逢瀬


つめたい
箪笥の質感で
秋がくる
窓の話をよく聞けば
鳥は何も
求めないらしい
月はもう
行ってしまったらしい
肌の名残の
タオルケットに
日差しが溶けて
あたらしい映画をつくる

つめたい
黒いブーツに
右足を
さしこめば
むきゅっと
絞られる
ひかりが右の胸にある

建物の影が
ずっと前から
しゃがんたり立ったり
していて
今朝は
透明なひかりに
美術館らしく
胸の前で腕を組んで
建っていた
出ていく人の
こぼした発熱が
まだ
青く残っている
そこで
ワルツを
風が一度きり

みていた

約束の時間に
まばたきと
ワンピースの裾を
あわせて
きてくれた

秋は
過ぎていくだけ
彼女も
今を読み込んで
きらきらひかる

つめたい
犬の質感で
もうすぐなにかが
くる


23.1005

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