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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉜

「ご当選おめでとうございます」


「幼稚園なんて、行かなくったってどうってことない
別に、それで人生がどうのこうのってなるわけじゃないし
だいたい、まだ5~6年しか生きていない子供が
社会に適応だの不適応だの関係ないでしょ
何を隠そう、あなたのママは幼稚園どころか
小学校だって2年生の2学期から行き始めて
5年生と6年生はほとんど行ってないんだから
でも、ぜんぜん大丈夫」
と言ってあげたい
ああ、それなのに
 
毎日夕ご飯を食べながら泣き出す娘を
なんだなんだと励まし、言いくるめ
翌朝どうにかこうにか幼稚園バスに乗せ、
帰ってくるまで心配して
元気に帰ってくる娘をみたら
「あぁほら、行けば楽しいじゃん」
「行かせて良かった、明日はきっと大丈夫」
とホッとするものの
また夜にはシクシク泣き出して
「ようちえんいきたくない」
毎日毎晩、その繰り返し
そのうちにバスにも乗せられなくなってしまい
「おはようございまぁす」
「おじゃましまぁす」
と幼稚園の先生が家の中に入って来て、
泣いていやがる娘を抱きかかえてバスに乗せて
連れていってもらうようにまでなっていました
今思えば
ほんとうにごめんなさいです
 
それでも年長さんになり、クラス替えと担任の先生が変わり
少しずつ元気になってきました
先生がおっしゃるには
「お嬢さんは、まるで海の中で象さんに会ってしまったような
衝撃的な出来事があったのだと思います」
「海の中で、象さん?」
意味が分かりませんでした
状況としては
仲良しだと思っていたお友達にずっと無視されていたとのことでした

クラスが変わって、そのお友達と離れたためか
夕ご飯の時に泣くこともなくなりました。
 
我が家の前には今でも幼稚園バスが停まります
「やだやだ~」
「いきたくない~」
と泣いてるお子さんをなだめすかして手を引っ張って、時には抱きかかえて
幼稚園バスに乗せている光景が繰り広げられています。
それぞれのご家庭にそれぞれの背景やご事情がおありと思います
あの頃の思いつめていた自分を思い出し
「大変だよね、でも大丈夫だよ」
「がんばれ~」
と声をかけたくなります。
何が大丈夫なのか、何が頑張れなのか
うまく言えませんが・・・
 
ある日、郵便受けに大きめの封筒が届きました。
「なんだろう」
差出人は
よく買い物をするスーパーマーケットの会社
なんだかちょっと厚めです
封筒の中身を見てみたら
「おめでとうございます」
「創立10周年の感謝企画」
「ハワイ旅行ご優待に当選されました!」
「え、え、え?」
ご優待なので、ただではありませんがお安い価格でハワイ旅行です
「やったぁ、そういえば応募してた」
「でも、6歳と3歳の娘がいるし」
「車椅子だし」
「無理だよね」
「でも、行きたいなぁ」
「どうしよう」
またもやいろいろ考えて挑戦です
「そうだ」
早速、母と妹に連絡
「ねえねえ、安く行けるんだけど、ハワイ、一緒に行かない」
妹は男の子を産んでいて、ちょうど1歳になっていました
母も定年退職をして、まだまだ元気です
「よし、行こう」
あっという間に話は決まり1歳、3歳、6歳の子供と車いすの私、60代の母
妹が頑張ってハワイ旅行です。
またまた、珍道中
乞うご期待
 

 


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