニスト』(2002) 今や映画芸術科学アカデミーから除名されたポランスキー

題材的に、つまらないと言えない雰囲気がありますが、ポーランド時代や初期のハリウッド時代のポランスキー作品を知る者からすれば、映画の出来として特筆するべき点はありません。完全にアカデミー賞狙いです。狙いは成功し、監督賞、脚色賞、主演男優賞の3部門を受賞しました。脚本はイギリス人、主演はアメリカ人なので、言語は基本的に英語。

1977年に13歳の少女に対する性的暴行事件でアメリカを脱出したポランスキ

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『天使に恋して』   イタリア版『素晴らしき哉、人生!』『スウィッチ/素敵な彼女?』

2018年8月17日に日本でレビュー済み
形式: Prime VideoAmazonで購入
プライム・ヴィデオのイタリアTV映画は大当たりもないけど大ハズレもない(笑)。本作品も安心して観れるだけの出来になっています。アメリカ映画やフランス映画でも、よくあるようなストーリーであっても、イタリアが舞台だとカソリック的な背景があるような無いような(笑)。ローマの観光PRヴィデオ的な側面もあり『ローマか

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『セブン・シスターズ』ブレグジット時代のEU批判メタファー作品

2020年1月5日に日本でレビュー済み
形式: Prime VideoAmazonで購入
国際石油資本は関係ないのか?やはりそう思う人は少なくないのでしょう、英米ではWhat Happened to Mondayのタイトルだったようです。これはロバート・アルドリッチ監督のWhat Ever Happened to Baby Jane?(『何がジェーンに起ったか?』)のオマージュでもあるタイトルです

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『ローマからアモーレ』おいっ!とツッコまずにはいられない邦題ですが

2018年5月7日に日本でレビュー済み
形式: Prime VideoAmazonで購入
オープニングのベサメ・ムーチョですっかりハマりました。もう、この場面だけエンドレスでリピートして観ていたいくらい。主演のローラ・ポンセはラテンアメリカでは有名な歌手/女優でイタリアでも活躍しているそうです。
イタリアのテレビ映画で、アルゼンチン・パートもイタリア語、ローマからブエノス・アイレスに電話で「アモー

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