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風鈴

 太陽がさんさんと輝きうだる暑さの日。上を見上げれば風鈴が吊されていた。その風鈴は涼しげで可愛げがあった。どことなく初恋の人を思い出させる風鈴。いつの間にか恋に落ちた。掴み所がない性格の初恋の人。あの当時は初恋であることを認めなかった。否定していた。長い月日が経過してやっと初恋を認めざる得なかった。それでも初恋の人にはずっと秘密のまま。ずっと内緒のまま。
 一陣の風に煽られ風鈴の鳴き声がチリンと鳴り響く。風鈴の鳴き声と共に一気に現在に引き戻される。もう少しだけ過去に思い浸りたかった。棒アイスを囓りながら感傷に浸る。もう初恋の人に再会することはないだろうと思う。だけど、一目だけでいいから初恋の人の現在の姿を見てみたい。大人になった初恋の人を一回見るだけで満足だから。あのときの思いを今更伝えようとは思わないから。また風鈴がチリンと悲しげに鳴いた。

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