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心の傷で生活に支障をきたすしくみ

大人気心理カウンセラー、大嶋信頼先生が最近書かれている「心の傷の炎症」の話、そして「共依存タイプと退行タイプ」の話がとっても興味深かったので、わたしの考察も含めながらご紹介していきたいと思います(何回かに分けます)。

心の傷は見えにくい

心の傷って、本当にわかりにくい。
ほとんどみんな過去の心の傷を抱えているのに、注目する人はとっても少ない。
そもそも、心の傷があることさえ気づいていない人が多い。

気にしないで過ごしているけれど、
実はものすごく自分の人生に影響を与えていることにも気づいていない。

過去には確かに傷つく出来事、ショックな出来事いろいろあったけれど、
もうとっくに乗り越えられてるだろう、とか、
他の人に比べたら大したことないだろう、とか、
人生っていろいろ大変なことがあるのが普通、とか、
そんな感じでとらえている人が多いんじゃないかと思います。

心の傷の特徴は、「見えない」ってことです。
あるけれど、カーペットの下に隠したゴミのように、表には見えない。
でも、確かにあるから、
ふとしたときに、なんかモヤモヤしたり、もぞもぞしたり、心の片隅で気になっていたりします。

心の傷は、実は触れるととても痛い。
人は、その痛みに触れないように、その痛みに触れることを避けるように生きる傾向にあります。

その痛みに触れないように、、、

人と無理して一緒に過ごしたり、
あるいは人を避けたり、引きこもったり、
買い物をして気を紛らわしたり、
テレビやネットを見続けたり、
お酒やたばこ、甘いものなどに依存したり、
仕事を頑張りすぎたり、
資格をたくさん取ったり、頭を知識でいっぱいにしようとしたり、
まったくやる気がなく、何も挑戦できなくなったり、
あるいは、スケジュール帳をいっぱいにして、
忙しく過ごしたりもします。

こういうことがヘビーになるほど、心の傷が深刻な状態だといえるかもしれません。

上記のような行動、
自分にもそういうところがあるけれど、心の傷からきているのだと思ってやっている人はあまりいないと思います。

心の傷が身体の不調を作る

心の傷があることで、その痛みから逃げるためにそういう不本意な行動をし続ける現実を作り続けるだけでなく、
身体にも不調を作ります。

慢性的にだるいとか、身体のどこかがいつも痛いとか、
高血圧や心臓病、喘息など疾患が実は心の傷が原因である、
ということがとても多いのですが、
心の傷が原因というよりは、そこから作り出される日頃のストレスから、、という方が、一般的には理解されやすいかもしれません。

なぜ心の傷が身体の不調を作るのかというのは、また後ほど詳しく書きます。

それと心の傷は、現在の人間関係への影響力も半端ない。

あの人が好き、あの人が嫌い、苦手、怖い、
すぐけんかになる、嫌われる、
友だちがいない、人が信じられない、
集団が苦手、人といて安心できない、自分らしくいられない、
コミュニケーションがうまくいかない、、

そういうとき、「これは自分の過去の心の傷が原因?」って思う人、
とても少ないと思います。

心の傷が日常の行動のパターンを作り、身体の状態を作り、人間関係のパターンを作る、、、
そこから二次的に生まれるのが、うつ病、過食症、不安障害、人格障害、統合失調症、パニック障害、依存症、発達障害、認知症などの精神疾患です。

こんなふうに、自分の問題や悩みの原因が「心の傷」にあるのだ、ということは、一般的にはほとんど理解されていないのですが、
精神科や心療内科などメンタルのケアを専門とするようなところで当たりまえとされているかといえば、実はそんなことないのです。

だから、精神科医や心療内科のお医者さんでも自分の心の傷は放置、だから他人は診ても自分の問題は置き去りのままというパターンは珍しくないと思います。

だから、うつ病でもなんでも精神薬で治療、となるのですが、
「過去の心の傷」を癒せる薬など果たして存在するのでしょうか、、、普通に考えてあるわけないですね。

一般レベルでは、ここまでさえも理解されていないことなのですが、
私のようなトラウマに対応するセラピスト、カウンセラーの仲間の中ではごくごく当たり前の認識です。

ここからは、大嶋信頼先生の最新のブログ記事に展開されている理論をご紹介していき、「心の傷」とその影響について理解を深めていきます。

※ここからは、おそらくトラウマ系セラピストも目から鱗の内容と思います。

「人が怖い」、、、対人緊張になるのは

一般的に「心の傷」というと、
誰かに酷いことをされた、酷いことを言われた、
仲間外れにされた、いじめられた、無視された、
失敗した、恥をかいて笑われた、バカにされた、比較された、
などの実際に起きたこと=「現象」によって作られるもの、というイメージがあります。

もちろんそうやって作られる傷もありますが、
大嶋先生によると、
自分が生まれたときに親が潜在的に自分のことをどう思っていたか、ということが一番深い心の傷となる、ということです。

たとえば、
出産後に母親が「この子気持ち悪い」という感情を抱いた場合、
「母親に気持ち悪がられた」という心の傷ができてしまう。

どうして母親であるのに、子どものことを「気持ち悪い」と感じてしまうのかというと、
本来出産したときに、母体には「この子を守らなきゃ」という母性行動のホルモンや、「この子が大切」という愛情ホルモン(絆ホルモン)のオキシトシンが分泌されるのですが、
出産時に夫との関係が悪かったり、以前に死産や流産をしたなどがあったりして、強いストレスを感じていると、そのようなホルモンが分泌されなくなることがある。
そうすると、母親は「この子、気持ち悪い」という感覚を抱くようになってしまうそうです(母親と赤ちゃんのあいだに知能の高低差がある場合も起こるようです)。

もちろん、頭ではそんな感覚を抱くのは母親としてダメだと思っているので、潜在意識に封じ込めます。

しかし、ミラーニューロンという〈脳のネットワーク〉のしくみがあるので、赤ちゃんはその感覚をしっかりと受け止めます。

赤ちゃんにとって、生命維持をしてくれる存在である母親から気持ち悪がられることは、生命の危機にも値するので、それが大きなトラウマとして残ってしまいます。

そして、その心の傷はどう作用していくのか、というところを大嶋先生は詳しく解説されているのですが、
心の傷=脳の潜在炎症(表に現れない炎症)となって、大人になってからうつ症状をはじめいろんな障害を引き起こすようになる、ということです。

例のような、生まれたときに受ける「生命の恐怖にかかわるトラウマ」となると、潜在炎症も慢性化してしまうらしい。

最近の研究によると、
潜在炎症が引き起こす認知機能(物事を正しく理解して適切に実行するための機能)の低下により、

  • 記憶障害

  • 言語障害

  • 判断力の低下

  • 失行(やっちゃいけないことをやってしまう)

  • 失認(モノや人の顔などが認知できない)

  • 遂行機能障害(目標を設定し、そのプロセスを計画、効果的に行動することができなくなる)

など、普通の人ができることがものすごく困難になる、ということが起こるようになるそうです。

つまり、心の傷があると、単に悲しみや怒りなどネガティブな感情に苦しめられるだけでなく、生活にも支障をきたすようになる、ということがわかってきたとのことです。

※今増えている注意欠陥多動性障害や自閉症スペクトラム、学習障害って、こういう心の傷が原因になっている場合が多いんじゃないか、、、

というのは、心の傷を癒すことでそういう障害といわれる状態がなくなって、今までできなかった普通のことがあたりまえにできるようになっていくケースがあまりにも多いことから明らかです。。。

ちなみに、先ほどの出産時に「この子気持ち悪い」というのを母親からミラーニューロンで受け取った人は、その心の傷が対人緊張のもとになることが多いそうです。

対人緊張とは文字通り、人と接するときに不要に神経が緊張した状態になることです。

心の傷=潜在炎症
潜在炎症があると、抹消免疫細胞が活性化します。
通常は免疫システムというのは、ばい菌などを敵とみなしてやっつける働きをしますが、
免疫機能に異常が起きると、自分の身体の中の正常な細胞までもターゲットにして攻撃するようになります。

心の傷が身体の不調をつくり出すのは、自己免疫のしくみで体内の臓器や組織などを攻撃し、炎症を作るからです。

対人緊張は、
この自己免疫のしくみにより、体内の敵ではない正常な体の細胞を攻撃するようになると、その働きが精神まで影響し、認知機能の低下により敵でない人も”敵”とみなして緊張するようになる、ということです。

そして、人を前にすると緊張してしまうようになると、その緊張感は相手に伝わるようになる。
相手はそれを「緊張している」とは解釈せず「自分を馬鹿にしている」と受け取るので、態度がおかしくなっていく。

対人緊張がある人は、その相手のおかしな態度を見ても、「自分が緊張しているのが伝わったのだ」とはならず、「なんで自分と接すると相手が不快な態度をとるの?」というのでさらに相手を”敵”とみなすようになる。

それで相手に怒って攻撃したり、
人間不信になったり、
人と会うことが億劫になったり、
緊張と認知機能の低下で、ちゃんと話をしようとしても言葉が出てこなくなったり、
失行で人間関係を破壊するようなことをやってしまったりするわけです。

「自分は気持ち悪い」という傷で自己免疫が暴走し、自分を攻撃
⇒慢性炎症で、認知機能の低下が起こり、人に対して緊張感が出る
⇒認知機能の低下で認知が歪んだところでコミュニケーションをとるので、不調和な人間関係を作る

このループから逃れるには、
ただ、「今自分に起こっていることを知る」だけでよいのだそうです。
そんなしくみに対して、批判したり、否定したり、なんとかしないとと焦ったりする必要はなく、
「心の傷で自己免疫が暴走し、自分を攻撃してるんだな」と気づいてあげる。
そうすると、慢性炎症がおさまってきて、認知機能が正常になって、
人といても緊張することがなくなってくるそうです。

つづく


●大嶋信頼先生のブログ『緊張しちゃう人たち』で、
「心の傷」シリーズがはじまるのが、この記事からです。

●心の傷を安全に癒していくセラピーをしています
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