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【MONO-COTO INNOVATION 2023 優勝チームインタビュー】テーマ「駅での心地良い体験のデザイン 」

MONO-COTO INNOVATION(MCI)とは


MONO-COTO INNOVATION(モノコトイノベーション)は、全国の中高生が学校の枠を超えてチームを組み、デザイン思考を活用しながら、テーマに対して革新的なアイデア創造に挑戦する4泊5日のプログラムです。アイデアを考えて終わりではなく、プロトタイプをつくってアイデアの価値検証まで取り組み、プレゼン審査で優勝チームを決定します。

今年度は以下の2つのテーマで開催。

  • 本屋の再定義(テーマスポンサー:丸善ジュンク堂書店)

  • 駅での心地よい体験のデザイン(テーマスポンサー:JR東日本)

500名を超える応募があり、選考を通過した中高生80名が全国から集まりました。参加者は4人1チームになり、プロのデザイナーやエンジニアによるメンタリング、イノベーションを専攻する大学生サポーターによるサポートを受けながらアイデア創造に取り組みました。 また、メンターによるプレゼンテーションや大学生サポーターとの座談会などを通じて、進路やキャリアについても学びを深めました。 最終日には、日本科学未来館にて最終プレゼンテーションを実施。全チームがステージに立ってプレゼンテーションを行い、テーマスポンサー企業による審査で優勝チームを決定しました。

テーマ「駅での心地よい体験のデザイン」で優勝を収めたのは、幼い子どもがつい自分ルールを作って歩きたくなるタイルを考案したチーム13『HIGHTIDE』。 サイズや色などに仕掛けを施したタイルを設置した子ども用の通路を作ることで、幼い子どもの「親に着いていくだけではなく自分の興味の赴くまま自由に歩き楽しみたい」というインサイト(願望)を叶えるアイデアです。 そして同時に、子どもの意識をタイルに集中させることで不規則な動きを制御できるため、親が持つ「人が多く危険な駅でも、子どもの自主性を尊重して楽しく歩く経験をさせてあげたい」というインサイト(願望)を叶えられ、幼い子どもと親の思いを繋ぐアイデアになっています。 着眼点や問題設定の鋭さ・納得度、アイデアの有効性、社会的なインパクト等が高く評価され、優勝を収めました。

Webサイト「開催報告」では、今年度の最終プレゼンテーション動画やワーク風景動画、参加者の声などをご覧いただけます。

https://mono-coto-innovation.com/yousyo

今回はチーム13『HIGHTIDE』の高橋さん(中学3年)、丹治さん(高校1年)、濵田さん(高校2年)、吉田さん(高校1年)にお話を伺いました(※学年は参加当時)。

MCIに参加した理由

ーまずはじめにMCIに参加した理由を教えてください。

丹治さん:僕は学校で先生に紹介してもらって軽い気持ちで応募しました。こういうプログラムに参加するのは初めてだったのですが、「モノづくり」という言葉に惹かれて、とりあえず応募してみたという感じです。

高橋さん:私は学校からの学外活動のお知らせでモノコトを知りました。ちょっと面白そうだなと思ってウェブサイトを覗いてみたら、自分が今までやったことのなかった「テーマに対してアイデアを考える」や「企業の方が審査」などと書いてあって、「絶対に面白い!やってみたい!」と思って応募しました。あとは、自分の学校以外の人と会える機会も少ないので、同世代の人たちってどんな感じなんだろう、というのを知れることも楽しみにしていました。

吉田さん:夏休みの間に一時帰国するので、その期間をなるべく有意義に過ごしたいと考えて、香港にいたら参加できないリアル開催のプログラムをネットで探していたらモノコトを見つけました。積極的な参加者が多そうなプログラムだと思ったので、そういった人たちから刺激を受けて、気づきや原動力を得たいと考えていました。

濱田さん:モノコトは2019年に一度参加したことがありました。前回が楽しく、もう一度自分の力を試してみたかったというのもありますが、今年の夏は人脈を広げるためにいろんな機会に参加したいと考えていました。全国から人が集まって開催されるプログラムは限られているので、モノコトにもう一度参加することを決めました。

ーなぜ人脈を広げたいと考えていたのですか?
濵田さん
:高校生を対象としたマーケティングリサーチ系のビジネスを始めることを検討しています。意欲の高い人が参加するいろんなプログラムに参加することで、事業をともに行う仲間や事業に協力してくれる人など、素晴らしい人材を見つけられるんじゃないかなと考え、その1つの機会としてモノコトに参加しました。

Day1のアイスブレイクでペーパータワーをつくっている様子

MCIに参加して感じたこと

—実際に参加してみてどうでしたか?
丹治さん
「自分はモノづくりに興味があるんだ」と進む方向がわかった気がします。前から工学系に進みたいと思っていましたが、座談会で話を聞いてさらにその思いを強くしました。 あとは、今まで1人で絵を描いたり、映像を作ることはあったんですけど、グループで1つのモノをつくることの楽しさを知れました。話し合っているうちに思ってもみなかったアイデアが出たりするところがグループならではの楽しさだと思います。

高橋さん:私はグループのみんながすごくて、ついていくのに精一杯でした。自分の意見をたくさん言ったり、チームに貢献することもあまりできなかったと感じていますが、それでもチームが1つにまとまって、1つのモノをつくるというのはすごく楽しかったし、最終的には優勝できてすごい嬉しかったです。

吉田さん:合宿型のおかげで日帰りで5日間取り組むよりも、その2倍以上テーマやアイデアに向き合えたと思います。本当に5日間やり切ったという感じですごく楽しかったです。私はもともと刺激を受けたくて参加しましたが、想像以上に尊敬できる大学生やチームメンバーがいて、期待以上の刺激がありました。大学生は歳が近いからこそ刺激を受けられた部分がありましたし、大学生だけど今まで会ったことのないようなすごい人ばかり集まっていると感じました。

濵田さん:楽しかったです。あっという間で、休憩する暇もなくて、ほぼ寝てなくて、久しぶりにがむしゃらに走り切った感じがします。2019年に中1でモノコトに参加したときに、高2のお姉さんがチームにいましたが、今思えばめちゃくちゃ助けられていました。なので、自分が年長になったときにやれるところまでやり切りたかったのと、結果を出したかったので、寝て妥協するならやった方がいいと考えていました。でも、その分楽しかったし、濃い時間を過ごせました。 出会いの部分に関しては、今回は合宿型だったこともあって、部屋を行き来して話す時間もあり、強い結びつきができました。プログラム後もインスタのDMで、参加したプログラムについて情報交換したり、いろんな話をしたりしています。いろんな人と繋がって会話することで、モノコトの後にも自分のやりたいことを探していけるのかなと思います。

グループワークで議論している様子

—その他にも何か印象に残っていることはありますか?

丹治さんここにいる人全員が意欲をもって、何かやろうとしている雰囲気がよかったです。意欲のある人たちだけが集まっているので、チームメンバーが自分の意見をはっきり持っていたり、メンバーがよくて、すごくいい出会いがあったなと感じています。

吉田さん:大学生サポーターはみなさん、いろんなことに挑戦されていますが、その根本にある考え方が尊敬できると感じました。自分のやりたいことがわからなかったけど、最終的にモノコトづくりに関する進路を選択した方が多く、自分もやりたいことがわかってないので参考になりました。また、大学生サポーターには、別の大学に一度入学した後、大きく踏み切って美大に入学してデザインを学ばれている方もいました。そのようなレールから外れる良いロールモデルがいて、そういうことをするのもありなんだと感じるいいきっかけになりました。 あとは、カイシ(濵田さん)の意識の高さにも刺激を受けました。私は今までビジネス系のことに関心をもったことがなかったし、さっき寝てなかったという話があったんですけど、その笑えるくらいの情熱というか熱意の部分にびっくりして、純粋にすごいと思いました。

プレゼン資料提出〆切直前の作業の様子

MCIで学んだこと

—MCIを通して学んだことがあれば教えてください。

丹治さん:自分の考えを人に伝えることの大切さを学びました。今までは自分1人でモノづくりしていたのですが、自分の考えは自分でわかっているのでそれをアウトプットする必要はありませんでした。グループワークをするときには自分の考えを正確に伝える必要がありますが、それが上手くできなかったり、思っていたより難しいことに気づきました。

高橋さん:私もとにかく自分の意見や考えを伝えることが難しいと気づきました。意外とみんな考え方が違ったりするので、「それってどうなの?」と思うことも結構ありました。そういう時に自分とは異なる意見を理解してお互いに受け入れ合うことや、批判的な観点からの自分の意見をどう伝えるかが大切だし難しいと感じました。

吉田さん:もともと日本語を話せれば、コミュニケーションを取れると漠然と思っていました。というか、自分が思っていることが伝わらなかったら簡単なことにすり替えることを今までしてきました。でもモノコトでは、グループワークでメンバーの誰かが発言した時に、誰か1人は理解しているけど、誰かは理解できていないことが多くありました。なので、何重にも「こういうことだよね?」と確認しながら理解を深めるという作業があったんです。説明の仕方を深く考えたり、考えてから発言することが本当に大切だと実感しました。

濱田さん:改めて実感したのは、1つのアイデアを考える時は、いろいろ検証したり時間をかけないと確実なものにはならないということです。モノコトはある意味5日間しかありませんが、逆に5日間も考える時間があるので、最初に思いついたアイデアでそのまま最後までいくことはできません。「このアイデアはどうなのか?」と時間をかけて考えることで、時間をかけないとわからないことってあるなと感じました。自分はアイデアを出すことに関しては自分の意見に自信を持っているタイプで、日常でもパッと思いついたことをそのままやっちゃうことも多くあります。「これいいじゃん」と思ったアイデアをパッと進めるのも大切だと思いますが、時間をかけて考えることで、もっと質の高い違うアイデアを叩き出すこともできるんじゃないかなと思いました。

—他にも学んだことや気づいたことがあれば教えてください。

吉田さん:グループワークの効率の良さに気づきました。今までは自分1人でやった方が効率が良いと思っていましたが、これからはグループワークを大切にしたいなと思うようになりました。グループワークでは、誰か1人が何かのアイデアを出した時に、それに派生したアイデアを誰かが出し、さらに派生したアイデアを誰かが出すみたいな連鎖が起きることがあります。自分1人だったら思考が1本化しているところを、そこにいろんな要素が放り込まれるところが効率の良さにつながっていると感じました。

濵田さん:人に相談することは大切だと感じました。自分の活動でもいろんな人に会いにいくことはあるんですけど、人に自分のアイデアを話すことで矛盾点が見つかったり、自信を持っていたアイデアが崩れたりするので、自分の考えをぶつけることや話しあうことの大切さを改めて実感しました。


他チームとお互いのアイデアについてコメントをしあう様子

—みなさんは見事優勝されましたが、MCIでの経験を通じて、より良いアウトプットを生み出すために大切だと思ったことがあれば教えてください。

吉田さん本音を話せる雰囲気をつくることがめちゃくちゃ大切だと思います。モノコトに参加している人のほとんどは、良いアイデアを出すためには反論コメントを含めてしっかり議論するべきだと考えていると思います。なので、「良いアイデアを出したい。そのためには、必要であれば反対の意見を言う必要がある」といった自分たちの目標や価値観を最初に共有することで、「反対の意見があれば伝えた方がいい」という思考になれるのかなと思います。

濵田さんチームとして一体化しすぎないことが大切かなと思います。共感し合いすぎないというか。実際、最後までメンバーにアイデアを疑われていました(笑)。疑われたら自信をなくすけど、それによってまた改善策を考えることになります。一体化しすぎないことで、「誰かが懸念点をあげる→その改善策を考える」というサイクルが回るようになると思います。 あとは、原点に戻ることを厭わないことも大切だと感じました。躊躇せずに最初に戻ってやり直すことができたのが大きかったです。中途半端に妥協せず、しっかり反論も含めて議論できたのが良かったのかなと思います。

丹治さん:全員が熱く議論するよりも、チームの1人か2人は客観的に議論の流れを見ている人がいた方がいいなと思います。今回のモノコトの中で自分は、出てきたアイデアに対して批判的なコメントを出す役割でした。知らないうちに変な方向に行ったりして、話しても意味がないようなことを議論したりしているので、それを軌道修正できる人が必要かなと思います。

—チームワークの部分が特に大切だと感じられているんですね。それ以外の観点でも、より良いアウトプットを生み出すために大切だと思うポイントはありますか?

濱田さん:「質より量」というのも大切だと思います。量を出すことで見えてくることがあるし、思いつきからスタートして行動観察などのリサーチをしてみたら、こういうインサイトあるじゃんとなったりします。スタートがわからないときは絶対に量を出した方がいいですね。 それと、プロトサポーターでも参加者でもいいので、いろんな人に自分たちのアイデアを話すことも大切です。チームの誰かが客観的な視点を持っていても、自分たちの中で固定観念が生まれたりして良くない方向に進んでいることもあるので、外部の意見を取り入れることは必要です。「このアイデアでいける!」となっている時など行き詰まってなくても定期的にチームメンバー以外の人にアイデアについて話した方がいいと思います。

プロのデザイナーのメンタリングを受ける様子

今後チャレンジしていきたいこと

—最後に、MCIでの経験を踏まえて今後取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

丹治さん:全部1人でやろうとせず、他の人に任せるという選択肢が出てきました。いま、学校の文化祭でクラスの代表をやっているんですが、クラスの人に仕事を振ったり、自分がやりすぎないということを意識するようになりました。

高橋さん:普段から常に観察したり、物事を表面的に捉えすぎないことが大切だと思いました。目の前にあるモノがなぜそこにあるのか?とか、ニュースに対してもなんでそうなったのか?を考えることで、こうしたら改善できるんじゃないかという方向に思考を持っていけるようになると思います。今後社会をよくしていきたいという漠然とした思いを持っていても、普段からそういった意識をもっていないとデザイン思考なども活かせないと思うので、常に批判的思考を意識して過ごしていきたいです。

吉田さん:モノコトでデザイン思考を学んで、思考の型が大切だと感じました。今までそういった型は自分の発想の幅を狭められる感じがして邪魔だと思っていましたが、それを引き出しとしてたくさん持てていると、アイデアがめちゃくちゃ出てくるなと実感しました。ビジネスでも考え方の型はたくさんあると思うので、今後学んでいきたいです。

濵田さん:自分が参加する前に考えていたことが、プログラムが始まってすぐ崩れる。それは悔しいけど素晴らしいことだと思っています。ちょっとした感じで「これいいじゃん」と考えたアイデアだけではダメだと学びました。デザイン思考の1つ1つのステップを着実に踏んで、プロセスを回していくのが大切だと実感しました。日常生活でも、いろんな情報を集めたり、いろんな方面から考えて、落ち着いてしっかり1つ1つ段階を踏んで考えていくことを意識していきたいです。

—インタビューは以上となります。チーム13『HIGHTIDE』のみなさん、ありがとうございました!

◼︎参考1
チーム13『HIGHTIDE』の最終プレゼンテーション動画

2:47:10〜がチーム13『HIGHTIDE』のプレゼンテーションになります。


◼︎参考2
チーム13『HIGHTIDE』の最終プレゼンテーション資料

(インタビュー・記事:中谷)

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