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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉙

「いざ、幼稚園」


さて、長女は大変です。
3歳になるころからいろいろやらされ始めます
育児雑誌を読んで
「なるほど、なるほど」
教育テレビをみて
「うん、うん」
ママ友と話して
「そうなんだぁ」
先ずは
「耳は3歳までに作られる」
と聞いて
「ピアノを習わせたい」
実は、夫は学生時代バンドを組んでいて
フルートを吹きながらボーカルを担当していました
私は超音痴なのですが、娘たちは夫の遺伝子を受け継いでいると信じていました。
たまたま、お隣のご夫婦がピアノの調律師をされていたので、
中古のピアノを探していただいて、
母にねだり買っていただきました。
 
次は
「幼稚園へ入る前に通っておいたほうが良い」といわれていた
駅近くのデパートの中にあった「めばえ教室」へ
ここでまたママ友と
ああだこうだと情報交換
 
すっかり普通のママになって
仲良しグループもでき
ランチやカラオケ、それぞれの家に順番に集まって遊んだり
「○○ちゃんママ」と呼ばれるようになっていました
 
いよいよ幼稚園です。 
ルルルルル、ルルルルル…
「はい、○○ようちえんです」
「あ、すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが」
「はい、なんでしょう」
「あの、そちらは車いすでも大丈夫でしょうか」
しばらく沈黙の後
「えっと、車いすを使っていらっしゃるのですか」
「はい」
「車椅子のお子様をお預かりしたことはありませんが」
「入園をご希望ですか」
あ、違うぞ
「あ、すみません、子供は大丈夫なんですが、私が車椅子なんです」
また沈黙
「えっと、お母様が車椅子でいらっしゃるのですね」
「あ、はいそうです、すみません」
なんであやまっているんだ自分、とおもいつつ
「駐車場と、入り口などに段差がありますか」
「そうですね、小さな幼稚園なので駐車場はありません」
「あと、やはり入り口など何か所かは段がありますね」
「申し訳ありません」
「ああそうなんですね、わかりました」
「ありがとうございました」
と、こんな調子で何件かの幼稚園へ電話をかけていました。
 
難しいよね
ところが、ある幼稚園では
「直接お会いして状況を知りたいので、先ずは願書をお出しください」
と言ってくださったのです。
幸い、自宅から1~2kmのよく通る道路沿いの幼稚園で
かわいい制服の園児を見かけていました。
小学校も学区内なのでお友達もできやすそうです。
早速、入園願書を提出
面接試験を受けることになりました。
面接試験の日、
緊張して娘と二人で初めて幼稚園へ
事前にお話ししておいたので
車を幼稚園の庭に停めさせていただき、
「こんにちは」
先生が迎えにでてくださり園内へ向かいます
何か所か低い段差はありましたが手伝っていただきお教室に入れました
 
面接について雑誌を読んだり、先輩ママに聞いたり、
質問事項を想定して答えを考えたりしていましたが
 
「お子さんは良いですね」
「なぜ、車椅子になられたのですか」
「普段の生活はどうされているのですか」
などなど
年配の女性の園長先生がお尋ねになったのは私のことばかりでした
 
車いすのお母さんの受け入れは初めてということで、
いろいろ考えてくださっていたようです。
送迎バスは家の玄関前につけてくださり
私が行事などで幼稚園に伺うときは駐車場を用意
教室も1階にといろいろ配慮していただくことになりました。

心配していましたが、ちゃんと受け入れてくださる幼稚園がありました
感謝です。


 


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