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カスタマーサクセス的な業務を実践するコールセンター事例(3)〜エクスパンション

前回前々回の続きです。


カスタマーサクセスにおいては、利用が定着した後のエクスパンションが役割上、大きなウエイトを占めます(それにしても、なんでサクセス領域ってこんなにカタカナばっかなんだろ?日本語のままの方が通じる感ある言葉、コールセンターより多く感じる)。

ライセンス増、オプション機能の利用など、BtoBのサブスクサービスは機能強化の速度も早いので、この情報提供と提案はたしかに重要です。また、ソリューション利用で成功、あるいは成果が出ていないとライセンス増もオプション利用もないでしょうし、「サクセス」の目安になることも間違いないでしょう。

コールセンターをはじめとしたカスタマーサポートでも、インバウンド(入電)時のアップ/クロスセル、アウトバウンド(発信)によるテレマーケティングという2つのアプローチがすっっっごい古くから実践されています。当然ですが、事例は数多いです。
どっちの局面でも、軸になっているのはアダプション、チャーン防止同様に「DB分析に基づく顧客理解」です。これはサクセスも同様だと思います。

サポートの機会に有償サービスを売る。対応クオリティに自信はないとできない取り組み

まず、限りなく現在のサクセス部門に近い取り組みをサポート部門で実施していたのが、某ソフトウエア会社。対象は完全にBtoB。同社も現在はクラウドビジネスに転換していますが、その昔はパッケージで製品を販売していました。いわゆるSOHOの利用も多かったですね。
勢い、コールセンターはテクニカルサポートの色合いが強い部署でしたが、「有償サポート」をここで売っていたのです。

今もこうしたところは多いと思いますが、無償で受けられるサポートと有償サポートをきっちり、切り分けている事例です。で、電話をかけてきたユーザーを支援するとともに、有償サポートをオススメして販売する、という取り組みでした。

有償サポートのクオリティを高め、その価値を理解してもらうことが前提。言い換えれば、有償サポートの品質に絶対的な自信がないとできません。

この取り組みでかなりの売り上げを挙げた同社のテクニカルサポート部門は、ありがちなコスト部門ではない、プロフィットセンター(個人的には大嫌いな言葉)として経営に認められていました。

顧客の成功と引き換えに、サポートを買ってもらう。あるいはその逆という取り組みは、こんな言葉があるかどうかも知りませんが、「サポート型サクセス」の先駆け的事例といえるのではないでしょうか。
<ここまで書いて気づいた。カスタマーサクセスには、「セールス型サクセス」と「サポート型サクセス」がありますね。これはまた改めて記事化したいと思います。>

ただの「ポテトもいかがでしょう?」ではないアップセル

最近、月刊コールセンタージャパンで記事化し、かつて「コンタクトセンター・アワード」でも受賞した取り組みが、国際運輸大手のDHLジャパンが実施しているアップセリング・プログラムです。BtoBが中心の同社ビジネスにおいて、集荷依頼の電話に対し、保障を含めたオプションサービスをオススメするという内容。カスタマーサービスの現場が大きな収益貢献を果たした事例としては、これもやはり先駆けに近かった取り組みです。

電話対応におけるアップ/クロスセル事例は、大げさではなく枚挙にいとまがありません。BtoCなら保険、カード、証券などの金融業、通信販売。BtoCならソフトウェア、運輸、OA関連などなど。それも某ファーストフードで実施されていた「ポテトもいかがでしょうか?」的なものではなく、DB分析に基づいて最適化された提案、つまり1to1対応に挑戦している事例が大半です。

顧客の「困った」を察知できる仕組みとアクティブサポート

アウトバウンドによるセールスは、かつての無差別型のセールス電話は鳴りを潜め、これもまた1to1型のインサイドセールスに変わりつつあります。もちろん、まだ精度には(リスト作りやコミュニケーション手法など)課題はありますが。
その多くは、セールスというより、「能動的サポート」、つまりアクティブサポートのひとつといった方がいいかもしれません。顧客の「困った」を察知、先回りして企業側からアプローチし、それをビジネス機会に変えていく手法です。よく例えとして出されるのは、昔、お米屋さんなどがやってた「御用聞き」で、当時の台帳がデータベースとなり、直接訪問していたのが電話やメールとなったということですね(カスタマーサクセスでも使われている例えのようです)。

とにかくキモはDB。顧客を理解しないとサクセスもサポートもない


インバウンドでのアップセル/クロスセル、アウトバウンドでのアクティブサポートのいずれもが、1to1対応の進化形です。繰り返しますが、キモとなるのは「DB分析に基づく顧客理解」。今後は、ここにAIを活用する動きが加速することになるでしょう。すでにマーケッターの皆さまには、「生成AIをどう活用するか」を考え、実践されている皆さまもいらっしゃると思いますが、そう考えると、セールス(営業)、カスタマーサクセス、カスタマーサポート(コールセンター)、マーケティングが連携して、AIを活用した顧客理解を進めるという取り組みも考えられそうです。ここまでくると、本当の「グランドデザイン」になるでしょうね。以下、現段階での顧客接点の典型的な構造を絵にしてみました。こんだけの部門が、同じ顧客に対してめいめい勝手に動いているのが現状の根深い課題だと思います。

BtoB、BtoCのカスタマージャーニー


この3回のNoteについて、まとめの絵を書いてみました。上げておきます。

次回は、何を書こうかなー^^;

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