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細胞内にお薬をお届けする新しい画期的な方法を開発 慶大

慶応大学は11月1日、細胞内にお薬をお届けする新しい画期的な方法を開発したと発表しました。研究チームによれば、これまでよりも優れた新しいsiRNA(small interfering RNA)医薬品のデリバリーシステムの開発につながる可能性があるそうです。

なぜ細胞の中にRNAをお届けする必要があるのか?


まず、私達の細胞内でどのようにしてたんぱく質がつくられるのかからお話を始めたいと思います。

私達の細胞内で、タンパク質は、まず、DNAからmRNAにその設計図が写し取られ、この写しとられた設計図に基づいてリボソームと呼ばれる細胞内の器官でつくられます。

では、DNAに異常があって、この設計図自体がおかしくなってしまったらどうなるでしょうか?

そう、つくられるタンパク質も異常なものになってしまいますよね。

そして、こうしてつくられた異常なタンパク質がさまざまな病気の原因などになっていることが解っています。例えば、筋ジストロフィーやがんなどです。

ところで、RNAにはおもしろい性質があります。相性の良いRNAとくっついてそのRNAを破壊してしまう性質です。これをRNA干渉といいます。

そして、このRNA干渉を利用するとおもしろいことができます。例えば、外部から細胞内に特殊なRNAを入れて、タンパク質合成におけるmRNAの段階で、おかしくなった設計図のおかしくなった部分を破壊します。すると、完璧ではないけれども、だいたい正常なものと同じタンパク質がつくられます。

実際、このような発想に基づいて、筋ジストロフィー症の一部に有効なお薬も開発・承認されています。

どうやってRNAを細胞内にお届けするのか?


今回の研究成果を解りやすく解説したイラスト。慶応大学報道発表資料より引用。

では、どのようにして特殊なRNA(siRNAやmiRNAなど)を細胞内にお届けするのでしょうか?

これまでは、特殊なRNAを脂質ナノ粒子と呼ばれるカプセルに入れて、細胞内にお届けしていました。しかし、この方法だと、いくつか問題点がありました。まず、主に肝臓の細胞にしか特殊なRNAをお届けできないこと。さらに、時間がかかり効率も悪いことなどです。

そこで、研究チームは、新しく特殊なRAN(siRNA)やタンパク質などからなる複合体を開発しました。ちなみに、この複合体は、短鎖干渉RNA(siRNA)、研究チームが独自に開発したヒト由来膜透過促進ペプチド(S19)、細胞透過性ペプチド(TAT) 、キャリアタンパク質(Ago2)などからできています(図参照)。

えっ、全く解らない?これは日本語かって?バレましたか、実はこれはスワヒリ語です(`・ω・´)キリッ!

で、実際、研究チームが、この複合体を使って、ヒト培養細胞で、実験したところ、脂質ナノ粒子を使うよりも、特殊なRNAが効率的に細胞内に到達し、迅速に効果を発揮することが確認されました。

そして、さらに、研究チームによれば、この複合体は、肝臓の細胞だけではなく、それ以外の細胞にも、特殊なRNAをお届けできることが期待できるそうです。

これまでお話してきた特殊なRNAは核酸医薬品と呼ばれ、次世代医薬品として期待されていますが、今回、テーマとなったドラッグデリバリーシステムを含めて、これからの研究開発、臨床応用に期待したいです。

最新テクノロジーレビューでは、これからも医療、環境、宇宙などの最新テクノロジーに関するニュースを楽しく解りやすくお届けしていきます!

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【参考URL】
慶応大学のプレスリリース 221101-1.pdf (keio.ac.jp)

脂質ナノ粒子とは RNAデリバリーの脂質ナノ粒子 (LNP) | RNA製剤を分解させないための送達手段 | コスモ・バイオ株式会社 (cosmobio.co.jp)








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