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カスタマーエクスペリエンスの鍵は“SNS”? トライブ戦略から突破するコミュニケーションデザイン ― ウェビナーレポート

2023年4月に開催したCX CREATIVE DAYSでは、計4日間にわたってCXクリエイティブの実践事例をお届けしました。

「カスタマーエクスペリエンスの鍵は“SNS”? トライブ戦略から突破するコミュニケーションデザイン」と題したセッションには、電通デジタル エクスペリエンステクノロジー部門の佐々木秀幸が登壇。SNS起点でCX戦略を立ててブレイクスルーを起こす、電通デジタルの独自ソリューション・フレームワーク「Tribe Driven Marketing(トライブドリブンマーケティング)」について紹介しました。

本記事は、CX Creative Studio note編集部がセッションの内容を一部抜粋し、まとめたものです。


CX設計に不可欠なSNS分析

2023年現在、優れた顧客体験(CX)設計をするにあたって、SNSは非常に重要なポジションにあります。なぜなら、CXのほぼすべてのタイミングにSNSが深く関わっているからです。

商品認知や興味喚起のきっかけがSNSであることは、現在では珍しいことではありません。また、商品を購入する前にInstagramやPinterestなどで、他のユーザーが商品を利用している写真もしくは動画を見て、比較検討を重ねるという使い方も増えています。これはかつてメーカーのカタログが果たしていたような役割の一部を、SNSが担うようになってきているといえるのではないでしょうか。

加えて、多くのSNSではECやライブショッピング機能が実装されています。SNSを通じての購買までもが可能であることに加えて、購買後のリピーター化・ロイヤルカスタマー化の過程でもSNSが重要な役割を果たしています。

業種や業界により、活用されるSNSの種類・バランスの違いはありますが、カスタマージャーニーにSNSが関わらないことはほとんどないと言っても過言ではありません。つまり、消費者のリアルな生活に寄り添った体験設計をするためには、SNSデータを横断的に分析することがとても重要になってくるのです。

マーケティングをアップデートする統合的なフレームワーク

SNSデータ分析を基としたCXを設計する際に核となるのが、「Tribe Driven Marketing(トライブドリブンマーケティング)」です。

「Tribe Driven Marketing」とは、電通デジタルが独自に開発した統合フレームワークで、SNSのオープンデータを分析することで広告コミュニケーション戦略を組み立てるソリューションです。

SNSには消費者の日常生活の意識行動が溶け込んでいるため、ユーザーの興味関心、価値観や嗜好、心理について、より深く精緻なインサイトを得られます。

ここで重要になってくるのが「トライブ」という概念です。「トライブ」とは、SNS上で共通の趣味や関心価値観でつながっているユーザー集団を意味しています。

図の左上の青い丸はゲーム好きの集団(トライブ)です。ひとつのトライブの中でも「対戦格闘ゲームが好きなトライブ」「RPGが好きなトライブ」といったように細分化された集団が存在します。

また、大抵の人は興味関心の対象が複数あります。1人の人間が1つだけのトライブに所属するのではなく、「ゲームが好きで、かつデジタルガジェットも好き」といったトライブの重複も発生するでしょう。この、重複度が高いトライブは親和性が高く、相性が良いだろうという判断ができます。

「Tribe Driven Marketing」を活用して共通の興味関心、価値観を持った集団をトライブとして捉えることで、SNSを軸にマーケティングをアップデートすることができるのです。

トライブごとの複合的な打ち手を可能とする

それでは、どのようにSNS上のトライブを分析するとどんなことが分かるのでしょうか。

例えば、キャンプ用品に興味がある集団を分析するとそこには

「本格的に登山を趣味としているトライブ」

「ソロキャンプなどをカジュアルに楽しむトライブ」

「タフで頑丈なアイテムを好み、ミリタリー用品なども好きなトライブ」

といったトライブが見つかります。

電通デジタルでは、分析したトライブをターゲットとして広告配信に活用することも可能です。

トライブをターゲットにすることによって、クリエイティブ素材の訴求内容をターゲットの趣味嗜好に合わせて変えられるのはもちろん、各トライブの反応データを基にPDCAサイクルを回していくことができます。

潜在的ファンの発見とクリエイティブジャンプ

CX設計において「Tribe Driven Marketing」 を活用する真のメリットは2つあります。

ひとつめは、潜在的なファンをデータドリブンに発見できること。

企業の方から、『わが社の商品にはファンがいない』といったお悩みの声をいただくことがありますが、「Tribe Driven Marketing」では潜在的なファン層や自社商品のファンになってくれやすい人たちを発見することができます。

例えば、ホームセンターを愛用するトライブを分析すると、日常系美少女アニメを好むトライブと相性が良いというデータが導き出されました。両者は一見すると無関係ですが「身の回りの生活環境を充実させる、趣味に生きる」といった深層の価値観に共通性があり、つながっているといえます。

もうひとつのメリットは、こういった潜在的ファンなどをターゲットとして消費者起点のデータから戦略を立てることで、自然とクリエイティブジャンプにつながるような意思決定が可能となる点です。

SNSデータに溶け込んでいる消費者のディープインサイトから「訴求するべきポイント」や「メッセージするべき対象」の方針を決めると、消費者目線かつユニークな打ち手につながります。

多変量解析やマーケティングミックスモデリングなど、デジタルで追跡・分析できる変数データをコントロールして広告手法を最適化しようというアプローチは一般的ですが、「どのようなひとたちに届けるのか」「その人たちにとって、この製品の存在意義は何なのか」を決める“意思決定”こそが最大の変数なのです。

企業としてどこを目指すべきなのか、この製品はどの方向に行けば潜在的なファンが待っているのか、という意思決定が「Tribe Driven Marketing」 によって可能となります。これからの時代、優れたCXを創造するためには、SNSの横断的な分析を基に、メディアに囚われないニュートラルな打ち手を講じていくことが重要となるのではないでしょうか。

ウェビナーを終えて:データと“愛”はつながっていく

セッション終了後、電通CXクリエーティブ・センター センター長の並河進とスピーカーの佐々木秀幸の2名で、セッション内容を踏まえたディスカッションが行われました。

並河:お話を聞いて、一見無関係に見えるトライブ同士のつながりも見えるようになる点は、クリエイティブに生かされるのではないかと思いました。こうしたデータを得られることによって、クリエイターの創造力はどのように変わっていくと思われますか。

佐々木:トライブの分析がそのままクリエイティブブリーフになるという点は大きいですね。分析例で挙げた「ホームセンター愛用トライブは、日常系美少女アニメ好きトライブと親和性が高いというデータ」をもとに企画を考えるなら、ホームセンターの顧客向けにアニメを使ってプロモーションするといったクリエイティブジャンプができます。消費者が受け入れてくれる、施策がうまくいくであろうという確実なデータが事前にあるので意思決定がしやすくなりますよね。

並河:クリエイターの感性が拡張されるだけでなく、打ち手の有効性も補強してくれるものになると。クリエイターと企業に良い相互作用が生まれる一方で、企業側のメリットとしてはどのようなものが考えられますか。

佐々木:SNSから消費者の声を傾聴することで、購買データだけでは不可能な深度でユーザー像を理解できます。例えば、商品を買ったという購入報告の投稿を、どんな層に向けてシェアしているのか、どのように使用しているのかといったようなことですね。その点で、自分たちの商品がどのように愛されているのかを深く知ることができるのが非常に良いところだといえるかもしれません。ユーザーに向けた新たな施策も考えられるのではないかと考えています。

並河:ユーザーは自分に最適化された情報が届くことでより良い体験ができて、企業側は本当に愛してくれる顧客にリーチできるようになるのですね。データと“愛”は、言葉だけを見ると真逆の印象ですが、データをきちんと使って精度を上げていくことと、商品をより愛してもらうことは、最終的につながっていくのではないかと感じました。

佐々木:おっしゃるとおりですね。現在は広告が中心ではありますが、「Tribe Driven Marketing」 を幅広い領域に広げている最中です。

並河:商品開発やエンタメコンテンツの開発、リサーチなど、さまざまな使われ方が期待できますね。興味を持った方はぜひお声がけいただければと思います。それでは佐々木さん、本当にありがとうございました。

データマーケティングとクリエイティブを融合させるNext CXスキームについて興味のある方は、ぜひご相談ください。

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プロフィール

電通デジタル:佐々木 秀幸(ささき・ひでゆき)

エクスペリエンステクノロジー部門ソーシャルテック事業部・シニアプランナー

デジタルデータ・SNSデータを起点としたコミュニケーションプランニング、クリエイティブディレクション、戦略策定に従事。エンタメ系業種を中心にクライアント多数。 TV局のコンテンツ企画開発からリテールメディアの開発まで幅広くプランニングを行う。2021年電通から出向、現職。

※所属・役職は取材当時のものです。

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