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血筋に翻弄される人々を描いた、サスペンスドラマ『柘榴館』

あらかじめ、子は親を選ぶことはできない。それは、親も同じだ。自分の家系が代々どうであるかを前もって知る事は不可能で、実際にその家庭で育ってみなければわからない。
少し前、親ガチャという言葉が、世間を騒わがせた。自己責任論の問題が取り上げられ、学歴社会や、貧困問題などの格差に苦しむ、若者たちの間で、広がった言葉だ。本作は、代々継がれていく、家系、血筋に、翻弄される人々を描がいた、サスペンスドラマだ。監督は、伊藤秀裕、原作は山崎洋子の『柘榴館』
物語の主人公である、森岡沙季は、新しい職を求め、人里離れた山奥にある、邸宅へとタクシーでやってくる。その屋敷は柘榴館(ざくろやかた)と呼ばれており、そこで暮らす、立花家の住人が代々受け継いできた、古い建物だ。家に着くと、森岡は、紹介状と履歴書を見せ、依頼人である、香織の母親の久代の介護福祉士として、住み込みで働くようになる。森岡は久代の介護をこなしていくなか、立花家が代々医者を継ぐ家系である事を知る。久代は、車椅子の生活を送る前までは、優秀な内科医であり、その後を継いだのが、香織の夫っある、隆二だった。隆二は、15歳の時に、立花家の養子として迎えられた。しかし、養子の隆二に自由はなく、立花家の後を継ぐため、医者になり、香織との間に2人の子供(希和と煉)をもうけた。その後、アルコール依存症を患い、森岡の友人である、敬子と不倫関係になる。それを知った香織は、クスリ漬けになる。結局、敬子は殺され、隆二は、持病の薬の副作用で死んでしまう。森岡の前に勤めていた介護士のハルエは、何者かに殺されており、敬子もハルエも、共通してお腹に、立花家の子供を宿していたことを、森岡は知る。最後、2人を殺した、希和と煉に洗礼を受けるも、森岡は、荷物をまとめ、柘榴館を後にする。医者でも、資産家でも、政治家でも、一見、外から見ると華やかな家系に見えるものでも、その内情は、とても醜いことがある。家系に、自由を奪われ、実存の意義を失う者や、簡単に血を分けまいと、他人の家系を根こそぎ調べ上げる者、外からは、一攫千金を狙い、権力争いに参加する者もいるだろう。歴史を遡れば、自分の娘を天皇の妃にし、政治を陰から支配していた、藤原氏がやっていた摂関政治は、今でも続く家系を巡る呪縛のようなものではないだろうか。


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