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詩「沼」


身体の奥深くに底無しの沼がある
深部は冷たくて風も吹かない
長い間
その存在を知らずに生きてきた

冷え切った身体に
僅かばかりの温もりが与えられると
二度と戻れなくなる
後退りした足に泥濘んだ泥の感触を感じて
私の中にも沼がある事を知った

あなたを知らなければ
沼の冷たさを
こんなにも感じることはなかったのに
足に泥が絡みついて
うまくあがれない
纏わり付く感傷は悦びを含んでいる
気が付けは深く嵌っていた
一人では決して感じる事が出来なかった感情の渦

泥で脚が汚れても
構わない
(私の細胞が黒になっても。)
汗ばんだあなたの手を
今一度
強く握った




生きる意味を
教科書は何かは教えてはくれなかった
大切なことは
自分自身が感じる事だと先生は言った

現実の失われたカケラを埋めるみたいに
違う世界に没頭した

私が何をしなくても
無条件にあなたは笑ってくれた
心の端々が
その何かを感じとった

手が向かう先に
足が歩みを進める理由に
あなたの笑顔があった
機械には無い
人間の温かみがあった

限界の先を越える瞬間とき
迎えてくれるのは
地獄の顔をした天国なのかもしれない
(私は大量の何かを失った。)

それでも
あの時は
あなたの笑顔が
私の生きている理由だった





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