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ドイツ製の文房具が異文化だった話

ドイツで働き始めた当時のこと。

初めて会社へ出勤すると、机の引き出しの中に仕事のための文房具が用意されていた。用意されていたのは、ドイツでごく一般的に使われている文房具ばかり。でもそれらは日本のものとは大きく異なっていた。

ドイツ製の文房具

例えば、
目を疑うほど水分たっぷりの蛍光マーカー
異常に水分を吸い取る分厚いメモ用紙
極太のホッチキス

このドイツの文房具に対して、日本から持ってきた文房具を併用すると、おかしなことになる

「ドイツの力強い蛍光マーカーで、日本の薄い紙に線を引くと、水分でダボダボになってふやける」

「日本の繊細な蛍光マーカーで、ドイツの分厚い紙に線を引くと、瞬く間に日本の蛍光マーカーが力尽きて、かすれ始める」

「日本のか弱いホッチキスで、ドイツの厚い紙を留めようとすると、ホッチキスが紙を通らず、歯が立たない」

簡単に言えば、だいたい日本の文房具がドイツの文房具にチカラ負けする

ドイツは基本的にマッチョな文化。チカラ強いものが素晴らしいとされる風潮があるので、文房具ですらマッチョに作られている。

ということで、実際に使い始めてからすぐにドイツと日本の文房具を混成使用するのはムリがある、ということを悟った。

逆の言い方をすれば、ドイツの文房具の中では全てが首尾一貫していることにも気がついた。ドイツで分厚い紙が一般的であれば、必然的にそれと互角に戦える力強い蛍光マーカーが必要になるし、ホッチキスも極太の針で挑まなければいけない

つまり、紙が決まった時点で、他の文房具のあり方も自然と決まってくる。

日本の会社が使う紙

この話を書いていて思い出したのが、友人のドイツ人が最近言ってた話。彼は長い期間にわたって日本の会社と仕事で関係があって、定期的に日本の会社から彼のもとに書類が送られてくる。その日本の会社が使っている紙について、彼がコメントしていた内容がおもしろかった。

ドイツ人
「ずっと前から、日本の会社から定期的に書類が送られてきているんだけどね。最初の頃は、ドイツの紙と同じような立派な紙が使われていた。ドイツの紙と見分けがつかなかったよ。でも、いつの頃からか環境に配慮し始めたんだろうね、書類が送られてくるたびに、紙がドンドン薄くなっていってね。そのうち、紙の向こう側が透けてみえるんじゃないか、っていうくらいペラペラになったんだ。

そして薄さの限界くらいまで到達したらね、次になにが起こったかっていうと、紙が再生紙になった。書類が送られてくるたびに、紙の色がドンドン茶色くなっていってね。もう最近では茶色の紙かと思うくらいになったよ。

でも、そのいつも送られてくる書類ってさぁ・・、いちおう本文は書かれているんだけど、結局は『回答様式はホームページにアップしておきました。各自でホームページにアクセスして、ダウンロードして使ってください』って内容なんだよね。だったらそもそも、メールでリンクだけピッと送ってくれれば、それで充分なのに。彼らは僕のメールアドレス知ってるんだから。いちいちペラペラの茶色い紙を国際航空便で送って来るんじゃなくってさ。日本人の発想って、ほんと独特だよね。でもなんか憎めなくて、嫌いじゃないけど」

ちなみに、少なくとも僕の働いているドイツの会社では、もう紙に印刷することは稀になっている。仕事はほぼPCで済むし、サインも基本的には電子サイン。業務で殆ど紙を消費しないから、会社は昔から購入している古き良き時代の分厚くて立派な真っ白い紙を、今もそのまま買い足し続けている。別のエコな紙に置き換えることを検討する労力すらもったいないような、マイナーな量しか使っていないから。

ということで、白くて分厚い立派な紙を僅かな量だけ使用するドイツの会社と、茶色いペラペラの紙を国際航空便でセッセと送り続ける日本の会社。どっちの方が環境にやさしいのか知らんけど、こんな文房具や紙ひとつを取ってみても、いちいち異文化ってあるんだなー、って思った話でした。

by 世界の人に聞いてみた

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