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花散りぬれど~part1~

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恋愛、夫婦愛、親子愛、友情など、儚い恋や一途な愛、そして慈しみが、命を支えてくれるのかを綴って行きたいと思います
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#恋愛エッセイ

ときめきの隣席

ときめきの隣席

沢田知加子の「会いたい」では、二人は教室で机を並べていた。
しかし、私はかなと机を並べて学んだ記憶が殆ど無い。
むしろ、片思いだった百合恵とは並べて学んだ記憶があり、それ以外に憶えているのは、一郎さんの奥さんと並んでフランス語を勉強したことだ。
一郎さんのお母さんは有名な作家で、彼のことは「一郎物語」としてドラマ化されて、ちょうど放映されていた。
それで北山大学のことは、当時はよく知られていたのだ

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もう一度 グリーンエリアで

もう一度 グリーンエリアで

私の通った北山大学は、名古屋の東のなだらかな丘陵に校舎が建っていた。
私の叔父が名古屋に住んでおり、その叔父を頼って現役の時は名古屋大学を受けたが失敗し、浪人してこの大学を念のために受験した。
北山大学への受験対策はなにもせず、英米学科もリスニングがあることは願書を出す時に知った。
もちろん、英米は不合格で、人類学科は浪人して唯一合格した学科となった。
結局、国立大学や早稲田大学には落ちたので、人

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恋花火

恋花火

天声人語で中島らものことが書いてあった。
彼は有名な超進学校の灘校の落ちこぼれだった。
音楽と恋愛と芸術に生きた彼こそ、私にとっては崇拝すべき人であったが、その死に様は哀れに思っていた。
私は平凡な進学校の落ちこぼれだ。
中学部に入った時に教師から、144人中50番以内にいたら、東大京大に入れると言われていた。
その圏内に、中学部の2年生まではいた。
学年の実力テストは数学で最高得点をとった二人の

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女友達の色添え

女友達の色添え

私はひとりの好きな女性に、一途にのめり込んでしまうことは無かった。
ただ、ふられた後で未練がましく、一途に追い求めたことは何度かある。
中学生頃から女の子と付き合い始めて、二人きりでデートした女性はかなり沢山いる。
でも、キスするまで仲良くなれたのは、数えるほどしかいない。
私は中学校から男子校だったので、普通の友達として女性と接する機会が大学行くまで殆ど無かった。
高校時代から女の子に声をかけて

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夜桜の下で

夜桜の下で

桜の季節になると必ず思い出す。名古屋の覚王山にある日泰寺の夜桜を
、その時雨が降っていた。

その日は二間のアパートに同居していた大学の同じ学科の友が引っ越しした日であった。

彼は我々の三流大学が嫌で、東京の一流私学を受け直したのだが失敗して大学に残ることになった。

彼が東京に移ってしまえば、二間の家賃の2万円は払えないので、安い下宿を探して移る予定であった。

それを知った大屋さんが、「1万

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ひもといた愛の隠し箱

ひもといた愛の隠し箱

急に学生時代の写真と手紙を特別に保管していたボックスから取り出して、スキャナーで取り込んだ。
それらの写真や手紙はかつての恋人との関わりのあるもので、結婚を機会に本来なら廃棄するべきところをできずに、押し入れに隠していた。
その恋人とは駆け落ちをして、入籍して親戚にも紹介したが、結局別れてしまった。
今までは、その写真・手紙以外に、手紙代わりにやりとりしていたマイクロカセットの録音した声はデジタル

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奥三河で息吹く愛

奥三河で息吹く愛

そもそも、私が彼女とつき合い始めたきっかけは、大学2年生の春休みに初めて北設楽郡のとある村に村落調査に行った時だった。
以前に彼女とは飲み会で会ったことがあったが、当時の私は、受験勉強から解放されて一気に青春を取り戻そうとしていた時期だった。
同じ学部の同じ科の先輩だった彼女にはうっとうしい後輩に見えたようだ。
と言っても、私は1年浪人していたので、同い年だった。
そのころある女性につまらないこと

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