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探究学習プログラム #08 -探究ラボ We Love Pockyプロジェクト-

「探究ラボ」 自己テーマパターン

田園調布学園中等部・高等部では「授業内だけでは探究学習を終わらせたくない!」「プロジェクトをさらに進めたい!」「自身のテーマをもっと探究したい!」という生徒に対して放課後に「探究ラボ」を開催しています。

探究ラボは、課外時間に探究活動を行いたい生徒が集い、自身が決めたテーマに取り組む探究学習プログラムです。毎週1回、CURIOスタッフとの進捗相談MTG以外はプロジェクトにかける時間は決めずに、生徒たちが裁量を持ってプロジェクトに取り組みます。

デザイン思考を使いプロジェクトを進めていく

2022年の1学期には授業で取り扱ったテーマをさらに深めたいという有志の生徒が集まり、授業の延長として「学校内における困りごと解決デザインプロジェクト」に取り組みました。学校内の困りごとや解決したいものを見つけ、運営委員会(校長先生や主要な先生方が集まる会議)で発表しました。

学校内における困りごと解決デザインプロジェクトの記事はこちらです。
https://note.com/curio_/n/n2dadb682a3de

2〜3学期の探究ラボでは、生徒たちが取り組みたいテーマを見つけ、探究活動を進めていきました。「先生の困りごとを解決するデザインプロジェクト」や「We Love Pockyプロジェクト」など、それぞれの興味関心に合わせてテーマを決め、プロジェクトに取り組みました。最終発表として2月25日(土)での第1回 田園調布学園中等部・高等部 探究学習発表会で多くの来校者に向けて探究の成果を発表しました。

チームへのインタビュー

今回は「We Love Pockyプロジェクト」に取り組んだチームにインタビューを行いました。このチームはポッキーへの愛から始まり、プロジェクトを進めていきました。探究学習発表会までの5ヶ月間の道のりを語ってもらいました。

探究学習発表会での様子

「We Love Pockyプロジェクト」の流れ

9月 テーマ決め
知っている企業の名前を挙げながら、取り組むテーマを検討しました。チームメンバー全員がお菓子が好きなことから、ポッキーゲームに注目しプロジェクトを進め始めました。

テーマ決めの様子

10~11月 課題発見
先生や友達など身の回りの人にインタビューをし、ポッキーゲームやポッキーに関する情報を広く集めました。プロジェクトを進めていくうちに、自分たちが大好きなポッキーに課題があることに気がつきました。勉強時や友達とシェアするときに、ポッキーを食べやすくするアイデアを考え課題解決に取り組みました。

アイデアを検討する様子

12月〜1月 プロトタイプ作成
考えたアイデアからプロトタイプを作成しました。ただ作るだけではなく、実際に使ってみることで、アイデアが課題を解決できているか検証しました。何度も試行錯誤を繰り返し、課題が解決できる形を模索し続けました。

プロトタイプ作成の様子

2月 企業への提案&探究学習発表会
江崎グリコ株式会社にメールを送り、アイデアを提案しました。他の製菓会社を調べ、自分たちのアイデアが当てはまりそうな会社に連絡を取りました。最終発表として第1回 田園調布学園中等部・高等部 探究学習発表会にて、5ヶ月間の探究の成果を発表しました。

探究学習発表会にて発表する様子

チームメンバーへのインタビュー

左からAさん、Bさん、Cさん、Dさん


Q.ポッキーをテーマに探究活動を始めた理由を教えてください。

B 探究ラボを始める時、身近なものをテーマに探究活動をやりたいと思っていたのですが、なかなかテーマが決まりませんでした。今回は知ってる企業の名前をあげながら、テーマを探しました。

D メンバーみんながお菓子が好きだったので、共通の目標が見つけやすいお菓子の会社に絞り込んだよね。

A 身近なお菓子の方が問題点も見つかりやすいし、解決しやすいかもしれないと思ったからです。

D お菓子をテーマにすることを決めた後にも、どんなお菓子に焦点を当てるのか悩みました。最初は自分たちで簡単に手を加えられ、色々な工夫ができることからポッキーゲームを題材にしました。しかし、プロジェクトを進めるうちに、ポッキーゲームではユーザーが決まらず難航しました。始まりはポッキーが好きという気持ちだったので、ポッキーに注目するようになりました。

C 実は私は学校の困り事をもう一度やるつもりでした。ただ、みんながお菓子をテーマにやっていたので、私も新しいことに挑戦してみようとチームに加わりました。

Q.ポッキーをテーマにしてから探究学習発表会で発表するまでのプロジェクトの進め方を教えてください。

C ポッキーゲームのユーザーが決まらず行き詰まった時、ポッキーに視点を戻すことにしました。課題を探すために、毎日ポッキーを食べ続け、「意外に食べづらい」という課題に見つけました。何が食べづらくしてるのか原因を探ると、袋や箱の包装に問題があることに気がつきました。

D 課題を見つけるために、テスト期間中の勉強時間に毎日ポッキーを食べました。

A 食べづらさが包装にあると気づいてからは、どんな包装がいいのか考えながらプロトタイプを作りました。例えば取りやすくするための形や開けやすくするための形など…使いやすくするためにこだわった部分をどのように表現するか、試行錯誤しましたね。

C プロトタイプは三〜十角形まで全部作りました。使い勝手を比較して、八角形が1番適している形だと気がつきました。 今までのポッキーの包装とは形が変わるので、開け方も検討しました。

B 他にもどんな形がいいのか、先生にインタビューしました。美術の先生から「八角形は1番パッケージに名前が一番書きやすい」と言われ、理科の先生からは「八角形が原子的に安定している」と言われました。他にも友達にアンケートを取ったら、八角形が使いやすそうと言われ、八角形の筒方のアイデアにしました。

発表資料(1)
発表資料(2)
発表資料(3)

Q.企業への提案した理由を教えてください。

C 自分たちで考えたものを世に出したい、と思ったんです。

D  ユーザーである自分たちがあの不満があるものだから、実際に商品になったら嬉しいとも思いました。

C 企業に提案するため、プロトタイプの写真やプレゼンテーションの資料をメールで送りました。担当の方からの返信で、同じような形の商品が発売予定だと教えていただきました。

A 似ているものがこれから販売されるのは残念でしたが、企業と同じようなものを考えついたことには驚きました。

B 私たちのアイデアは、ポッキーだけではなく似たような商品にも提案できると思い、他の企業にも連絡してみました。

A どこも返事がなく商品化までいきませんでした…残念です。

インタビューに答えるBさん

Q.探究ラボで楽しかったことを教えてください。

D 大好きなポッキーがたくさん食べられたことですかね(笑)元々ポッキーへの愛から始まった探究活動ですが、好きなものにも実は悩みがあったと知れたのはいい経験です。

C 探究ラボは授業の延長なので、自分たちで自主的に進めます。プロジェクトを進めていく中で、デザイン思考の5つのステップが身についてるなと感じることがありましたね。授業の場合、なんとなくやってる人もいるのでデザイン思考やプロジェクトへの理解が浅いこともあるのですが、探究ラボはちゃんと探究活動をやりたいと思っている人たちが参加しています。やる気のある人とプロジェクトができる環境にいることも、CURIO SCHOOLの人からフィードバックもらうことで、次の課題が明確になることも楽しかったかな。

B 授業はどうしても真面目な印象があり、熱量をもって授業に参加している人はあまり多くありません。探究ラボでは好きなテーマで、本当にこのプロジェクトをやりたいと思ってる人と取り組めます。チームメンバーで意見をいっぱい出し合って、より良いもの作れたのが楽しかったです。

A 自分の考えたアイデアがイメージ通り作れた時が1番楽しかったです。4月に授業で取り組んだ「学校内における困りごと解決デザインプロジェクト」では、移動教室が大変という課題に目を向けて、教室が移動できる観覧車を作りました。授業だけでは時間がなくて完成できませんでしたが、休み時間を使って完成させた時は達成感がありました。今回もプロトタイプを作り終えた後の「はっー!」という達成感が味わえたのはよかったです。

インタビューに答えるAさん


Q.プロジェクトを進めていく上で難しかったことを教えて下さい。

C テーマ決めと企業への提案が1番行き詰まったね。

A そうだね。私はテーマ決めが一番難しかったな。1学期の探究ラボは「学校内における困りごと解決デザインプロジェクト」とテーマが決まっていました。学校内のことだったので、課題が見つけやすかったです。今回はテーマも自分たちで考えたので、とても悩みました。

B 私は企業への提案が難しかったです。実際に企業の人に連絡したときに気づいたのですが、八角形だと輸送コストがかかってしまいます。お金の問題をはじめ、提案する時に会社側の利点を考えないといけないのが難しかったです。

A 実は今も行き詰まっていて…別の方向性の提案を考えています。

D 現在、ポッキーのパッケージに拘らず、筒型の形を生かせる商品を作ろうとしています。例えば片手が使えない人が使いやすいユニバーサルデザインの商品やベビーカーの水筒入れにいれられるおせんべいのパッケージとか…この筒型の箱の使いやすさを別の人が使えるようにする方向を考えています。

C 今後はお菓子の会社だけではなく、別の会社にも提案するつもりです。手を使わなくていいではなく、片手が使えない人が使える商品を考えてます。片っ端から企業にぶつけて、当たって砕けて、改善しながら提案したいです。

A 最終目標はこのアイデアの商品化です!大きな目標なので、もしかしたら卒業までかかるかもしれませんが…

D 卒業制作みたい(笑)まずは田園調布学園で使って実績を残すのもいいかもね。

商品化の夢について語るメンバーの皆さん

Q.探究ラボに参加したきっかけを教えてください。

B 私とAさんが作った教室が移動できる観覧車のプロトタイプを見た学年主任の先生に探究ラボを勧められました。 プロトタイプを見せた他の先生や周りの人からも「すごいね」と褒めていただき、学校のInstagramに写真を掲載されました。探究の授業でプロトタイプを褒められる喜びもアイデアが形になる達成感も味わえました。これからも好きなテーマでもっと探究活動をやりたいという気持ちから、探究ラボに挑戦しました。

A 私も最初は先生からの勧めでした。1学期に取り組んだ探究ラボでは学年ごとに上履きの色を変える提案をしました。先生方から「実現できるかもしれない」と言われ、他のテーマでも提案したら現実になるかもと思うようになりました。

D 私は探究ラボの話を聞いた時、先進的で面白そうな印象を受けました。探究という言葉を小学校の時には聞いたことがなかったのですが、最近は探究活動で身に付く力が大事という話を聞くことが多いです。最先端な印象のある探究活動を、私もやってみたいと思い参加しました。

B わかるな、それ。時代の最先端のランウェイを歩いてるみたいな感じがあるよね。

D そうそう、時代の最先端を行きたいと思ったんだよね。

C 私は以前から学校説明会の手伝いやスラックスを作る活動に参加していました。昔からボランティアなど、人のために動くことや有志での活動が好きでした。探究ラボはやりたい人だけが参加する探究活動という点ですごく特別感がありました。試しに初回mtgに行ったら友達がいたので、やってみようかなと参加しました。

Q.探究ラボだからできたことを教えてください。

C 時間をかけて探究活動をできたことかな。今回のプロジェクトは2〜3学期かけて毎週1時間以上、意欲がある人と取り組んだので、とても濃厚な時間でした。

D 確かに。それに1学期の探究ラボで学校を経営している重役の先生に自分たちのアイデアを提案したこともすごい経験だったよね。

インタビューに答えるCさん

Q.探究活動の経験を活かし、今後はどうしていきたいですか。

B 将来仕事についたとき、課題を解決するために原因を突き詰めることがあると思います。私たちが取り組んだ探究活動は、企業活動との繋がりも強いです。企業さんも課題を発見する力や考える力がある人が欲しいと思います。私はこの経験を生かして、率先して解決策を考えていけるような人になりたいです。

A 私はつくる力を身につけ、プロトタイプをもっと精密なものにしてたいです。今回のアイデアだったら、もっと材質を商品のパッケージに近づけたものにして、機械レベルものを作れるようにしたいです。

C 授業でデザイン思考がこれから共通認識になるという話を聞き、将来や進路の視野は広がった気がします。特にデザイン思考の「つくる」「ためす」はとても大事だと思います。以前、アイデアを試さないで発表したことがあったのですが、提案が曖昧になってしまいました。「ひらめく」でアイデアだけ出してしまうと説得力がなくなってしまい、思っていたように進みません。デザイン思考の「つくる」「ためす」はどの仕事でも必要になってくると思います。

D 私も「つくる」「ためす」はデザイン思考のプロセスの中で重要だと考えていますが、「ひらめく」も重要だと思います。私たちはこれからも何十年も生きていきます。これからも困り事や悩み事が出てくるかもしれません。困難にぶつかった時、解決策を考える力はこれからも必要になると思います。

インタビューに答えるDさん

Q.これからの探究活動でやりたいことはなんですか?

D 5月から始まるキヤノンさんとのプロジェクトをやりたいです。私たちは今回、企業の方に直接提案ができませんでした。 いつか考えたアイデアやプロトタイプに企業の方からアドバイスをもらいたいです。例えばコストの面など企業の方ならでは視点からアドバイスがもらえるのを楽しみにしています。

Q.探究ラボの価値を教えてください。

B 探究ラボには本当に探究活動をやりたい人が集まっています。妥協や譲り合いではなく、お互いに自分の意見を正直に話して次のステップを真剣に話し合います。「じゃあこれでいいよ」という妥協ではなく、「こうしたらいいよ」とお互いアドバイスをしあうことで、みんなでより良いもの作れます。話し合いもたくさんするのでメンバーの仲も深まるし…青春ですね。少しでも妥協すると、「もっとこうした方がよかったのに」という気持ちが芽生えてしまいます。誰かが不満を抱くのではなく、 みんなで話し合いを重ねたり、プロトタイプを試したりして、納得できるものにする。私は企業に提案し、商品化するのが最終的なゴールだと思っています。そのためには、チームのみんながいいと思えるものをお互いアドバイスしながら作っていくことが必要です。探究ラボは放課後なので、勉強時間も削れてしまいます。勉強時間を犠牲にしてもやりたいと思ってる人が、同じ同じ目標に向かって取り組んでいるので、安心感はありますね

C 私は1学期の探究ラボでアイデアが形になったのがすごく嬉しくて…それ以来、探究活動で放課後の時間が削れるのが嫌だなという気持ちよりも、アイデアが形になると嬉しいという気持ちが勝ち始めました。あの時があったらから、今があります。形になるかもしれないと思えるから頑張れる。たとえアイデアが形にならなくても一緒に考えられる友達がいるだけで探究ラボを続ける価値はあります。1人では大変だけど4人いれば、4つアイデアが出ます。 同じようなアイデアでも視点が違うので、実質4つアイデアが出ることになります。一緒に考えてくれる人がいるから、走り続けられます。

D 実は私が考えたアイデアはまだ実現はしていませんが、アイデアを考えて企業に提案したことはあります。企業に提案した話をすると、他の人から「すごい」とか「かっこいい」とか言われます。企業への提案のように、探究ラボは授業と違うことができるだけでも特別感があります。アイデアが実現しなくても、他の人と違うことに挑戦しているということをだけで価値はあると思います。

C 実は私は昔から手先が器用で、折り紙が得意です。でも学校内で手先の器用さを生かせる場所はありません。探究ラボは普段の授業では使えない自分の得意なとこをなんでも生かせる場所です。私だけではなく、みんなそれぞれ得意なことあります。1人ではできなくても、それぞれを組み合わせたらうまいくというのも探究ラボはならではの価値ですね

インタビューに答えるチームの皆さん

(インタビュー・文章:田中)

インタビューや探究学習の詳細は、弊社担当までお問い合わせください。
・プログラム:https://mono-coto-program.com/
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・担当: s-daimon@curioschool.com(大門)

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