アウトバーンまとめ
みなさんは今までで、車に乗って一番速いスピードで走ったのは時速何kmくらいでしょうか。
僕の場合は、納豆嫌いのドイツ人上司が運転する車に同乗して出張したときに何度か経験した時速280kmが最も速いスピード。時速200kmを超えると、だんだん新幹線に乗ってるような音に変わってくる。
どこで乗ったかというと、ドイツの高速道路。アウトバーンと呼ばれる。
アウトバーンは速度無制限の区間が多く、そういった区間では自分の好きな速度で走ることができる。
ということで、世界でもあまり例をみないドイツの速度無制限の高速道路について、自分がドイツに住んでいた当時の経験を思い出して書いてみる。
アウトバーンの成り立ち
20世紀初頭の頃、ドイツには高速道路がまだ細々と少しだけ存在している程度だった。
第一次世界大戦の後で台頭してきたヒトラーが、高速道路を大幅に拡張。ドイツ中で大掛かりな建設工事を推進して、ドイツ全土にアウトバーンを行き渡らせたとされている。
その背景の一つは、当時は世界大恐慌で街に溢れていた失業者に対して、建設工事の仕事を生み出すこと。つまり失業者対策。
あとは「休日には国民みんなが家族で車に乗ってピクニックに出かけられる暮らしを実現する」というコンセプトを実現するため。
これがとてもドイツらしいと思う。まず、「多くの人々が望む幸せのかたちがどういうものか」について、国民である程度の合意があることが前提。
そしてアウトバーンを整備することによって、「家族が車で移動してピクニックできる幸せ」を国民みんなが享受できる国をつくろう、というもの。これを国家主導で実行した。
あとは、戦時を想定して、戦車が走ることができるようにしたとか、飛行機の離着陸もできるようにしたとか。そのため、アウトバーンは幅が広くて強固なつくりにしたらしい。
なお、アウトバーンというドイツ語は、2つの単語が合わさっている。アウト(Auto)とは自動車のこと。英語で言うところのオート(自動車)。バーンは道。アイスバーン(氷の道)のバーン。ということで「自動車の道」というそのままの意味ですね。
そんな成り立ちのアウトバーン。21世紀の現代には、どのような運営になっているのか。7つの視点から整理してみた。
現在のアウトバーン
(1) 車線の数
車線の数は、片側2車線だったり、3車線だったり、4車線以上だったりと、さまざま。交通量の多くないところはだいたい2車線。
ただし、頻繁に道路の補修工事が行われており、それに伴って走行できる車線の数が減っていることも多い。
あと、日本の高速道路のように高架にしている部分はそんなに多くない。アップダウンが多くない限りは、平地と同じ高さに道路が敷かれている。だから時々動物が侵入してくることも。
なお、ドイツは右側通行(日本の逆側)なので、もちろんアウトバーンも右側通行。
(2) 速度
仮に車線が3つある場合は、どういうスピードで車が流れていくのか。
*スピードは時間帯や道路の状況などで全然違ってくるから、あくまでも目安と捉えてください。
一番遅い車線は時速100 km前後。どんな車がこの車線を走っているのかというと、トラック、キャンピングカーや馬運トレーラー(頻繁に走っている)、お年寄りの運転する車など。
真ん中車線で時速120~150km/h。一般的な自家用車が走っている。
追い越し車線は、真ん中車線の車を追い越すときに、それ以上のスピードで走っていく。追い越しが終わったら、遅い車線へ戻っていくのが原則。
僕の個人的な印象では、速い車はコンスタントに時速160km~200kmとかで走り続けるし、それ以上のスピードの車も珍しくない。
ただ、さすがに時速280kmくらいがマックスじゃないかな。普通の車は時速250kmとか280kmでリミッターが作動する。
となると、真ん中の車線を時速130kmくらいで流れに乗って走っていると、その数m隣にある追い越し車線を、僕の車のスピードに対してプラス100km以上のスピードでボボーーと爆音をたてて追い抜かれるのも珍しいことではない。
特に、自分が追い越し車線を走っているときは気を付けないといけない。うっかりバックミラーから10秒くらい目を離すと、気が付くと遥か遠くからすごいスピードで追いついてきたポルシェが、ものすごい形相(に見える)勢いで後ろにビタッと張り付いていて、鬼のような勢いでパッシングされている、ということもありがち。その場合、急いで遅い車線に移動しなければいけない。
ちなみに僕自身が運転する時は、あまり速いスピードが得意ではないので、だいたい時速120km~140kmくらいで走っていた。
(3) 速度制限のある区間も
統計によると、アウトバーンのうち速度無制限の区間はざっくり6割くらいなのかな。残りの4割くらいは何らかの制限速度が設定されている。
でも実際にドイツで車を走らせると、都市の近くには速度制限のある区間が多い。だから自分が日常で走る中では、無制限の区間は感覚的にそんなに多くない印象。
特に、車線の一部を道路工事している区間では、時速80kmか60kmくらいに規制されている。
(4) 通行料
普通の乗用車が走行する場合は、通行料は無料。入口や出口に料金所は存在しない。
道路の保守・運営といった費用は、ガソリンや自動車に係る税金などによって賄われているらしい。
(5) 路面
路面は、状態の良いものから悪いものまで、質にかなりの開きがある。状態の良い路面のもので、だいたい日本の高速道路と同等くらいだろうか。
主要幹線を離れていくと、状態の悪い路面が増えていく。たとえば雨が降ったら水が全然はけなくて、水たまりの中を走り続けることになったり。または、路面がガタガタしていたり、ロードノイズがうるさかったり。
僕の知る範囲では、ドイツよりも高速道路の路面の質が良い近隣国は、オランダとスイス。それ以外の国は、ドイツと同等かそれ以下。
ちなみに、高速道路で国境を超える際には、国による高速道路の質の違いが明白に見える場所もある。国境を越える場所で施工・管理する国が変わるので、国境には横にピーッと道路の継ぎ目が見える。その継ぎ目を境に、路面の質や色が変わったりする。
国境を越えてドイツへ入国する場合。みんなその継ぎ目を境にして、次々とアクセルをベタ踏みして、200kmくらいまで一気に加速していく。継ぎ目を越えた瞬間に「ようこそドイツへ!」という声が聞こえる気がする。
(6) 犬と目が合いがち
ドイツ人は、犬を車に乗せて森や湖へ遊びに行く人たちが多い。アウトバーンを走っていて、フト前を走る車のハッチバック部分を見ると、犬と目が合いがち。また、隣を走る車の窓から犬がハッハッと息しながら嬉しそうに顔を出していて、風に目を細めていることもしばしば。
(7) 日本人は夜の走行に注意
アウトバーンはライトがない区間がとても多い。日本の高速道路のように、夜間でも昼間のように明るく照らしてくれているわけではなく、真っ暗な中を自車のライトのみで走ることになる。
暗くて危険ではないのか?
否、多くのドイツ人たちは暗い道でも難なくすごいスピードで爆走する。
なぜそんなことができるのか?
それは、彼ら/彼女らが青い瞳や薄い色の瞳を持っているからだと僕は思っている。
日本人はほぼ例外なく黒い瞳(正確にはダークブラウン)だから、暗いアウトバーンで運転するとよく見えなくて怖い、という声をよく聞く。
でも、ヨーロッパの人たちは概して薄い色の瞳を持っているので、日本人の常識を超えて段違いに夜目が効く。だから真っ暗なアウトバーンでもすごいスピードで疾走することができる。
その分、明るさに弱いから、みなさんよくサングラスを掛けてはるけど。
ちなみにヨーロッパと日本では、ゲームによっては画面の色味や明るさを変えているらしい。
日本人がゲームで「不気味な雰囲気だ」と感じるような暗さの設定の画面にしていても、その同じ画面を薄い瞳を持つヨーロッパの人たちが見ると、彼ら/彼女らにとっては明るすぎて不気味に感じないらしい。だから、ヨーロッパ向けのゲームでは、日本向けよりも暗く調節することがあるらしい。
また長くなってしまった。ここで一旦終えて、次回もアウトバーンや車にまつわる話について、もうちょっと続けよう。
by 世界の人に聞いてみた
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