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ゴールデン・オクトーバー

日本はそろそろ紅葉が本格化する季節。

僕が住んでいたドイツでは、秋の季節は日本よりも1ヶ月くらい先行して進む。そのため、例年10月には既に葉が色づいて美しい季節がやってくる。

そんな10月のことを、ドイツでは「ゴールデン・オクトーバー」と呼んでいる。

みなさんは、この「ゴールデン・オクトーバー」という言葉を聞いて、何を思ったでしょうか。

なぜ「ゴールデン」?

ドイツの木は葉っぱが黄色く色づく種類のものが圧倒的に多い。日本のように「紅葉」ではなくて「黄葉」する。

実際に自分が黄葉に囲まれて、その葉っぱに日光が当たっている光景を見ると、イエローというよりは黄金色に輝いて見える。だから「ゴールデン」と言いたくなる。

キラキラした太陽の光

あくまで僕の感覚だけど、ヨーロッパって太陽の光が日本よりもキラキラしているように感じる。特に、秋の太陽は「光の粒子が降りそそぐ」という表現がしっくりくる感じ。緯度が高いからなのか、その理由はよく分からない。

そんな光の違いも影響して、ゴールデンに見えるのだろうか。

ドイツは日本と比べて落葉樹が多い。そして木や森が大切にされているから、大都市の中でもゴールデンな秋をいくらでも見つけられるし、少し郊外に出ようものなら、視界一杯にゴールデンが迫ってくる。

でも、それはコインの裏表の関係として、冬の寂しさも意味している。

11月になって葉が散ってしまうと、葉っぱのない枝だけの木々ばかりが目につくことになる。だからドイツの冬は、夏とは全然違う景色に変わってしまう。

ピークの時期

あと、「黄葉のピークの時期」というのもドイツではあまりはっきりしない。なぜなら、ドイツは木々の種類が多様で、ある木は黄葉の時期が10月頭と早かったり、別の木は時期が遅くて11月頭くらいに本格的に黄葉する、といった要領。

もちろん日本の紅葉もそれなりに時期的な幅があるけれど、ドイツの方が幾分長い印象。

つまり、ドイツでは木々についても多様性がしっかりと確保されていて、「今週末が紅葉のピークです!」みたいな時期があまりはっきりしていない。そのため、「ゴールデン・オクトーバー」という「1ヶ月間」の幅の広い時期が黄葉の季節とされている。

日本との違い

ということで、「ゴールデンオクトーバー」という言葉一つとっても、日本といろんな違いがあることが分かる。

(1) オクトーバー:時期が違う、長さが違う
(2) 黄葉:色が違う
(3) ゴールデン:光が違う(←個人の感覚です)

僕は日本の紅葉も大好きだけど、このドイツの迫力ある黄葉を前にすると、あまりの美しさに陶酔してしまう。

そんな素晴らしい黄葉が見られるんだけど・・

でも、黄葉を話題にするドイツ人って、あんまりいない。

黄葉への関心の薄さ

一応、この季節になると、ドイツ人たちは口を揃えて言う。

「そろそろ秋になってきたねー。この季節をゴールデン・オクトーバーって言うんだよ!」

こんな軽い一言コメントは、もう何十回も聞いたけど・・・。

でも具体的に黄葉を見にお出かけした話だとか、黄葉の思い出について語るといった話を、僕はドイツ人たちからあんまり聞いたことがない。聞くこともなくはないけど、春に対する思いのようなパッション(情熱)を感じない。

街中でも山の中でも、日本人だったらテンション上がって写真を撮りまくるであろうゴールデンな景色を前にしても、目もくれずにアッサリ通り過ぎるドイツ人たち。

日本人の紅葉に対する熱量と比べて、この関心の薄さよ。

この熱量の違いの理由は何なのか。というテーマについて、5000文字くらいの文章で、分かったような解説を投稿したいところなんだけど。

でも正直なところ、その明確な理由は未だによく分からない。

「なぜ興味があるのか」「なぜ大事にするのか」については、質問したら答えが返ってくる。けれど、「なぜ興味がないのか」についての回答を引き出すことはできない、ということを知った。

マッチョ信仰

ただ、なんとなく「コレかな?」と思い当たるフシはある。

何かというと、ドイツでは力強くてマッチョなものが好まれる文化 

自他ともに認める「ドイツ人のマッチョなもの信仰」は有名。チカラ強いものが素晴らしいとされる風潮があって、ヨーロッパの他の国と比較すると権威主義的と言われている。

という、文化的な文脈があるから、


「木々の葉が、夏の生命力あふれる緑色から、もうすぐ散りゆく黄色に変わってしまうと、その葉は既に力強さやマッチョさを失ってしまう。するともはやドイツ人は興味も関心も示さないんだよね~

と言ってみると、必ず笑いが取れる持ちネタになった。

ドイツ人はみんな僕が何を言いたいか理解して、自虐的にニヤリと笑ってくれる。ただ、今まででこのジョークに一番ウケてくれたのはイギリス人。

ドイツ人のマッチョ文化に対して、茶々のひとつも言ってやりたいと爪を研いでいるヨーロッパの人たちは多い。そんなイギリス人にこのジョークを言ってみたときの、彼らの爆笑っぷりときたら、それはもう。

ヨーロッパの人たちは、こんな感じでユーモアを交えながらお互いに国民性についてアレコレ言い合って、お互いに極端に走らずバランスを取っている面もある。

こういうやり取りって、健全で僕は好きだなぁと思う。

by 世界の人に聞いてみた

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