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花散りぬれど~part1~

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恋愛、夫婦愛、親子愛、友情など、儚い恋や一途な愛、そして慈しみが、命を支えてくれるのかを綴って行きたいと思います
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#恋愛小説

未熟な自由

未熟な自由

当時はやっていたオフコースの「さよなら」を、私がギター片手に歌うとかなはとても嫌がった。
そして、したたかな自由をもたなかったふたりは、歌詞のように「さよなら」しなくてはならなくなった。
私たち頃の親は、私たちよりももっと親に縛られて生きていた。
私たちが親より自由であっても、それなりの縛りもあった。
私の場合は、地元に帰って来いとは言われなかったが、4人兄弟は均等に学費を出すので、余分には出せな

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友達以上 恋人未満

友達以上 恋人未満

私は、百合恵とは入学以来の恋人未満の友達関係が続いていたが、かなを通しても女友達が何人かできた。

かなは私が一浪しているので同じ年だから、学年は上であっても、年上の人ではなかった。

かなの親しい友達であった同学年の和子ちゃんは、私のアパートの近くに住んでいた自宅生でゼミも一緒だった。

かなが帰省していなくて淋しかった時などに、夜に電話で話したり、呼び出して近くの喫茶店で会ったりした。

また

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さよならできない思い出たち

さよならできない思い出たち

「あなたに逢いたくて~Minssing You~」は、松田聖子の歌の中で、私にとっては特別な思いと重なる歌だ。
この歌に、別れた後のかながこう思ってくれたら良いなという思いと、自分自身のかなへの思いが重なってくる。
ひとりほろ酔いコンサートでいつも涙してしまう歌だ。

  二人の部屋の 扉を閉めて 思い出たちに“さよなら”告げた

かなは別れることを決めると、ふたりの住んでいたアパートをためらうこ

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「砂の城」にあふれる涙

「砂の城」にあふれる涙

浜田省吾のアルバムSand Castleをよく聴き始めたのは、かなと別れてしばらく経ってからだった。
どの曲にも恋愛のいろんな場面が身近に感じて、ふたりの姿と重ねてしまうものが多かった。
ステージで歌おうとは思わなかったが、飲んでスナックやカラオケで歌ったり、ひとりでギターで歌ったりした。
浜田省吾の歌を歌う時には必ずかなのことを思い出していた。

かながまだ大学にいた頃の歌としては、「散歩道」の

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何も恐くなかったあの頃

何も恐くなかったあの頃

かなと週末過ごした私の住むアパートで、まるでかぐや姫の「神田川」の世界が展開された。
よく指摘されているのは、神田川の作詞喜多條忠は本当は同棲経験が無いのではないかということだ。
それは銭湯に一緒に行って待たされるのは、実際はたいてい男の方だからだ。
私の場合もそうだったが、しかし、歌詞の男女を逆にすればまるっきり情緒を失ってしまう。
作者の経験云々では無くて、銭湯帰りの優しさに包まれた情景を描け

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二度と逢えぬ人との想い出話

二度と逢えぬ人との想い出話

死ぬまでにもう一度巡り歩きたい場所は、大学時代に想い出を刻んだ、名古屋を中心とした中部地方だ。
たった、4年間過ごしただけなのに、ぎっしりと想い出が詰め込まれている。
どこに行ったとしてても想い出は蘇ってしまう。
だから、あえて妻・道子とは行くことが躊躇われる場所となってしまった。
テレビを見ていて、かつて行った場所が映し出されると、道子にはかなと行った時の話をしたりする。
当然、かなと言う名前は

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